普通充電しか使わず、オドメーターは3500km増えた

イタリアの電気自動車「フィアット500e」を手に入れてから、ほぼ8か月が経った。オドメーターは納車時から3500kmほど増えているから、ひと月に400~500kmを走っている計算になる。

自動車コラムニストというのは、まさしく自由業であり平日にも愛車に乗る時間はたっぷりある。実際、週に3回くらいはフィアット500eのハンドルを握っているというのが肌感だ。ただし、一回当たりの移動距離は20~40kmと近距離ユースがメイン。ということもあって、オドメーターは穏やかに増えていると感じている。

あらためてお伝えすると、フィアット500eのバッテリー総電力量は42kWhで、満充電での航続可能距離は335km(WLTCモード)となっている。実態としても満充電にすればメーター表示は280km±20kmくらいの航続可能距離を表示している。

バッテリーの搭載を増やすことで航続距離を稼ぐという昨今のトレンドからすると、42kWhというバッテリー総電力量は少なく感じるかもしれないが、上記のような使い方であればバッテリーが足りないと思うことはない。

実際のところ、10日~14日ごとにバッテリーを80%を目安に充電しておくだけで、これまで一度も急速充電は使っていない。自宅などでの普通充電だけでなんの不満もない。

一日の走行距離が200km以内であれば、フィアット500eのような小さなEVでも急速充電は必要ないし、急速充電インフラの整備がEVの普及に必須という巷の声は、ごく一部のEVユーザーもしくは、EVのリアルを知らない人たちの主張なのではないかと思ったりもする。

もちろん、急速充電インフラが整備されているほどイレギュラーな対応がしやすくなるのは事実。急速充電を否定するわけではないが、必要以上に急速充電インフラが求められているというのが、EVライフを送っている中での正直な印象だ。

82kmを走行、バッテリーは22%ほど減った

EVの充電について、自宅や職場での基礎充電(主に普通充電)、移動途中の経路充電(主に急速充電)、そして到着した場所での目的地充電(宿泊施設や駐車場での普通充電を想定)という3種類に分類する考え方がある。

筆者が急速充電を使ったことがないというのは、基礎充電をメインに、たまに目的地充電をするくらいで、経路充電を使ったことがないことを意味している。そして目的地充電についても、無料サービスがあるときに利用するくらいなので、じつは充電のためにお金を払ったことがない。

そんな”無課金”主義を破ってみることにした。

先日、千葉県・柏の葉を訪れた。距離的には満充電で出発すれば余裕で往復できる範囲だが、目的地の目前にある公園に充電設備(6kW普通充電)があると知った。そこで、はじめてお金を払って、目的地充電を試してみようと思い立ったのだ。

柏の葉公園の駐車場に入ると、たしかに調べておいた通りに7基の普通充電器が並んでいる。充電器を管理する業者(DMM EV ON)のアプリも事前にスマートフォンにインストールしておいたので、充電器のQRコードを読み取り、充電プラグを車両につなぎ、アプリで操作するだけで充電は始まった。

ちなみに、100%の充電率で出発。ここまで約82kmを走行して、メーターの充電率は78%となっていた。ここから逆算すると充電率1%あたりの走行可能距離は3.5km以上となる。カタログスペックの一充電走行距離335kmを現実的に感じるペースで走っていた。なお、往路の平均電費を、メーターは9.2km/kWhと表示していた。

現実的に充電せずとも復路を余裕で走れるだろうし、バッテリーが80%近い状態で追加充電する必要もない。あらためていえば、経験として有料の公共充電器による目的地充電をしてみたわけだ。

今回利用したDMM EV ONの料金体系は税込55円/10分となっている。1時間つなぐと330円で、6kWh相当の充電ができる計算になる。

これは1kWhあたりのコストが55円ということを意味する。家庭用の電気契約では1kWhあたり30円以下で済むことが多いので、基礎充電の倍近いコストがかかってしまう。

しかも、今回利用した柏の葉駐車場は駐車料金もかかる(4時間以内300円)。後述するように50分ほど充電して、充電料金は275円だったので、合わせると575円もかかってしまった。

今回のケース、合理的に考えれば、お金を使って充電すべきではない。あくまで経験としての目的地充電として理解いただきたい。そして、公共の充電器を利用すると、どうしてもコストが高くなってしまうことも再確認してほしい。

とはいえ、エンジン車と比較すると印象は変わってくる。6kWhの充電コストが330円として、前述したように9.2km/kWhの電費であれば、55kmの走行分に相当する。レギュラーガソリンを165円/Lとして、27.5km/Lの実燃費で走るハイブリッドカーと同じくらいの走行コストであるから、割高とはいえないかもしれない。

それでも、基礎充電をメインに運用することがEVの基本だ。

もし今回のドライブにおいて、出発時の充電率が80%程度であったなら、そのまま往復できるとしても、目的地充電によってリカバリーすることは安心感につながるだろうし、予定外の寄り道をする余裕が生まれるのも事実。マイカーらしいフレキシビリティを確保するという点において、公共の充電インフラを活用することはアリだと思う。

6kW普通充電がベストと感じたワケ

個人的な意見だが、目的地充電には2つのタイプがあると考えている。

ひとつは宿泊施設の駐車場などで行う目的地充電で、この場合は到着時から出発時まで長い時間があるケースが多いだろう。そうであれば、フィアット500eくらいの小さなバッテリーを充電するためには3kW出力の普通充電器があれば十分に用を足す。

一方、今回のように1~2時間程度の滞在を前提とした目的地充電では、6kWと出力の大きな普通充電のほうが目に見えて充電されるのがうれしい。

じつは充電開始から30分程度はランチタイムとしていたのでクルマから離れていた。40分すぎにアプリを立ち上げ、充電量を確認したところ4.5kWhほど入っているという表示だったので「もう十分だろう」とクルマに戻った。その段階で4.9kWhほど充電され、バッテリーの充電率90%に迫っていたので、そこで切り上げた(充電を終了した)。

驚かされたのは、アプリの表示によれば充電速度(出力)が6.1kWとなっていたこと。

一般論として充電率が80%を超えると、急速充電器につないだときに充電出力が抑えられる傾向にある。今回のように80%近いところからの充電というケースであれば6kW普通充電がもっとも効率よく電気が入っていくのだろう。

いずれにしても、宿泊以外の目的地充電であれば6kWがベストといえるだろうし、大きなバッテリーを積むEVであれば宿泊施設でも6kWで充電したい。古い機械は別として、最近設置されている普通充電サービスの多くが6kWとなっているのは、リアルなEVユーザーのニーズに応えているといえそうだ。

それはさておき、復路は84km弱を走って、バッテリー充電率は65%まで減っており、電費は9.6km/kWhとなっていた。やはり目的地充電なしで往復できた。片道80km程度であれば、こんなに小さなEVであっても余裕で使えるのである。