ボンネットダクトはなぜ存在するのか それには吸気・冷却・空力の関係が。

ダクトのついた車の写真
大きな穴が空いている車は一際目立つ。

街中や高速道路でボンネットに穴のあるクルマを見かけると、思わず目がいく場面があるかもしれない。大きな開口部や盛り上がった形は迫力があり、見た目のインパクトが強い。

しかし、実際には、見た目のためではなく、エンジンルームの空気の流れを整えるために設計されたものが多い。

このボンネットに設けられた穴は「ダクト」や「スクープ」と言い、吸気を取り込む仕組みと、熱を逃がす仕組みを両立させるための重要な装置である。

クルマは前から入る空気と、エンジンルームから抜けていく空気がどれだけスムーズに流れるかで、性能や温度管理が大きく変わる。

そのため、メーカーはどこから空気を取り入れ、どこから逃がすかを細かく計算しており、ボンネットダクトはその「入口」または「出口」として機能している。

上置きインタークーラーの写真
しっかり冷やせないとその効果を発揮することができない。

とくにターボエンジン搭載車では、吸気の温度をしっかり下げることが馬力や耐久性に直結するため、ダクトの役割は非常に重要になる。

たとえば、スバル「WRX STI」はインタークーラーをエンジンの上に載せる構造で、ボンネット上のフードスクープが走行風を直接インタークーラーへ送り込み、吸気温度を一気に下げている。

スクープから入る空気は、内部にあるスプリッターと呼ばれる板によって左右や前後に振り分けられ、冷却効率を高めるように調整されている。

このことに関して、あるアフターパーツメーカーは、インタークーラーを大型にしても、スプリッターの形状が合っていなければ風が当たらない部分が出て性能が十分に発揮されないと説明している。

そのため海外メーカーでは、インタークーラーを変更する場合は専用のダクトやシュラウドを組み合わせ、風をコア全体に当てるように設計しているところもある。

つまり、ボンネットの開口部と空気を流すための内部パーツはセットで機能しており、一方だけを変えても効果は限定的である。

様々な車に取り付けられているダクト。

また、ダクトは「空気の入口」だけでなく「熱を逃がす出口」として使われることもある。

ホンダ「シビック TYPE R」では、ラジエーターを通った高温の空気がエンジンルーム内に溜まらないよう、ボンネットの後端に排出口を設けて熱気を上に抜く構造になっている。

これによって、エンジンルーム内の温度上昇を防ぎつつ、前輪付近の浮き上がりも抑えている。

同じ考え方はホンダ「NSX-GT」のようなレーシングカーでも徹底しており、ラジエーターから出た熱気をボンネット上に逃がすことで、吸気の温度やリアウイングの空気の流れまで安定させている。

また、ダクトは「空気の入口」だけでなく「熱を逃がす出口」として使われることもある。

ホンダ「シビック TYPE R」では、ラジエーターを通った高温の空気がエンジンルーム内に溜まらないよう、ボンネットの後端に排出口を設けて熱気を上に抜く構造になっている。

これによって、エンジンルーム内の温度上昇を防ぎつつ、前輪付近のリフト(浮き上がり)も抑えている。

同じ考え方はホンダ「NSX-GT」のようなレーシングカーでも徹底しており、ラジエーターから出た熱気をボンネット上に逃がすことで、吸気の温度やリアウイングの空気の流れまで安定させている。

ラジエーターから出た熱気をボンネット上に逃がすCIVIC TYPE R エアフローレイアウト。

また、トヨタ「86」やスバル「BRZ」などは純正では大きなダクトを持たないが、サーキット走行をするユーザーはルーバー付きダクトを後付けするケースが多い。

これは、走行風でエンジンルーム内の熱を外に引き出し、水温や油温の上昇を抑えるためである。低圧部分を利用して自然に空気が抜けるため、負担の大きい夏場でも温度が安定し、走りの安心感につながる。

SUVでもボンネット後端やフェンダーまわりに小さな開口が隠されており、これも熱を逃がしたり、空気を流したりするための設計である。

つまり、ボンネットのダクトは単なる外観パーツではなく、エンジンの温度管理やクルマの安定性を支えるための「空気の通り道」として成り立っている。

メーカーはデザインだけでなく、空気の流れや安全性まで踏まえて設計しており、どの位置にどんな大きさの穴を作るかを綿密に判断している。

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ボンネットダクトは、吸気の冷却や排熱、空力の安定まで担う重要な機能部品である。見た目とは裏腹に、走行性能と信頼性を支えるための空気の通り道として精密に設計されており、日常で目にする小さな開口部にも、クルマの走りを支える空気の技術が詰め込まれている。