■8年ぶりに復活した軽スペシャリティカーのセルボ

2006年にデビューしたスズキ5代目「セルボ」

2006年(平成18)年11月7日、スズキは8年ぶりとなる5代目「セルボ」を発売した。1977年に誕生したセルボは、軽のスペシャリティカーとして人気を獲得、1998年の4代目「セルボモード」の販売中止で終焉を迎えたかに見えたが、この年に復活を果たしたのだ。

フロンテクーペの後継として誕生したセルボ

1971年にデビューした2シータークーペ「フロンテクーペ」

セルボは、スペシャリティカー「フロンテクーペ」の後継車である。フロンテクーペは、1971年にデビューした軽初の2シータークーペで、ジウジアーロのデザインをベースにしたことでも評判になり、多くの若者から支持された。そのフロンテクーペの生産中止から1年4ヶ月経った1977年10月に、後継車として軽の新規格に合わせたひと回り大きなボディを持つ新型車「セルボ」がデビューした。

1977年に登場した初代「セルボ」

スタリングは、フロンテクーペのイメージを踏襲したが、丸形ヘッドランプと角形フォグランプをフロントグリル内へ配置しているのが特徴。インテリアは、大小6個の円形メーターや変形4本ステアリングホイール、セミバケット型シートなどでスポーティ感をアピール。後部シートには緊急用+2のシートがセットされていたが、実質的には2シートのクーペだった。

パワートレインは、最高出力28ps/最大トルク5.3kgmを発揮する550cc並列3 気筒2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はRR。価格がやや高かったため大ヒットとはならなかったが、フロンテクーペのように若者からは人気を得た。

その後もスポーティなクーペを継承したセルボ

1982年に登場した2代目セルボは、駆動方式がRRからFFに、エンジンは550cc 3気筒2ストロークから3気筒4ストロークエンジンに変更。またスポーティなから、女性にも好まれるように燃費と運転のしやすさが重視された。

1988年に登場した3代目「セルボ」。F5B型3気筒エンジンを積む

1988年に登場した3代目は、クーペスタイルからハッチバックへと変身。1990年には軽の新規格化に合わせて、4代目セルボの「セルボモード」に引き継がれた。セルボモードがデビューした1980年代後半はバブル全盛の時代で、セルボモードが目指したのはさらなる走りの追求と高級感だった。

1990年に誕生した4代目セルボ「セルボモード」

その目玉は、排気量が550ccから660ccに拡大されたことを機に、それまでの3気筒から4気筒エンジンへ変更されたこと。ショートストロークエンジンに、1気筒あたり4バルブ化やDOHC化、さらにインタークーラー付ターボエンジンも用意された。

1990年に誕生した4代目セルボ「セルボモード」

スタイリングは、丸みを帯びたソフトなハッチバックで、インテリアは高級感を演出。先進技術を積極的に採用したセルボモードだったが、その分高価になり、さらに1993年にデビューしたハイトワゴン「ワゴンR」が爆発的な人気を獲得してブームを起こしたこともあり、販売は期待したほど伸びず、1998年に生産を終えた。

上級なスペシャリティカーとなってセルボ復活

2006年にデビューしたスズキ5代目「セルボ」

4代目のセルボモードの次期車がなかったことから、この時点でセルボの名は消えたように見えた。が、2006年11月のこの日、セルボの名が8年ぶりに復活を果たした。

2006年にデビューしたスズキ5代目「セルボ」のリヤビュー

5代目となるセルボは、前後に丸みを付けたシャープなワンモーションフォルムを持った上級5ドアハッチバックに変貌。インテリアは、ラウンドした黒基調の落ち着いた高級感ある雰囲気ながら、セミバケットシートでスポーティさも強調した。

基本的には、2001年に登場した「MRワゴン」をベースにしており、MRワゴンは女性をターゲットにしたファミリーカー。一方のセルボは、男性をターゲットにした上級なスペシャリティカーという位置付けだった。

5代目「セルボ」のコクピット
5代目「セルボ」のシート配列

パワートレインは、最高出力54ps/最大トルク6.4kgmの660cc直3 DOHC VVT、60ps/8.5kgmの660cc直3 DOHCインタークーラーターボの2種エンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFに加えて4WDも用意された。

装備面では多くの収納スペースで利便性を高め、さらに当時としては先進的なBluetoothを用いた携帯電話のハンズフリー通話機能を一部グレードに備えた。

スズキ5代目「セルボの各種操作部がな~んか懐かしい雰囲気!

車両価格は、2WD仕様で103.74万円(NA)/114.24万円(ターボ)に設定。残念ながら5代目セルボは大ヒットモデルにはならなかったが、軽の域を超えた内外装の仕上げや走りの質感の高さは評価された。

2006年にデビューしたスズキ5代目「セルボ」

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初代以来、軽のスペシャリティクーペとして走り好きのファンを魅了してきた歴代セルボ。特に5代目は、スポーティさに加えて上質さをアピールしたが、残念ながらその魅力は実用性重視のハイトワゴン全盛時の市場では浸透しなかった。
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