「おお、そういえば」と思ったらやってみて
すぐそこまで大晦日が迫っているタイミングでいうことじゃないが、冬到来。
今年の年末年始は10年に1度の暖かさだという(と書いている12月24日夜のたったいま、気象庁が一転、「年始は低温。九州北部では10年に1度程度の低温」といってきたので困っているところだ)が、冬には違いない。
ご自分のクルマをスタッドレスタイヤに履き替えるとか、ワイパーを取っ替えようかなどと考えているひともいるだろう。
くもりとも汚れともちがう、視界を遮る厄介なヤツ
むかしのクルマ乗りは、長距離の移動をするとき、例えばドライブ計画は時間帯をも考慮して立てたという。
東から西に移動するときは朝早く出発する、逆に西から東に向かうときは夜以降を選ぶといった具合だ。
太陽は東から昇り、西に沈んでゆく・・・眩しい思いをしながら太陽に向かって走ることのないようにというのが理由である。
だが、現実には、ときに太陽と向かい合わせで走らざるを得ないシーンにも出くわす。
太陽光が眩しければサングラスをかけるなりサンバイザーを降ろすなりすればいい。
問題は、太陽光を受けた計器盤上面の、フロントガラスへの映り込みだ。
これが運転視界を邪魔するのだが、何しろ相手は太陽。
地球を温暖化させてしまうほどのパワーの持ち主だけにいかんともしがたい。
クルマのカタログかサイトでクルマの内装写真を見てみるといい。
どの車種でもいいのだが、とにかく明るい内装色のやつ。
ここでは参考例として、2014年の3代目最終ティアナと最近発表された3代目リーフの内装写真を掲げてみる。
全体は明るいカラーであっても、少なくとも計器盤の上面の全面、またはフロントガラス寄りの部分は黒または茶色などの濃色系統になっている。
気の利いたクルマなら、ドア内張り上部も黒くなっている。
これらはいずれも、白は光を反射し、黒は吸収する性質を利用しての、ガラスへの反射を抑えるための策だ。


ただしこれもクルマによってバラツキがある。
明るめの色はもちろんのこと、グレー、そしてたとえ黒であろうと、計器盤の材質や表面処理しだいでは反射は避けられない。
昨今のクルマはよほど値段の高いクルマでもない限り、ダッシュボード上部の表面を指先で押しても爪痕が残らないカチカチのプラスチックになってしまった。
このような材質だと表面のツヤが災いし、晴れの日にガラスに反射することになる。
高いクルマともなると、かけられるコストなりのつや消し処理を与えた節があり、見れば表面はボンヤリしていてガラスへの反射をより抑えようとしている。
だが、完全に退治するのは不可能なようで、よく見るとツヤのない計器盤模様がガラスに少なからず映っているものだ。
そしてその度合いは、フロントガラスの傾斜角や計器盤奥行き寸法との兼ね合いでいくらでも変わってくるのである。
ひとつ知識を述べると、カチカチ、フワフワ問わず、計器盤表面のあのザラザラ模様(「シボ」とか「梨地模様」という)自体、そもそもは反射対策のためにつけられたものだ。
表面をザラザラ模様にすることで受けた光をあちらこちらに分散させ、ガラスへの映り込みをできるだけ防ごうとしているのだ。
もしあれが模様のないツルツル表面(俗に「打ちっぱなし」という)だともろに反射してガラスに映り込んでしまう。

意外と簡単にできる反射防止対策
この原理に気づかず、「ガラスはきれいにしているのに、なんか晴れの日は視界が白けるなあ」と潜在的に思っているひともいるのではないか。
ここで筆者が考えた対策をお教えしよう。
さきほど「黒は光を吸収する」と書いた。
それを利用して、いっそのこと、計器盤上面をまるまる黒い布で覆いつくしてしまうのだ。
ダサい見てくれにはなってしまうが、それと引き換えにクリアな視界が得られるならそれも仕方あるまい。
ここでは簡易的に実験してみる。
実験するには、本当はフェルトのマフラーがいいのだが、しまっておいたはずなのにどっかにいっちまった。
乱暴だが、今回はユニクロの黒のセーターを使うことにする。
撮影の間も太陽は刻一刻と動くため、写真によってクルマの向きが変わったり景色が変わったりしている点はごかんべん。

使うクルマは毎度おなじみ筆者の旧ジムニーシエラ。
旧ジムニーの場合、車内どこもかしこも真っ黒けっけで、運転席からの映り込みの影響は少ない。
ために実は冒頭の写真はテーマがわかりやすいよう、運転席の外から撮って映り込みが大げさになるように撮ってある。
実際には次の写真ていどの映り込み度合いだ。
この状態でセーターを置いてみよう


ここに黒い布(ここでは黒セーター)を載っける。
ガラスに映り込んでも、それは光を吸収した黒セーターであるため、結果的に映り込みがなくなったのと同じになっている。
黒い布の映り込みで、映り込みが疑似的に解消され、スッキリした視界が得られた格好だ。

実はこれは、私が前に使っていた、ベージュカラーの日産ティーダで行なったことだ。
あのクルマ、どんなプラスチックを使っていたものか、計器盤上面のプラスチックがツヤツヤに輝いていて、「このクルマ担当した実験部、ちょっとこっち来い」といいたくなるほど、晴れの日には計器盤上面がまるまるフロントガラスに映り込んで困ったものだった。



本当は黒内装のクルマを選べばいいのだが、私は自動車の黒内装は狭く感じるのと、火事の焼け跡にいるみたいなのがイヤなので、ベージュを選択。
ティーダのベージュ内装だって、計器盤上面だけはこげ茶色にしていたが、いかんせんプラスチック素材そのものがツルツルなので、あまり意味をなしていない。
見た目を変えずにツヤを消す何かはないかとケミカル材を探したのだが、そもそも計器盤の「ツヤ出し剤」は売っていても「ツヤ消し剤」は存在せず・・・ガラスの内側処理も考えたが、何かを貼るわけにもいかない。
というわけで、ここは見た目が変わってしまうのは承知の上、いっそダッシュボード上面を、黒くしちまおうと考えたわけだ。
このときは裁縫用具屋さんで黒いフェルト布を必要面積ぶんだけ買い込み、クルマから外した計器盤の上面パネルを布用接着剤で包み込んで貼っつけた。



これはハンドルを握る私にも想像以上に効果てきめん。
それどころか、ある一部のひとにも好評をもたらした。
カメラマンである。
例えば私たちが新型車の走行シーンを後ろから追走して撮る・・・俗にいう追っかけ撮影をするとき、この処理を施していると思っていなかったカメラマンは、私のクルマの助手席に乗り込んでたいそう喜んでいた。
映り込みを避けながらの撮影にはやはりいつも苦労しているらしい。
余計な反射はカメラマンの敵なのだ。

いま使用中の旧シエラの計器盤は黒内装(しかなかった)のせいか、安いカチカチプラスチックの割に、ティーダほど困ったことにはなっていないが、映り込みが皆無なわけでもない。
何か処理を施した方がいいかなと思っているところだ。
この時期、太陽の高さは他の季節に比べれば低い(その究極が冬至で、その逆が夏至)ので、反射による視界悪化が顕著だ。
だからタイヤやワイパーなど、冬対策にからめて反射対策の話をしたが、太陽高さは冬以外でも日の出、日の入りには低いわけで、映り込みは発生する。
結局はこの策は年間を通じて有効だ。
いまお乗りのクルマでガラスの映り込みに辟易している方、よかったら参考にしてみて。
ただし、何を置くにしても助手席エアバッグの展開に邪魔にならないことに念頭に置かれますよう。

