現在、自動車用アルミニウム鋳物製品の8割がダイカストで生産されている。その工程において最もエネルギー使用量の大きいのは溶解炉だが、本技術によりその消費量を半分近くまで削減することができた。さらに、既存の小型アルミ溶解炉に加え、この大型開発炉によりダイカスト生産の大半に対応できるようになった。近年注目されているギガキャスト※2にも適応する。また水素やバイオ燃料、合成ガスなどの次世代燃料への対応も可能であることから、経済合理性を持ったカーボンニュートラル化への貢献も期待される。

同グループは、今年8月に水素燃料を用いてダイカスト用高効率アルミ溶解炉を稼働する実証を行い、従来と比べ少ない量の水素による生産が可能になることを確認している。開発した高効率アルミ溶解炉は、都市ガス以外のさまざまな燃料を用いたマルチフューエル燃焼が可能であり、将来の燃料事情に合わせたカーボンニュートラル化に適用することができる。水素は燃料価格が高く、また高温で溶解し液化した金属内へのガス吸収による品質劣化の問題から、これまで鋳物製品の生産に利用することが難しいとされていたが、本技術を適用することにより、国内で初めてコストと品質の両面でカーボンニュートラル化の可能性を示すことが可能となった。

11月7日に機械振興会館で行われた表彰式の写真
受賞対象となった大型ダイカスト用高効率アルミニウム溶解炉
開発技術名大型ダイカストに対応したコンパクトな省燃費アルミニウム溶解保持炉の開発
受賞者いすゞ自動車 要素技術部
鋳造技術グループ
塩谷聡(えんや さとし)
いすゞ自動車佐藤智治(さとう ともはる)
いすゞエンジン製造北海道和田淳一(わだ じゅんいち)
宮本工業所青木公俊(あおき きみとし)
宮本工業所松井仁嗣(まつい ひとし)
互交産業井浦茂一(いうら しげかず

【注釈】

  1. ダイカスト(Die Cast):アルミニウムなどの非鉄金属による合金を高温で溶かし、高圧をかけて冷やして固める鋳造方式。高い精度の鋳物を短時間で大量に生産できるため自動車関連部品などの生産現場で広く使用される
  2. ギガキャスト:大型の鋳造設備で大きなアルミ部品を一体成型する技術。ダイカストはギガキャストの基礎的な鋳造法にあたる