トレイルシーカーと共に展示された電動キックボードは……?

スバルブースはブランドのヘリテージであるレオーネ(スバルGLワゴン・ファミリーハックスター)を中心にスポーツ路線の「パフォーマンスシーン」とアウトドア路線の「アドベンチャーシーン」とで構成された。そのアドベンチャーシーンはスバルが北米で展開していた「ウィルダネス」ブランドモデル(アウトバック、フォレスター)と、電動SUVであるトレイルシーカーの日本初披露の場となった。

スバルブースの「アドベンチャーシーン」。手前がアウトバックウィルダネス、奥がフォレスターウィルダネス(いずれもプロトタイプ)。
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「ブランドを際立たせる」2つのシーン スバルブースのテーマは「ブランドを際立たせる」。航空機メーカー・中島飛行機を原点とするスバルは「安全と愉しさ」を掲げそのブランドを磨き続けてきた。しかしそれはメーカーによる一方的なも […]

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『ジャパンモビリティショー2025』スバルブース概要。

トレイルシーカーは初日のプレスカンファレンスでアンベールされたが、その後の展示ではアウトドアシーンを演出する形に変更されていた。

アンベール時のトレイルシーカー。

そして、トレイルシーカーの傍に1台の電動キックスクーターが展示されていた。フロントカウルにはスバルの六連星エンブレム。リヤタイヤカバーにはウサギのマークがが入っていた。

一般公開後のトレイルシーカー展示。

ウサギのマークでおなじみのラビットスクーター

スバルが航空機メーカーである中島飛行機をルーツとしていることは事あるごとに語られている。そして、中島飛行機が第2次世界大戦終結後に(航空機製造を禁じられたこともあり)平和産業へ転換し、スクーターを開発・販売。その製品シリーズが「ラビット」だった。

ラビットスクーター最初の市販モデルS-1(1946年)。シート下の駆動系カバーにウサギのマークと車名が入る。

ラビットスクーターは戦後のモータリゼーション黎明期にあって国民の足として人気を集め、1946年から1968年まで様々なモデルを展開するが、一方で、国内2輪市場はより高性能なバイクへ移行。ビジネスユースでもホンダ・スーパーカブのデビュー(1958年)が決定打となり、スクーター需要は急激に縮小していった(スクーターが再び盛り上がるのは1970年代末からの原付ブームとホンダとヤマハのシェア争い、通称「HY戦争」による)。

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鉄スクーターという言葉を聞いたことがあるだろうか。70年代後半以後の樹脂やプラスチック製ボディのスクーターと区別するため、1950年代や60年代の古いモデルを「鉄スクーター」と呼ぶのだ。そんな古いバイク、今でもマトモに走れるのだろうかという疑問に、鉄スクーターの中で残存数が多いラビットで応えてみたいと思う。

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ラビットスクーターについてはこちらの記事を参照。

最終的にスバルは2輪事業から撤退するものの、スバル360への礎を作り自動車市場への進出に繋がることになった。

ステッカーチューンに非ず!スバル製特定小型原付のプロトタイプ

最初はトレイルシーカーの展示エリアの雰囲気作りのための小道具で、市販の電動キックスクーターにスバルとラビットのエンブレを入れただけかと思われた……が、然に非ず。スバルが自社で開発したオリジナルモデルだと言う。その名も「e-Rabbit concept(eラビットコンセプト)」。

スバルブースのeラビットコンセプト。

実はJMS2025の西2ホールで開催されていた、未来の乗り物やテクノロジーを提案する企画展「Tokyo Future Tour 2035」にもスバルブースがあり、そこでこのeラビットコンセプトを展示、詳細な解説を行なっていたのだ。

eラビットコンセプトを展示・紹介する「Tokyo Future Tour 2035」のスバルブース。

eラビットコンセプトは元々、社内横断的なチャレンジ企画として始まり、テストを経てスバル太田工場の構内移動に使用されるまで煮詰められてきた。その製作は一部を除きほぼ内製されており、スバルが持つ様々な技術が応用されているという。

eラビットコンセプト。スチール製の頑丈なフレームに、同じくスチール製のカウルを組み合わせる。カウルを樹脂ではなくスチールとしたのは、スチールスクーターであるオリジナルラビットへのリスペクトだ。
フロントカウル下のフレームにもスバルのエンブレムがあしらわれていた。
フロントカウルにはLEDヘッドライトスバルのエンブレム。
フロントカウルはカバーではなくヘッドライトやスピーカーを内蔵したボックス式で、ラビットのエンブレムが入る。
フロントサスペンションは短いながら2本のショックアブソーバーを備えるテレスコピック式。
ブレーキは前後ともワイヤー式のシングルディスクブレーキを採用。
リヤまわりは2本のスイングアームに水平レイアウトのショックアブソーバー1本という構成。
ハンドル端に特定小型原付の走行モードを表すグリーンのランプを装備。ウインカーやホーンなどのスイッチボックスは左に集約。
カラー液晶メーターは速度をメインにバッテリー残量を数値とゲージで表示。下段には走行モードとサウンドのON/OFFが表示される。
スバルが作った特定小型原付! かつての名車“ラビット”をイメージ【ジャパンモビリティショー2025】 | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

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特定小型原付の欠点を補うシステムも同時開発

もうひとつ注目したいのが合わせて紹介されていた「ARグラス」だ。
特定小型原付は車道を走る際は道路の左端を走ることになり、すぐ側をクルマが通りすぎていくことになる。ミラーも装備していないため後方確認は目視が必要だが、小径タイヤの特定小型原付では目視のために振り返れば車体がふらついてしまう。また、メーターの速度を確認するために視線を進行方向から外せばそれもまたリスクとなる。

eラビットコンセプトとARグラスの展示。ARグラスは実際の走行映像を体験することもできた。

このARグラスでは速度などの車両情報や他車の接近アラートを専用のメガネ内に表示することで、視線を外すことなく運転に集中できるというものだ。まさに、スバルが標榜する”安全と愉しさ”や”0次安全”を特定小型原付でも実現するためのツールと言えるだろう。

ARグラスのサンプル映像。スバル太田工場構内を移動しているものだ。

制度や車体、安全性も含めて何かと賛否が分かれる特定小型原付だが、テクノロジーでその欠点を補おうとする姿勢はスバルの技術志向の強い企業風土と安全への拘りを感じさせた。

eラビットコンセプトが市販される可能性はあるのか?

すでに太田工場の構内で利用されテストが重ねられ、すでに完成度の高さが窺い知れるeラビットコンセプトだが、その仕様は現状巷を走る特定小型原付に倣ったものだ。となると、先々、市販されることはあるのだろうか?

クローズド環境とはいえ、すでに利用されているだけに完成度は高い。

例えばソルテラやトレイルシーカーといったEV、クロストレックやフォレスターのストロングハイブリッド車で充電可能とし、ハンドル/フロントカウル部を折り畳んでこれらのクルマに搭載できるようにしたら、かつてホンダがシティ+モトコンポで提案したように、レジャーシーンなどで有効活用できそうな気もする。

トレイルシーカーの展示車両と合わせて、こちらは濃い目のブルーになっていた。

そもそも需要があるのか?コストと価格設定に採算性、加えて販売ルートや保守点検窓口など……製品化するとなるとそういった面が持ち上がってくるため、乗り物として市販レベルに仕上がっているとしても単純に即市販というのは難しいだろう。しかし、販売終了から約60年、ラビット印のスバル製スクーターの復活に期待したくなる。ラビットスクーターのラストイヤーから60年の2028年あたりにどうだろうか?

トレイルシーカーと展示されたeラビットコンセプトのタイヤはブロックパターンの異なるオフロード風。ブレーキも異なるようだ。
リヤタイヤカバーのウサギのマークと車名ロゴは旧来のラビットスクーターのトリビュート。
ウサギの尻尾のようなデザインのまさに”テール”ランプ。