インドネシアの2輪事情を熟知

近年の日本市場では、国内4メーカーが正規導入していない、東南アジア・東アジア各国製の軽二輪と原付二種が数多く販売されている。それらを購入するにあたって、維持で困ることはないのか? 修理や補修部品はどうなんだろう? と考える人は少なくないと思う。

もっとも、今回の試乗でオートサロンオギヤマを訪れた僕は、ここで車両を購入するなら大丈夫‼と感じた。
と言うのも、今から20年以上前にインドネシアに駐在事務所を設立したオートサロンオギヤマは、現地のディーラーやパーツメーカーと密接な関係を構築し、これまでに膨大な数の車両と純正/カスタムパーツを輸入しているのだから。もちろん、メールや電話のやり取りは日常茶飯事で、現地の状況を肌で感じるため、日本のスタッフは頻繁にインドネシアを訪れていると言う。

当記事で取り合げる車両は、そんな同社が輸入販売を行うヤマハWR155Rのカスタム車で、タイヤサイズをフロント:21/リア:18インチ→前後17インチに変更した、スーパーモタードスタイルを採用している。
なお前述したように、同社はインドネシア経由で多種多様なカスタムパーツを導入しているものの、日本でテストを行って何らかの問題を感じた場合は、販売を見送るケースが珍しくないとのこと。

ホイールに関しては過去にそういう事例があったため、WR155R用は独自のキットを設定。その内訳は、インドネシアのV-ROSSI製アリミリム(3.00×17/3.50×17)、ヤマハ純正ハブ、日本の星工業に制作を依頼したスポーク、速度計調整用のスプロケットの4点で、価格は15万4000円である。
親しみやすさと運動性能の向上

本題の前に大前提の話をしておくと、2019年から発売が始まったWR155Rは、東南アジアを主要市場とするトレールバイクで、専用設計のスチールセミダブルクレードルフレームに、YZF-R15/MT-15/XSR155で実績を積んだ水冷単気筒を搭載している。2025年春の東京モーターサイクルショーでヤマハブースに展示され、同年秋にはヨーロッパで125cc仕様が公開されたから、この車両に見覚えがある人はたくさんいるだろう。

そんなWR155Rに対して、一部のライダーが問題視しているのが880mmのシート高だ。と言ってもオフロードの世界では、そのくらいの数値は珍しくないのだが(かつてのヤマハが販売したWR250Rは895mm)、一般的な日本人の体格と日本の道路事情を考えると、880mmを厳しいと感じる人がいるのは当然だと思う。

オートサロンオギヤマが開発したWR155R用のスーパーモタードキットは、そういった問題の解決と舗装路における運動性能の向上が主な目的で、シート高はおそらく850mm前後。オンロードバイクの基準で考えれば決して低くはないものの、スーパーモタード化を図ることで、このバイクは大幅に敷居を下げているのだ。
予想以上の守備範囲と包容力

これはかなり、いいところを突いているなあ……。スーパーモタード仕様にモディファイされたWR155Rでさまざまな場面を走った僕は、しみじみそう思った。
まずはノーマルに対する美点を説明すると、車高とシートが低いおかげでとっつきがいいし、前後輪が小さくなっているので右へ左へという動きが明らかに俊敏。そして同系エンジンを搭載するMT-15やXSR155と比較するなら、適度な重心の高さの効果でスロットルやブレーキを使って車体姿勢の変化が起こしやすいし、混雑した市街地ではアイポイントの高さも有効な武器になる。

言ってみればこのバイクには、ヤマハ製155cc単気筒車の“いいとこ取り”的な資質が備わっているのだ。この特性なら、通勤快速として大活躍できるに違いない。
もちろん、スーパーモタード仕様の魅力が実感できるのは市街地だけではない。ノーマルが不得手とする高速巡行は意外に快適だし、ワインディングではオンロードバイクに近い感覚でスポーツライディングが堪能できる。

ちなみにこのバイクは、前後輪の小径化に加えて、フロントブレーキディスクの大径化(240mm→320mm)を行っているのだが、前後ショックの設定はノーマルのまま。だから当初の僕は、フロントフォークの急激なノーズダイブや、旋回初期の前輪の落ち着きの悪さを危惧していたのだけれど、WR155Rの車体はかなりの包容力を備えているようで、そんな気配は一切なかった。

この原稿を書いている2025年11月現在、オートサロンオギヤマのWR155Rの販売価格は53万4600円で、前後ホイール・タイヤ・フロントブレーキディスクを一新したスーパーモタード仕様は62万1500円。どちらに惹かれるかはライダーの体格や好みで異なるものの、僕個人としては、ノーマルとスーパーモタードキットを購入して、用途に応じて足まわりを交換すれば、かなり充実したバイクライフが送れそうな気がしている。
ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

推定シート高は、ノーマルのWR155Rより30mmほど低い約850mm。ノーマルを日常に使って安心感を得るためには、できれば170cm以上の身長が欲しいところだが、スーパーモタード仕様なら160cm前後のライダーでも何とかなりそう。現在の日本で販売されている軽二輪トレールバイクと足つき性を比較するなら、ローダウン仕様のホンダCRF250Lよりは悪く、カワサキKLX230/シェルパと同じくらい……という印象。

ディティール解説







エンジン
| Tipe Mesin | : | Pendingin Cairan, 4-Langkah SOHC, 4 Valve, VVA |
| Jumlah / Posisi Silinder | : | Silinder Tunggal |
| Torsi Maksimum | : | 14,3 Nm/6.500 rpm |
| Daya Maksimum | : | 12,3 KW/10.000 rpm |
| Diameter x Langkah | : | 58,0 x 58,7 mm |
| Perbandingan Kompresi | : | 11,6 : 1 |
| Kapasitas Oli Mesin | : | 1,10L (Total); 0,85L (Berkala); 0,95L (Ganti Filter Oli) |
| Sistem Starter | : | Elektrik |
| Sistem Pelumasan | : | Basah |
| Sistem Bahan Bakar | : | Fuel Injection |
| Isi Silinder (cc) | : | 155,09 cc |
| Tipe Kopling | : | Tipe Multi-Plate Basah |
| Tipe Transmisi | : | Manual |
| Pola Pengoperasian Transmisi | : | 1-N-2-3-4-5-6 |
足まわり
| Tipe Rangka | : | Semi Double Cradle |
| Suspensi Depan | : | Telescopic 41 mm |
| Suspensi Belakang | : | Monoshock |
| Ban Depan | : | 2,75-21 45P |
| Ban Belakang | : | 4,10-18 59P |
| Rem Depan | : | 240 mm Wave disc |
| Rem Belakang | : | 220 mm Wave disc |
寸法
| P x L x T | : | 2145 x 840 x 1200 (mm) |
| Jarak Sumbu Roda | : | 1430 mm |
| Jarak Terendah Ke Tanah | : | 245 mm |
| Tinggi Tempat Duduk | : | 880 mm |
| Berat Isi | : | 134 kg |
| Kapasitas Tangki Besin | : | 8.1 Liter |
※数値はインドネシア仕様
