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■新興国向けダットサンブランドの第3弾「redi-GO」を発表

2016(平成28)年4月14日、日産自動車は新興国向けブランドであるダットサンの第3弾として、インド向け「redi-GO」を公開した。redi-GOは、コンパクトクロスオーバーとアーバンハッチバックを融合させたアーバンクロスとしてインド市場に投入予定と発表された。

日産ダットサン「redi-GO」
2016年に発表されたインド向けダットサン「redi-GO」

2012年に新興国向けブランドとしてダットサンが復活

「脱兎(DAT)号」
1914年「脱兎(DAT)号」の第1号車のオフライン式(※画像は日産自動車前史より)

日産の歴史を辿ると、1911年に創立され、小型乗用車「DAT自動車(ダット<脱兎>号)」を生産した快進社まで遡る。DATは、資金支援者の田(D)と青山(A)、竹内(T)の3氏のイニシャルを取ったもの。

快進社に出資した田 健次郎、青山禄郎、竹内明太郎氏
快進社に出資した田 健次郎、青山禄郎、竹内明太郎氏(※画像は日産自動車前史より)

その後、ダット自動車商会と社名を変え、大阪の実用自動車製造と合併してダット自動車製造となり、「DATSON(後にDATSUN)」という車名の乗用車を開発。そして、このダット自動車製造を鮎川義介氏が設立した戸畑鋳物が1933年に吸収合併して自動車製造株式会社に、その翌1934年に社名を変更して日産自動車が誕生したのだ。

ダットサン12型フェートン
ダットサン12型フェートン/日産自動車が創業した1933年12 月当時に製造されていた日産最古のモデル。神奈川県座間にある「日産ヘリテージコレクション」の中でも最古のクルマ。“フェートン”とは折りたたみ式の幌を持つ4 人乗りのオープンカーの呼び名。また、バスタブのような形状のボディも特徴

日産自動車ができる前に、すでにDATSUNというクルマが存在し、ダットサンはブランドと同時にトレードマーク(商標)でもあり、車名の冠としても長く使われた。初期の日産のクルマには、「ダットサン・サニー」や「ダットサン・ブルーバード」のように、車名の前にダットサンというブランド名が付いていたのはこのためである。

ダットサン14型 トラック
ダットサン14型 トラック/ダットサントラックは、ダットサンシリーズ最初期の10型(1932年)から、1935年に大量生産が始まった14型を経て、戦前最終型となる1938年の17T型まで存在し、日本の商店・百貨店・配送業者などに幅広く使用された。 戦前の設計ながら、ピストンはアルミ製、コンロッドはジュラルミン製、クランクシャフトにはボールベアリングを使用するなど、14型の乗用車と同様、先進的なエンジン設計が特長のひとつ。この車体は横浜工場での大量生産が始まった年、1935年式のクルマで、日産ヘリテージコレクションで最古の商用車

その後も日本国内外で日産のブランド名として使用していたが、1986年にダットサンブランドはいったん廃止。しかし、日産は2012年にダットサンを新興国向けブランドして復活させた。ダットサンブランドを充実させて、インドやインドネシア、ロシア、南アフリカなどの新興国成長市場に展開することを狙ったのだ。

新興国市場の拡大を狙った新型車「GO」&「GO+」

ダットサンブランド第1弾は、2014年からインドを中心にインドネシア、ロシア、南アフリカで発売が始まった「GO」である。そのデザインは、日本の日産のグローバルデザインセンターが担当し、開発は現地の市場要件を熟知しているインドが実施。生産は、ルノー・日産アライアンスの新しい工場のひとつであるチェンナイ近郊のオラガダムにある工場で行なった。

ダットサン「GO」
2014年にインドを明メインに発売されたダットサン「GO」

「GO」は、4代目「マーチ」よりもひと回り小さく、エッジを効かせたヘッドライトなどで全体的にシャープなスタイリングの5ドアハッチバックで、コンパクトでありながら乗員5人が快適に過ごせる車内空間を実現。パワートレインは1.2L直3 DOHCエンジンと5速MTの組み合わせで、駆動方式はFFである。車両価格は、40万ルピー(約66.8万円、1ルピー=1.67円で換算)以下という低価格だった。

ダットサン「GO+」
2016年にインドネシアで発表されたダットサン「GO+」

そして第2弾は、同じく2014年からインドネシアで「GO」とともに発売が始まった「GO+」だ。「GO+」は、コンパクトながら多用途で実用的な5ドアの3列MPVで、ダイナミックで流れるようなシルエットと力強いショルダーラインが特徴の個性的なクルマである。

「GO+」は、ジャカルタの東80kmに位置するプルワカルタにある日産の工場で生産された。

斬新なアーバンクロスをアピールした「redi-GO」

日産ダットサン「redi-GO」
日産ダットサン「redi-GO」

2016年4月のこの日に発表された「redi-GO」は、クロスオーバーの特長を取り入れたインド初のアーバンクロスである。「redi-GO」は、その名にふさわしく、行きたい場所にどこにでも行く準備ができている(ready to go)、俊敏で扱いやすいのが特長だ。

ダットサン「redi-GO」
インド向けダットサン「redi-GO」のリアビュー

広々とした室内空間、クラス最高の最低地上高、コンパクトハッチバックのキビキビとした走り、手頃な価格、高い燃費性能を実現。スタイリングは、車体に沿った魅力的なキャラクターラインを持ち、D-カットグリル、ヘッドランプ、テールランプが融合し、斬新かつ力強さを強調している。

「redi-GO」のコクピット
「redi-GO」のコクピット

「redi-GO」は、ルノー・日産アライアンスのコモン・モジュール・ファミリー(CMF-A)プラットフォームをベースに、パワートレインは800cc直3エンジンと5速MTの組み合わせ、駆動方式はFF。力強い走りと優れた燃費を両立するとともに、新型サスペンションの採用により、軽快なハンドリングと快適な乗り心地も実現している。

「redi-GO」の車室内スペース
「redi-GO」の車室内スペース

しかし、インドはスズキが、インドネシアはトヨタが強く、ダットサンブランドはその牙城を崩すことができず、販売は期待したほど伸びずにダットサンブランドを育てることはできなかった。結局、2023年6月にダットサンブランドは終焉を迎え、100年以上にわたった歴史に幕を下ろしたのだ。

日産ダットサン「redi-GO」
日産ダットサン「redi-GO」

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新興国も徐々にモータリーゼーションの成熟期を迎えており、新興国向けに作ったクルマより、先進国で販売されている先進的なクルマを好むユーザーが増えている。が、一方で低所得者層では徹底した低価格のクルマが好まれる傾向にある。そういった意味でも、ダットサンの新興国向けブランドはやや中途半端だったのかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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