フィアット トッポリーノ:まだ会えぬ“憧れの相棒”



「フィアット トッポリーノ」は日本未発売で、私自身まだ乗れていません。けれど、写真や欧州からのレポートを追いかけているだけで、その個性と“かわいさ”に心を掴まれています。ボディサイズは全長2530mm、全幅1390mm、全高1520mmという超コンパクトで、荷室容量は63Lとされています。数字だけ見ると「小さすぎるのでは?」と思うかもしれませんが、日常の買い物や週末のちょっとしたお出かけには十分なパッケージです。
丸いヘッドライトにパステルカラーのボディ、前から開くドアや明るいガラスルーフ。構成要素の一つひとつが、“速さ”ではなく「カーライフスタイルを楽しむための道具」としてデザインされています。出力6kWのモーターに約5.5kWhのバッテリーを組み合わせ、航続距離75km、最高速度は45km/h。日常の足として、“足りていればいい”レベルに割り切っています。その一方で、街に映えるキャラクターと気軽さはトッポリーノならではのモノでしょう。
もしこれが日本に入ってきたら、通勤や買い物だけでなく、週末にはお気に入りのカフェや海辺へ連れ出したくなるでしょう。例えば神奈川県の鎌倉のように、歩行者と自転車とクルマが入り混じるエリアをトッポリーノでゆっくり流したら──、そんな妄想だけで、ちょっと幸せな気分になってしまう“憧れの相棒”です。
AIM EVM:すでにナンバー付きで走り始めた「島サイズのEV」



名古屋に本社を置くエンジニアリング企業のエイムがつくった「EVM」は、すでに一部地域でナンバーを取得しています。私も試乗の機会に恵まれました。ボディサイズは全長2490mm、全幅1295mm、全高1560mmでトッポリーノとほぼ同サイズ。軽よりもひと回り小さい寸法です。
そんなコンパクトボディでも、大人2人が自然な姿勢で座れ、飛行機の機内持ち込みサイズのキャリーケースが3個積める荷室を確保しています。フル充電からの航続距離は約120km。日常の買い物から、週末には荷物を積んで2人でお出かけという使い方にもぴたりとハマるバランスです。
沖縄の守り神「シーサー」をモチーフにしたフロントとリヤに明るい白のインテリア。こちらもトッポリーノ同様、まずデザインの楽しさに目を奪われます。実際にステアリングを握ると、最小回転半径3.5mが効いて細い路地でもストレスを感じることはありません。40km/hの速度域(最高速度は60km/h)までスムーズに加速するトルク感とちょっと高めの視点によって、島の生活道路を走るのにちょうどいい走りができます。
AIM EVMは、「生活の道具として足りていること」と「乗っていてちょっと笑顔になるデザイン」の両方を、うまく両立させた一台だと感じました。
ほかのマイクロEVたち


今秋開催されたジャパンモビリティショー2025 (JMS)には、小さなEVのコンセプトカーがいくつか出展されていました。「ダイハツ ミゼットX」は、“自転車以上・軽未満”のEVという新しい提案。「ホンダ Micro EV」はブロック状のボディとシンプルなキャビンで、都市型の「ちょい乗りEV」の世界観を描いていました。海外に目を向ければ、トッポリーノの兄弟車「シトロエン Ami (アミ)」も既に街に登場し、超小型EVが街のインフラに近い存在になりつつあります。
「走り」よりも、「暮らし」を面白くするクルマへ

トッポリーノもAIM EVMも、絶対的なパワーや航続距離で勝負するクルマではありません。それでも、動力性能もキャビン&荷室の広さも、日常生活に“ちょうどいい”。加えて、小回り性能と個性的なデザインを武器に、オーナーの毎日をちょっと楽しくする―そんな役割を担う存在です。
大排気量のスポーツカーが“走りの夢”を見せてくれるマシンだとしたら、コンパクトEVは“暮らしの夢”を見せてくれる相棒かもしれません。これからは、マイクロEVたちにも注目です。

