連載
今日は何の日?■超コンパクトミニバン、ドミンゴの実用性を高めた2代目
1994(平成6)年6月6日、スバルは超小型ミニバン「ドミンゴ」の2代目を発表(発売は6月18日)した。1983年に登場した初代ドミンゴは、軽商用車「サンバー」をベースに1.0Lエンジンを搭載したユニークな3列シートミニバンだったが、2代目はパワーアップするなどして実用性を高めた。

ユニークな超コンパクトミニバンのドミンゴ誕生
1983年、スバルは全長わずか3.5m弱で3列シート/7人乗りの超コンパクトなワンボックス型のミニバン「ドミンゴ」を発売した。

当時スバルが販売していた軽商用車、4代目サンバー「サンバートライ」をベースに、軽自動車(軽規格:3400mm×1480mm×2000mm以下)よりもわずかに大きい全長3425mm×全幅1430mm×全高1900mmのボディに、巧みなパッケージングによって3列シートを配置し、7人乗車を実現。ちなみに、コンパクトミニバンのトヨタ「シエンタ」のボディサイズは、4260mm×1695mm×1695mmである。

パワートレインは、最高出力56ps/最大トルク8.5kgmを発揮する1.0L直3 SOHCエンジンと5速MTの組み合わせ。駆動方式は、サンバーと同じくエンジンをリアに搭載したRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトで2WDと4WDが用意された。
2+3+2の最大7名乗車が可能で、トップグレードには1列目の回転シートが組み込まれていた。さらにフラットシート機構など、現在のミニバンが採用している数々のシートアレンジが楽しめた。

パワー不足の軽ワンボックスとやや大き目の小型ワンボックスの中間のちょうど良い、手頃なリッターカーのワンボックス型ミニバンとして人気を獲得した。
パワーアップと装備を充実させた2代目
1994年6月のこの日、ドミンゴはベース車を5代目サンバー「サンバー・ディアス」に変更してモデルチェンジした。ボディサイズは、全長3525mm×全幅1415mm×全高1925mmと初代より全長が100mm拡大、全幅は15mm縮小された。

初代同様、2+3+2の3列シートの7人乗車で、初代で好評だったフロントシートの回転対座機構やフルフラット機構に加えて、2列と3列目を折りたたむビッグラゲージモードや2列目テーブルモードなど、さらに多彩なシートアレンジが楽しめた。
パワートレインは、61ps/9.8kgmの1.2L直3 SOHCエンジンと5速MTおよびECVTの組み合わせ。駆動方式は、RRレイアウトの2WDとビスカスカップリング式のフルタイム4WDが用意された。さらに、上級グレードには電動パワステ、ツインエアコン、後席ヒーター、電子チューナーオーディオなどが標準装備されるなど、このクラスとしては贅沢なアイテムが備えられた。

車両価格は、107万~222万円に設定。当時の大卒初任給は19万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約130万~269万円に相当する。
2代目最大の注目は、4人が車中泊できるアラジン
2代目ドミンゴで注目を集めたのは、ポップアップルーフを備え、そこを就寝スペースとして利用すれば最大4人が車中泊できるキャンパー仕様「アラジン」であり、メーカー純正のカタログモデルとして追加設定された。

天井部分には、グラスファイバー製の軽量ルーフを設置。停車時にはこれをリフトアップして、大人と子ども、それぞれ1人ずつが寝転ぶことを想定して設計された。
標準仕様の「アラジンリフトアップ」の他、本格的なキャンプ仕様「アランジンキャンパー」も設定され、これにはシンクや水道タンク、コンセント電源、カーテンなどが装備された。
今や多くのメーカーが設定しているキャンピングカー仕様だが、当時は車中泊やキャンピングカーそのものがまだ一般的でなかったこともあり、アラジンの斬新なコンセプトは市場で受け入れられず、わずか2年で生産を終了。アラジンの販売台数は282台だったが、昨今のアウトドアや車中泊ブームを考えると、スバルに先見の明があったと思えるが、登場が早すぎたとも言える。
また2代目ドミンゴ全体でも初代ほどの人気が得られず、結局1998年末に生産を終えた。
・・・・・・・・・・
2代目ドミンゴが登場した頃には、室内スペースに余裕のある乗用車ライクな新世代ミニバンが流行し始め、ドミンゴの存在感は薄れてしまった。現在、実用性の高いファミリー志向のコンパクトミニバンが人気だが、ドミンゴのようなさらにコンパクトなミニバンも市場で一定の支持は得られるだろうが、その市場ボリュームは大きくないだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
