LAMBORGHINI TEMERARIO
インパクトのある数字

令和の時代にスーパースポーツカーの限界性能を知ることは難しい。性能はもちろん、公道ではその性能の一端に触れることもできない。その点、今回の試乗は鈴鹿サーキットなのでありがたい。なにしろ試乗するのは最新ランボルギーニの「テメラリオ」。搭載されるV8の最高回転数は1万rpmである。
自然吸気で9000rpmに達する乗用車用エンジンはこれまでも見てきたが、サンタアガタ・ボロニェーゼが開発したこのV型8気筒エンジンは、ツインターボでありながら1万rpmというインパクトのある数字を叩き出した。ゴードン・マレー・オートモーティブのT.50(1.2万rpm)は量産ではないし、金額も台数も桁違いだし、何より自然吸気だ。
テメラリオは、ランボルギーニの電動化戦略「コル・タウリ」に則り、ウルトラスポーツカーを標榜するレヴエルト、スーパーSUVを標榜するウルスSEといったPHEVモデルなど、順次電動化が進められてきたラインナップの最新作である。
レーシングコース3周を2セット

リヤミッドに最高出力800PS/9000〜9750rpm、最大トルク730Nm/4000〜7000rpmを発揮する4.0リッターV8ツインターボを搭載し、それに3モーターを組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)、ランボルギーニが主張するところのHPEV(ハイパフォーマンスEV)である。3つの電気モーターは、リヤミッドのV8エンジンと(エンジン後方に横置きされる)新開発8速DCT間のP1ポジションに位置するモーター、それとフロントアクスル左右にそれぞれ最高出力110kW(150PS)を発揮するモーター2基で構成される。
エンジンとモーターを組み合わせたシステム最高出力は920PSに達し、0-100km/h加速は2.7秒、0-200km/h加速7.1秒、最高速343km/hを誇る。センタートンネルに搭載されるリチウムイオンバッテリー(長さ1550mm、幅301mm、高さ240mm)は電力量3.8kWhで、EV走行も10km程度可能だという。駐車時の7kW充電なら30分でフルになり、走行中もフロント回生ブレーキとV8ツインターボを使えばなんと6分でフル充電可能で、CO2排出量は先代(ウラカン)比で50%削減されたと謳う。
しかし、今回は燃費だの充電だのは度外視だ。なにしろ鈴鹿サーキット試乗なのだ。試乗スタイルは通例どおりの先導車付きカルガモ走行で、しかも助手席にはお目付役としてインストラクターが同乗する中で行われた。レーシングコース3周2セットで、1周目はウォームアップ、2周目がホットラップ、3周目は充電を兼ねたクールダウンという流れだ。先導車はレヴエルトが担う。
ドライビングをコルサ、ハイブリッドはパフォーマンスで

すでに試乗用テメラリオは、ピットに並べられ、準備万端整っている。エクステリアはすっきりとしたミニマルな印象で先代ベイビーランボのウラカンよりもいくぶん大きくなった印象だ。標準車の時点で、冷却性能と空力性能に優れているが、今回の試乗車は軽量化が施されたアレジェリータパックで、インテリアのオプション(カーボンドアトリムなど)と合わせて標準車比で25kg以上減量効果があるという。ちなみに空力付加物のおかげもあってダウンフォースも158%増となるそうだ。
サーキットは前夜の雨がわずかに残る箇所はあるものの、ほぼドライ路面だ。だが装着されるタイヤはレヴエルト同様のブリヂストン・ポテンザスポーツなので安心感は高い。ドライグリップだけではなくウエットでも高性能を発揮するのは雨の富士スピードウェイで行われたレヴエルト試乗で確認済みである。
ドライビングモードはEV走行「チッタ」、標準モード「ストラーダ」、スポーティーな「スポルト」、サーキット向け「コルサ」の4モードで、ハイブリッドモードは標準モードの「ノーマル」、スポーツ走行向け「パフォーマンス」、充電モードの「リチャージ」という3モードを組み合わせる。なおハイブリッドの「パフォーマンス」はスポルト/コルサ時のみ選択できるのはレヴエルトと同じだ。ドライビングモードをコルサ、ハイブリッドモードはパフォーマンス、マニュアル変速を選択してコースインした。
息苦しさなど微塵も感じさせず回る

スペックから期待されるとおりの活発な4.0リッターV8ツインターボエンジンは、アクセルオフで生じる破裂音が勇ましい。ウォームアップを終えて、シケインから立ち上がり、デジタルメーターに表示される回転数を睨み、額面通りの1万まできっちりと回す。エンジン音はやや乾いた、しかし粒の揃った端正な音を奏でつつ息苦しさなど微塵も感じさせず回る。
2速1万rpm140km/h。すぐさまシフトアップしても8000rpm近くでつながるため、その加速に衰えはない。モーターのアシストを受けて、920PSもの最高出力を発揮しながら、あっという間に3速もフケきる。190km/h。続く4速で255km/h。高回転の極みでも荒々しさや不安感はなく、完全に制御下にある安心感がある。先導車の加速が鈍かったのとブレーキングが手前だったので280km/h止まりだったが伸び代はまだあった。
一方で変速時のシフトショックは想像以上に大きい。特にシフトダウンの際には、もしかすると姿勢を乱すキッカケになるかもと予感するほどだった。これはマニュアルシフトでもオートシフトでもそうだったので、「やっている感」の演出なのかもしれないが、やや不安感があった。
ブレーキングはペダルタッチも含めて良好だ。試乗会、しかも鈴鹿なのでギリギリのブレーキは試さなかったが、フロントで回生しつつ安定した減速は信頼感があった。
自然吸気から乗り換えても伸びやかな加速に違和感はない
コーナリングは以前に乗ったレヴエルトと比べて圧倒的に軽快感がある。ドライビングモードでスポーツを選択するとアクセルオンでリヤが出やすく、達成感を得やすいが、サーキットで圧倒的に安心感があるのはコルサだ。アクセルオンでドライバーの意を汲んでバランスよく、そして高いスタビリティを示しつつ向きを変える。
S字の切り返しで、先導するレヴエルトがやや苦しそうなのと比べると、テメラリオはまだまだ余裕がある。レヴエルトとはサイズも重量(80kg差で意外と少ないが)も異なるため、当然ながらテメラリオの方がサーキットは楽しいが、レヴエルトもその見た目から想像されるよりも圧倒的にサーキットにおける才能があることは付け加えておきたい。

試乗を終えて、テメラリオの立ち位置を改めて考えた。先行して登場したレヴエルトは、アヴェンタドールの後継車として新開発とはいえ同じV12を引っ提げて登場した。一方のテメラリオは、「ガヤルド」時代(!)から長年使われてきたウラカンの5.2リッターV10自然吸気を捨てて、まったく新しい4.0リッターV8ツインターボを組み合わせた、その英断が素晴らしい。
1万rpmという規格外の最高回転数は、V10自然吸気から乗り換えても、伸びやかな加速フィールに違和感はないだろう。さらに電気モーターによる繊細なフロント制御と豊かな低速トルクは高い安心感を同時にもたらしてくれた。レヴエルトとテメラリオが作るランボルギーニ新時代にますます期待が高まった。
PHOTO/ランボルギーニ・ジャパン
SPECIFICATIONS
ランボルギーニ テメラリオ
ボディサイズ:全長4706 全幅1996 全高1201mm
ホイールベース:2658mm
車両乾燥重量:1690kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3995cc
エンジン最高出力:357kW(800PS)/9000〜9750rpm
最大トルク:730Nm(74.4kgm)/4000〜7000rpm
モーター最高出力:220kW(299PS)
システム最高出力:677kW(920PS)
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:Fダブルウイッシュボーン Rマルチリンク
ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):F255/35ZR20(9J) R325/30ZR21(11.5J)
0→100km/h加速:2.7秒
最高速度:343km/h

