
WRCラリージャパンのサービスパーク裏のテントに現れた服部寛大(はっとり・かんた)、ラリー中のスケジュールはタイトで、インタビュー時間はごく短時間だった。
服部さんは、2011年にトヨタに入社。トヨタでは車両試験課でテスト走行や試験評価に関わるメカニックを務めていた。そこからTGR-WRTフィンランドへ出向。現在は勝田貴元選手のマシンのナンバー2メカニックを担当している。

「最初は、すぐに現場でメカニックをやらせてもらえるわけではありません。デパートメントという、脚周り、ダンパー、エンジン、トランスミッションという部門で勉強し、一緒にモノを作っていくわけです。ラリーチームの前に、テストチームというのがあって、まずそこで自分の技能を磨いて経験を積んでいきます。そしていまのラリーチームに来ました。今年でもう2年を過ぎています。この2年感、ラリーチームで世界を回ってメカニックをしています」

——WRCメカニックとして、働き方は日本とどう違いますか?
服部さん:海外の働き方は、完全に日本とは違います。プロフェッショナルがデパートメントやラリーメカニックとして直接コントラクターとして1年毎に契約して働いています。そのなかで、デパートメントを回って経験を積めた私がイレギュラーだったのですが、それはある意味うれしいことでした。
海外の働き方は分業制になっていて、「自分の仕事は自分」というカタチなので、そこに私が入っていくと嫌がられるかもしれないと思ったのですが、皆さんウェルカムでした。細かいところまで教えていただけたので、私は他の人にはできない経験ができましたね。海外に出たことで見えるところがすごく変わりましたし、働き方も変わりました。自分のやるべきことをまずやる。これ、当たり前のことなんですが、その当たり前のことをちゃっとやっているがゆえに、すごくメリハリのある働き方をするということを感じましたね。

——勝田選手のマシンを担当なさっていますね。どうやってマシンを作り上げるのですか?
服部さん:私はエンジニアではないので、マシンを作り込むためにどうかというところまで深掘りはできていないかもしれませんが……基本的なマシンの骨格は各車両ほぼ一緒です。でも、ドライバーによってたとえばコックピット内のシートポジションやハンドブレーキ、シフトレバーなどの位置は変えています。ドライバーファーストで。脚周りも、基本のセットアップは同じだとしても、そこから少しプラスマイナスしてドライバーの好みに合わせていきます。
——WRCでの経験が、また量産の現場に戻っても活きるのでしょうか?
服部:そうですね。トップカテゴリーのRally1までくると、本当に原型である市販車と同じ部分はごくわずかしかありません。ですが、モノの考え方や整備性、作業性を含めて、短時間で素早く限られた条件の下でやりきるためにどうするかというところでは学べるところがすごく多いと思います。海外の働き方のマインドは、やはり公私のバランスを大切にするというのがあります。プライベートの時間、家族との時間を大切にする。WRCで転戦すると1週間2週間出張することがあります。そこはしっかり働き、終わったら1週間オフで家族と過ごす。そういったメリハリがあるので、どんなに過酷でタイトなスケジュールでもやりきれるのだと思います。




