スバル初のストロング・ハイブリッド＝S:HEV
現行スバル・クロストレックがデビューしたのは2022年9月。ストロング・ハイブリッドのS:HEVがラインアップに加わったのが2024年12月だった。2.5Lの水平対向4気筒DOHCにトヨタのハイブリッド・システムをベースに水平対向エンジンに適応したS:HEVは、2025年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したフォレスターにも搭載されている。おそらく、今後、電気自動車を除くすべてのスバル車に載せていくことになるのだろう。それだけの価値があるパワーユニットである。
さて、筆者は12月上旬、S:HEVを最初に載せたクロストレックと１週間、生活をともにしてみた。
マイルドハイブリッド版（2.0L水平対向4気筒DOHC+10kWのモーター）も試乗したことがあるが、S:HEV版は乗り味というかクルマの質感が、完全に１ランク上のクルマだと乗ってすぐに実感できる。
街中でも取り回しが楽なコンパクトなSUV（クロスオーバー）のカテゴリーは、トヨタ・カローラクロス、ホンダ・ヴェゼル、マツダCX-30など強力なライバルがひしめいている。クロストレックの美点は、やはりAWD性能だろう。弱点は、これまでは燃費だった。スバルのエンジニアに聞くと、「いやいや、燃費もちゃんとクラス平均にはなってますよ」とおっしゃるのだが……。
570km走行。燃費はどうだった？
S:HEVは、EV走行が可能だ。信号待ちでアイドルストップしたのち、青信号になってアクセルを踏む。するとすぐにモーター駆動で走り出す。ほんのコンマ数秒のことだが、これが心地よい。
バッテリーの状況次第で、エンジンが停まりEV走行に切り替わる。エンジンの再始動は、「注意していないと気づかない」とはまったく言わないが、エンジンがかかるがっかり感は薄い。これも美点だ。
今回、574.2km走行した。燃費は18.4km/L。WLTCモード燃費の97.4%の達成率だから、なかなか優秀だ。もちろん、特段省燃費ドライブをしたわけではない。
ちなみに、
カローラクロス（1.8L+HEV E-Four）のWLTCモード燃費は24.6km/L
ヴェゼル（1.5L＋HEV AWD）だと21.4km/L
CX-30（1.8Lディーゼル AWD）だと19.2km/L
だから、クロストレックS:HEVの18.9km/Lに燃費的なアドバンテージがあるわけではない。が、それでもスバルの水平対向＋AWDがこの燃費になるのは、スバリストならずとも、「おっ、これはちょっと試乗してみようかな」とショッピングリストに載せてくれるようになるのではないだろうか。
最近、フォレスターS:HEV＋オールシーズンタイヤで、雪道を走る機会があったが、まったく問題なかった（アイスバーンになったら、もちろんスタッドレスには敵わないが）。その経験から言えば、クロストレックS:HEV（AWD）なら、豪雪地帯を除けば、冬場にタイヤ交換する必要はなさそうだ。
良いことずくめのS:HEV。クロストレックを選ぶならS:HEV、だと思う。が2.0L+マイルドハイブリッドのモデルも気負わないで乗れる（価格も含めて。プレミアムS:HEVとリミテッドの価格差は38万5000円）ので、こちらを選ぶというのもアリだ。
ひとつ、どうしても馴染めない（個人的には）のが、センターディスプレイとUIだ。縦型は、ナビゲーションをヘディングアップでする人にはメリットがあるかもしれないが（筆者はノースアップ派）、UIがどうしても馴染めない。たとえば、前に白煙を吐きながら走るトラックがいたとき、エアコンを内気循環にすぐにしたい。そのときに、センターディスプレイの階層を少し掘らないと、内気循環にできない。いろいろな機能がこのセンターディスプレイにあるのはわかるのだが……。
燃費は、S:EHVの18.9km/Lに対して、マイルドハイブリッドは16.4km/L。15%程度しか変わらない。だから、燃料代の差額でハイブリッド代を賄うには、相当の距離を走らなければならない。ちなみに、S:HEVのガソリンタンクは63L（マイルドハイブリッドは48L）。今回の試乗時の燃費（18.4km/L）でも１タンクで1159km走れる計算だ（マイルドハイブリッドなら787km）。足の長さはクロストレックS:HEVの大きな魅力になる。
SUBARU クロストレック Premium S:HEV EX
全長×全幅×全高：4480mm×1800mm×1575mm
ホイールベース：2670mm
車重：1660kg
サスペンション：Fストラット式／Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式：4WD
エンジン
形式：水平対向4気筒DOHC+モーター
型式：FB25
排気量：2498cc
ボア×ストローク：94.0mm×90.0mm
圧縮比：11.9
最高出力：160ps（118kW）/5600pm
最大トルク：209Nm/4000-4400rpm
燃料供給：DI
燃料：レギュラー
燃料タンク：63L
駆動用モーター：MC2型交流同期モーター
最高出力：88kW（119.6ps）
最大トルク：270Nm
駆動用バッテリー：リチウムイオン電池
容量1.1kWh
トランスミッション：リニアトロニック
燃費
WLTCモード：18.9km/L
市街地モード15.4km/L
郊外モード20.6km/L
高速道路モード19.7km/L
車両本体価格：438万3500円
メーカーオプション：本革シート、サンルーフ、アクセサリーコンセント、ルーフレール29万7000円
