Q:フロントフォークが柔らかくて底付きしやすいです。フォークオイルを少し多めに入れれば硬くなると聞いたのですが、本当ですか?
埼玉県/フロントふわふわさん
今回のお題は足周りに関する少し上級者向けの話題。興味のある人は読み進めてほしい。
投稿者さんは「フロントフォークを硬くしたい」ということだけど、結論から言うと、フォークオイルの油面を上げれば硬くなる。ただし、フォークが動き始めたところから全体的に硬くなるわけではない。
理解するポイントは、フロントフォークの中にある「空気」の量だ。
オイルを増やすと、なぜストローク後半が硬くなる?
フロントフォークの内部はオイルで満タンになっているわけではなく、上部には空気の入ったスペースが残されている。この空気室が、フォークが縮むにつれて圧縮され、反発することでスプリングのような働きをする。
オイル量を増やして油面を上げると、そのぶん空気室は小さくなる。すると同じだけフォークが縮んでも空気がより強く圧縮されるため、ストローク後半で踏ん張る力が強くなる。
つまり、油面を上げるとストローク前半への影響は小さく、後半になるほどエアスプリングの効果が強くなる。油面調整は主にストローク終盤の底付き抵抗を変えるものとして考えればOKだ。
「ブレーキングで最後までズボッと沈み込む」
「大きなギャップで底付きしやすい」
といった症状なら、このフォークオイルの油面調整がセッティングのひとつになる。増やすと言ってもミリ単位で動きの変化が出るので慎重に行ってほしい。
ただし、「動き始めからもっとカチッとさせたい」という話になると、油面だけでは狙った変化にならないこともある。

フォークの“硬い”には2種類ある
ライダーが「フォークを硬くしたい」と思っていても、実は意味がいくつかある。
ひとつは、沈み込みそのものを抑えたいという「バネ的な硬さ」。もうひとつは、フォークが伸びたり縮んだりするスピードをゆっくりさせたいという「減衰の強さ」だ。
油面を上げて変化するのは、主にストローク後半。空気室が小さくなり、奥で踏ん張る性格が強くなる。
いっぽう、フォークオイルの粘度を変えると、オイルが一般的なフォーク内部にあるオイルの通り道を移動するときの抵抗が変わるため、伸び縮みするスピードに影響する。硬いオイルほど縮んだり伸びたりするスピード(抵抗)が遅くなるのは想像できるだろう。
もう一歩だけ踏み込むなら、車重やライダーの荷重を支え、基本的な沈み込み量に大きく関係するのは、フォーク内部にあるスプリングの存在。つまり整理すると、
「底付きしにくくしたい」→油面を上げる
「動きをゆっくりさせたい」→オイル粘度や減衰設定を変える
「そもそもの沈み込み量を変えたい」→スプリングの交換やプリロード調整
と、狙う場所が違うというわけだ。
「オイルをたくさん入れれば最強!」ではない
しかし、やり過ぎは厳禁。油面を上げすぎると空気室が小さくなりすぎて、ストローク後半が急激に硬くなる。圧縮できる空気量が不足し、フォークが十分にストロークできなくなる可能性があるので注意が必要だ。油面調整は少量ずつ行うことが前提で、左右の油面を同じにすることも重要なんだ。
だから「柔らかいから、とりあえず30cc足しとけ!」なんてやり方はおすすめできない。フォークによって指定油量や油面の高さ、測定方法も違うので、まずはサービスデータに合わせるのが基本。そのうえでセッティングとして変更するなら、少しずつ変えて違いを見るのが正解だ。
「硬くしたい」ではなく、どこを変えたいのか考えてみよう
フロントフォークのセッティングが奥深いのは、「硬い・柔らかい」だけでは片づけられないところにある。
初期はスッと動いてほしい。でもブレーキングでは踏ん張ってほしい。大きなギャップでは底付きしたくない。でも路面の細かな凹凸は吸収してほしい。
そんなワガママを、スプリング、プリロード、オイル粘度、油面、そして内部の減衰機構を組み合わせて近づけていくのがサスペンションセッティングなのだ。
そして、リヤショックも大きく影響するのを忘れてはならない。「フォークが柔らかいから硬くしよう」の原因がリヤショックの場合もある。リヤショックは、フロントフォークが縮む際にリヤから沈まなないよう引っ張ってあげる役割も持っているんだ。具体的には、フロントブレーキを強くかけるとフォークが縮もうとすると同時に、リヤショックは伸びようとするよね。そこでリヤショックの減衰力が高いと、リヤショックがフォークが伸びる力を引っ張るような動きをするので、フォークの縮むスピードが抑えられる方向に。
・・・・・・と、難しくなってしまったが投稿者さんの「フォークオイルを足せば硬くなる?」への答えは、「YES。ただし、主にストローク後半が硬くなる」が正解。
底付きしやすいから油面を変えるのか、動きが速すぎるから粘度を変えるのか、それともスプリングそのものが合っていないのか。「硬くしたい!」のひと言をもう一歩掘り下げてみると、フロントフォークって意外とおもしろい存在なんです。
【モトチャンプ編集部】
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