オーストラリア大使館で共有されたBWSCの成果と意義

2025年11月20日、在日オーストラリア大使館で「2025 Bridgestone World Solar Challenge Partners Reception」が開催された。2025年8月にオーストラリアで行われたBridgestone World Solar Challenge(BWSC)の成功を祝うとともに、サステナブルなモータースポーツを起点とした共創活動を広く発信することが目的だ。
会場には、日本製鉄、帝人、DHLグローバルフォワーディングジャパンといった共創パートナーのほか、大阪工業大学、工学院大学、東海大学、和歌山大学の学生チーム、さらにBHPジャパン、リオティントジャパンといった鉱山ビジネスの重要パートナーも参加し、産学と産業を横断したネットワークが可視化された。
イノベーションとサステナビリティの両面で挑戦
駐日オーストラリア大使ジャスティン・ヘイハースト氏は、BWSCが同国の大地を縦断しながら持続可能性に貢献する技術を世界に発信している点を強調し、「2025 BWSC Partners Receptionをブリヂストンと共催できたことを光栄に思います。この壮大なBWSCは、オーストラリアの大地を縦断し、持続可能性に貢献する最先端技術を発信しています。革新を推進する才能ある若きエンジニアと大学の皆さんに心から敬意を表します」と語り、大会が単なるレースではなく、持続可能な未来を示す国際的な技術舞台であることを強調し、若いエンジニアへの敬意を表した。

これに対し、ブリヂストン代表執行役Global CEOの石橋秀一氏は、「BWSCおよびサステナブルなモータースポーツ活動は当社にとって『走る実験室』であり、世界中の大学生チームがイノベーションを競い合う熱い舞台でもあります。当社は共創パートナーの皆様とともに、未来を担う次世代エンジニアの挑戦を支えながら、自らもイノベーションとサステナビリティの両面で挑戦を続けていきます。モビリティの未来になくてはならない存在となることにコミットする」と述べ、BWSCを世界中の大学生がイノベーションを競う舞台と位置づけ、共創パートナーとともに次世代を支え続ける姿勢を明確にし、大会支援が企業理念そのものであることを示している。

ブリヂストンのBWSCの取り組みの中核にあるのが、商品設計基盤技術「ENLITEN®」である。これは「薄く・軽く・円く」を設計思想に掲げ、環境性能と運動性能を高次元で両立する技術だ。車両特性や用途に応じて性能のエッジを最適化する「究極のカスタマイズ」を可能にし、EV時代における新たなタイヤの価値を提示している。

オーストラリア3000km縦断する世界最高峰のソーラーカーレース

BWSCは、オーストラリア北部ダーウィンから南部アデレードまで約3000kmを縦断する世界最高峰のソーラーカーレースである。チャレンジャークラス、クルーザークラス、エクスプローラークラスの三つのカテゴリーが設けられ、世界各国から学生を中心に約40チームが参戦する。走行可能時間は8時から17時までに限定され、夜間は自らでキャンプ生活を送る。急激な寒暖差や野生動物の出没といった過酷な環境の中で、参加者には高度な工学知識だけでなく、判断力やチーム運営力も求められる。

BWSC向けに開発された競技用タイヤでは、このENLITEN®技術がさらに研ぎ澄まされ、太陽光という限られたエネルギーで約3000kmを走破するソーラーカー特有の条件に最適化された。低電費性能と高耐久性を両立させるだけでなく、再生カーボンブラックやもみ殻由来シリカを採用。再生資源・再生可能資源比率は63%を達成し、2019年大会の30%から飛躍的な向上を実現している。さらにタイヤ輸送においては、持続可能燃料の使用とカーボンクレジットによる相殺を組み合わせ、カーボンニュートラル輸送を実現するなど、バリューチェーン全体でのサステナブル化も進められている。

ブリヂストンはこの舞台を「走る実験室」と位置づけ、極限条件で磨いた技術を市販用タイヤへとフィードバックしていく。そのサイクルは、単なる技術開発にとどまらず、次世代エンジニアの育成と、産学連携の深化にもつながっている。今回のパートナーズ・レセプションで共有されたのは、BWSCというイベントの成果報告ではなく、モータースポーツを起点にした社会変革へのビジョンそのものであった。

サステナブル・モータースポーツは、もはや競技の枠を超え、技術革新と社会課題解決を接続する実験場となっている。BWSCを軸に、ブリヂストンは共創パートナーとともに、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現に向けた具体的な道筋を示し続ける。その歩みは、モビリティ産業の未来を足元から支える確かな力となっていくのである。

