連載

チューナー列伝

レーシング20B解体新書

資金力に限りのある完全なプライベートチームながら、16年に渡って国内最高峰のJGTC〜スーパーGTでメーカーワークス勢と真っ向勝負を繰り広げ、見事シリーズチャンピオン(2006年)にまで登り詰めた“RE雨宮レーシング”。そんな偉業を達成したRE雨宮GT300マシン(2007スペック)のメカニズムを改めて振り返っていきたいと思う。(RE雨宮レーシングより抜粋)

RE雨宮がレース用のRX-7を製作し、スーパーGTの前身であるJGTCに初めて参戦したのが1995年。その当時、搭載していたのは2ローターNAで、3ローターNAとなったのは2年後の1997年のことだ。

どちらのエンジンにも共通するのが、NA(自然吸気)で、ペリフェラルポートと呼ばれる吸気ポート形状を採用している点。

このレース用3ローターエンジンは、RX-7(FD3S)の13B-REWとユーノスコスモの20B-REWのパーツを合体させた、言うなれば純正パーツ流用ハイブリッド構造。年式や片式を超えて、部品間の相互組み合わせが効く、ロータリーならではのメリットを存分に活かしたカタチだ。

当然、市販状態そのままで組み上げるわけはなく、しかるべき加工&チューニングが随所に施されている。その代表的なポイントがポート形状の変更である。

ローターハウジングに直接吸気ポートを設けるペリフェラルポート仕様は、ノーマルエンジンが採用するサイドポート仕様に比べ圧倒的に吸気効率面で優位となる。レシプロエンジンで言うハイカム+ヘッドフルチューンに匹敵する効能が得られ、NAのままパワーを最大限引き出すにはベストの手法だ。

じつはこの「NAのまま」と言うのも重要で、レースの航続距離が500kmにもなるスーパーGTでは発熱量や重量、燃費などの問題から安易に過給機に頼って出力増を狙うのはナンセンス。シンプルな構造でいかに効率良くパワーを稼ぎ出すかが重要になってくるわけだ。

絶対的な出力面では有利でもリッター1kmしか走らないターボ仕様と、レスポンスに優れリッター2km走るNAペリ仕様、どちらが有利にレースを戦えるか、結果は明白だろう。

数字的には350psながら、コンパクトかつ定重心で自社で製作&メンテナンス&オーバーホールを全て完結できる取り組みやすさを持つ。シンプリー・ザ・ベスト。良い意味での原始的単純さが最大の武器となって、パワー&トルクに勝るV6大排気量軍団に後塵を浴びせ、勝利を呼び込んできたのである。

SPECIFICATIONS
エンジン型式:20B
総排気量:654cc×3
ポート形状:ペリフェラルポート
最高出力:350ps(420ps ※1)/8000rpm
最大トルク:38.0kgm(40.0kgm ※2)/6800rpm
エンジンオイル:アドバンテージNEO(0W-30)
リストリクター径:44.8φ
全装備重量:約120kg
全長×全高×全幅:620mm×520mm×700mm
※1.2:リストリクター非装着時

「そのRX-7は伝説と呼ばれた」RE雨宮GT300マシン完全解剖【Vol.01】ボディ編

「そのRX-7は伝説と呼ばれた」RE雨宮GT300マシン完全解剖【Vol.02】エクステリア編

「そのRX-7は伝説と呼ばれた」RE雨宮GT300マシン完全解剖【Vol.03】ドライブトレイン編

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