トライアルバイク「TY-E」で、史上初となる電動バイクによる全日本チャンピオンに輝いた黒山健一選手

2025全日本トライアル選手権で、ヤマハは電動トライアルバイク「TY-E」によってシリーズチャンピオンを獲得した。電動バイクが全日本トライアル最高峰クラスを制するのは、これが史上初となる。

このタイトルを手にしたのが黒山健一選手だ。今回の優勝で、全日本トライアル選手権12回目のタイトル獲得となった。ただし本人は、勝った瞬間に感情が爆発したわけではなかったと振り返っている。個人競技でありながら、団体競技を戦っているような感覚があり、チーム全員で目標を成し遂げた結果だと語った。

黒山選手が「TY-E」に初めて乗ったのは2017年のこと。当時は競技車として完成されているとは言えず、将来性を感じる段階だったという。電動バイクそのものに対する理解も、当時は充分ではなかったと話している。

そんな黒山選手が強く印象に残っているのが、開発スピードの速さだ。電動ならではの開発アプローチは、エンジン車とはまったく異なるものだったという。「TY-E」は短期間で戦闘力を高めていった。一方で、開発初期にはライダーとエンジニアの間で意思疎通に苦労する場面もあった。ライディングとプログラムという異なる領域の間に、共通言語がなかったためだ。それでも互いに歩み寄り、その壁を乗り越えていった。

プロジェクトは2023年からの3カ年計画として進められた。1年目はランキング6位以内、2年目は3位以内、そして3年目にチャンピオン。そのすべてを黒山選手とチームは実現してみせた。

チャンピオン獲得から2日後には、「ジャパンモビリティショー2025」でパフォーマンスを披露している。インドアでも成立する点は、電動トライアルバイクならではの魅力と言えるだろう。

黒山健一選手は、全日本通算100勝まで残り3勝としている。2026年シーズンの具体的な展開については、現時点では未定だ。ただし、電動トライアルバイク「TY-E」が全日本トライアルの歴史を塗り替えたことは、疑いのない事実である。

「ワクワク・ドキドキは、僕の人生のモットー。『TY-E』とのチャレンジは、
まさにワクワク・ドキドキの連続だった」と黒山選手。共に戦った佐藤監督と

エンジニアとの意思疎通の壁を越え頂点へ

黒山選手を驚かせたのは、まず、その驚異的な開発スピードだった。
「伸びしろしかない『TY-E』の戦闘力を、開発者たちがものすごいペースで上げていきました。それはエンジン車の開発とは、アプローチやスピード感がまったく異なるものでした」。その一方で、戸惑いや苛立ちを感じたこともあった。「ライダーはプログラムがわからない。エンジニアはライディングがわからない。共通の言語や感覚という架け橋がない中で、意思疎通には互いに苦労もあった」と振り返る。

2023年からの3カ年プロジェクトを共に歩んだ佐藤美之監督には、忘れられないシーンがある。3年前の体制発表会だ。
「彼は記者の皆さんを前に、『(電動バイクで全日本に出場する道を選んだことで)黒山健一は終わったと感じる人がいるかもしれない』と話しました。その言葉の裏に強烈な決意を感じましたし、私たちも彼を絶対に勝たせなければならないという強い責任を感じました」

電動でエンジン車を凌駕する――。黒山選手自身が立てた目標は、1年目にランキング6位以内、2年目に3位以内、そして3年目にチャンピオンというものだった。そして、そのすべてを実現してみせたのだ。
「エンジニアの皆さんは、“わかり合う”という架け橋を根性で渡ってきて、その上で、発想や提案で最後は僕を超えてきた。本当にすごい、と。個人競技の選手は孤独なものですが、僕は一人じゃなかった。そこに12回目のタイトル獲得の大きな喜びがありました」

チャンピオン獲得の2日後には、「ジャパンモビリティショー2025」で豪快なパフォーマンスを披露。
インドアでのアクションも、電動ならでの魅力の一つ
電動トライアルバイク ヤマハ・「TY-E」
電動トライアルバイク ヤマハ・「TY-E」

広報担当者より

技術広報の担当として、私自身も電動トライアルバイク「TY-E」の開発をそのスタートから見守ってきました。その中で、エンジニアたちの情熱をひしひしと感じてきただけに、一丸となって取り組んだ「電動車でチャンピオン獲得」というチャレンジの成功を心から嬉しく思っています。黒山選手の言葉から彼らに対するリスペクトを感じるたびに、満たされていくような気持にもなった。黒山選手は「全日本100勝」まであと3勝。2026年の活躍も期待しています!

参考映像

電動トライアルバイクの研究開発
【インタビュー】 ヤマハ発動機(株)執行役員 西田豊士×電動トライアルバイク TY-E2.1