住友ゴムがダンロップ商標を世界で取得、ONE DUNLOP体制へ

住友ゴム工業がグローバルでのブランド戦略を本格的に再構築しようとしている。同社は2025年、欧州、北米、オセアニア地域における四輪用ダンロップ商標権を取得し、続く12月にはマレーシア、シンガポール、ブルネイにおける独占使用権も確保し、2026年1月からDUNLOP製品販売を開始する予定だ。これにより、長らく地域ごとに分散していたDUNLOPブランドの権利が住友ゴムに再び集約され、世界規模で一貫したブランド展開が可能になったのである。事業とブランドの両面で大きな転換点を迎えている。

DUNLOPブランドの世界統一をプレゼンテーションした、住友ゴム工業 山本 悟代表取締役社長。

新ステートメント「TAKING YOU BEYOND」が示すブランド再構築

今回の戦略を象徴するのが、新たに策定されたブランドステートメント「TAKING YOU BEYOND」だ。このステートメントは、ユーザーの挑戦を支える安心感、期待を超える体験、限界に挑む精神の三つを核に据え、同社が提供する価値の方向性を示すものである。単なる広告表現ではなく、今後の製品開発やサービス展開に横断的に適用される“ブランド哲学”として位置付けられる。住友ゴムはこれをDUNLOPの世界共通メッセージとして掲げ、コミュニケーションブランドを全世界で「DUNLOP」に統一する方針を明らかにした。

ブランドステートメント「TAKING YOU BEYOND」は、挑戦を支える安心感、期待を超える体験、限界に挑む精神を三つの核に据える。

特徴的なのは、この統一がタイヤ事業の枠を超えている点である。DUNLOPはこれまでもゴルフクラブやテニス用品をはじめとするスポーツ用品を展開し、モータースポーツ領域でも幅広いカテゴリーを支えてきた。しかし今回の再編では、それらすべての領域を横断し、ブランド体験を一つのストーリーで結ぶことが重視されている。スポーツ、ライフスタイル、モータースポーツ、サービスといった接点を総合的に「DUNLOP」として再定義し、消費者がどの場面でも同じ世界観を感じられるように設計されているのである。

商標権の再集約は、その世界観を統一して届けるための前提条件でもあった。かつてダンロップは地域ごとに所有者が異なり、国や領域によってロゴ表現やブランド運用が必ずしも統一されていなかった。住友ゴムが2025年に欧米豪の商標権を取得し、さらに東南アジア三カ国の独占使用権を確保したことで、グローバル単位で一貫したブランドの姿を作る条件が整った。住友ゴムは「ONE DUNLOP」を掲げ、販売会社の社名も順次「DUNLOP」を冠する形へ改称していく方針を示している。企業名は従来どおり住友ゴム工業を維持しながら、ユーザー接点ではDUNLOPを前面に打ち出す構造だ。

欧州・北米のタイヤ販売会社の代表も登壇し、DUNLOPブランド更なる進化に向けたメッセージを発信した。

欧米市場を見据えた高付加価値タイヤ開発と生産刷新

製品領域では、欧米市場を中心に高付加価値タイヤの開発を加速させる計画が示されている。性能とプレミアム性を両立するハイエンドタイヤの投入を見据え、生産設備の刷新や開発体制の強化が進められる。世界的に高性能SUVやEV向けタイヤの需要が高まる中、DUNLOPをプレミアムブランドとして確立するための投資が行われているという位置付けになる。具体的な製品ラインナップは現時点で語られていないが、ブランドステートメントの内容から見ても、単なるモデル拡充ではなく価値提案そのものを高める方向へ舵を切っていることがうかがえる。

会場に展示されたポルシェ911 GT3。バリーデザインはDUNLOPが「グランツーリスモ」のオフィシャルタイヤパートナーに就任したことを記念し特別にデザインされたものだ。

今回の戦略は日本市場にとっても無関係ではない。DUNLOPは国内で高い認知を持つブランドだが、その価値観や世界観が世界基準に合わせて再整理されることで、製品ラインアップの位置付けやブランドの見え方にも変化が生じる可能性がある。ユーザーが接するDUNLOPブランドはより“グローバルな顔つき”になるだろう。また、モータースポーツやスポーツ用品を含む広い領域で統一的なブランドコミュニケーションが展開されれば、タイヤ購入以外の場面でもDUNLOPの価値に触れる機会が増えていくはずだ。

外径40インチの大外径タイヤは、バランスウェイトでの対策に限界があり、よりばらつきが少なく真円度の高いタイヤが求められる。主に材料のつなぎ目(ジョイント)がばらつきを生むため、ストリップワインド方式を採用し、高い真円度に加えてジョイントの偏りを低減。重量バランスにも優れたタイヤを実現している。

DUNLOPは130年以上続く歴史あるブランドであり、住友ゴムはこれまでも技術力を背景に強いプレゼンスを築いてきた。今回のブランド再統一は、過去の遺産を現代の市場に再接続し、未来の事業成長に結び付ける大きな転換点である。グローバル市場での競争が激化する中、DUNLOPがどのように価値を再定義し、ユーザーに新しい体験を届けるのか。2026年に向けて、ブランドの動きはさらに加速していくことになりそうだ。

スーパーGT GT500クラスに参戦するModulo Nakajima Racingの中嶋悟監督、伊沢拓也選手、大草りき選手もゲストとして駆けつけた。