視界を遮るものは徹底的に排除される保安基準の厳格なルール

あおり運転対策としてのドライブレコーダーや、スマートフォンを固定するホルダーなどは、今や必需品ともいえるカー用品だ。
そのほかに自分の好きなキャラクターのぬいぐるみだったり、モノをダッシュボード上やフロントガラス上部に置いているユーザーは一定数いるだろう。
しかし、これらのアイテムは、取り付け位置を誤れば道路運送車両法違反となることを認識しておく必要がある。
国土交通省が定める「道路運送車両の保安基準」の第29条では、窓ガラスに関する厳格な規定が設けられている。
この条文の大原則は、フロントガラスおよび運転席・助手席の側面ガラスに、運転者の視野を妨げるものを貼ってはならないという点だ。

厳密にはガラス面に無用なステッカーや装飾品を貼ることは、法律で禁止されている行為にあたる。ただし、車検の有効期間を示す「検査標章」や、故障時の整備命令ステッカーなど、法的・実用的に不可欠なものは例外的に認められている。
また、「ドライブレコーダー」や「ETCアンテナ」などの電子機器も、一定の条件を満たせば取り付けが許可される。
合否の分かれ目となるのが、独立行政法人自動車技術総合機構が定める「審査事務規程」による具体的な数値基準だ。

ドライブレコーダーなどをフロントガラスに装着する場合、その位置は「ガラス開口部の実長の20%以内の範囲」でなければならない。これは、ガラスの上縁から全体の2割までの高さに収める必要があるという意味である。
もしくは、「ガラスの下縁から150mm以内の範囲」であれば貼り付けが可能とされる場合もある。この「ガラス開口部の実長」とは、窓枠のゴムやモールなどで隠れていない、光が透過する部分の長さを指す。
規定の範囲を超えて機器を取り付けると、信号機や標識の視認を妨げる恐れがあるため車検には通らない。
吸盤式のスマートフォンホルダーやお守りをフロントガラスの中央付近に付けているケースは、明確な保安基準違反となる可能性が高い。
視界の確保という観点では、フロントガラスへの貼り付け物だけでなく、ダッシュボード上の設置物にも厳しい目が向けられる。
国土交通省の「直前側方運転視界基準」では、運転席から死角となりやすい範囲についてのルールが定められている。この基準は、発進時や低速走行時において、周囲の歩行者や障害物を確実に認識できることを目的としたものだ。
基準の対象となるのは、クルマの直前および左側方(左ハンドル車の場合は右側)にある障害物である。

ここでは具体的な測定対象として、「高さ1m、直径0.3mの円柱」が規定されている。円柱のサイズは、6歳児の平均的な体格を想定して設定されたものだ。
つまり、クルマのすぐ近くに小さな子供が立っていたとしても、運転席からその存在を確認できなければならない。
運転席に座った状態で、この円柱が直接、あるいは鏡やカメラなどの視界補助装置を通して確認できる必要がある。
もしダッシュボードの上に大きなぬいぐるみやティッシュボックス、大型モニターなどを置いていたらどうなるだろうか。それらが視線を遮り、6歳児相当の円柱が見えなくなってしまうと、保安基準不適合と判定される。
また、フロントガラスへの映り込みも視界不良の原因となるため、色の白いものや光を反射するものを置くことも避けるべきだ。
これらの基準は、単に車検の手続き上の問題だけではない。わずかな視界の遮りが、交差点や横断歩道の手前で、歩行者の発見を遅らせる原因となる。
特に背の低い子供や高齢者は、ダッシュボードの不用意な置物によって完全に死角に入ってしまう危険性が高い。自分好みのインテリアを楽しみたい気持ちは理解できるが、法令で定められた安全基準を満たすことが大前提となる。
たとえカー用品店で販売されている商品であっても、取り付け位置によっては違法となるケースがあることを忘れてはならない。
安全な視界を確保することは、運転者自身の身を守るだけでなく、交通社会全体の安全に寄与する重要な責任である。
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車検合格のためだけでなく、悲惨な事故を防ぐためにも、視界を遮るアイテムの配置には細心の注意を払わなければならない。
