
レーシングドライバーの塚本ナナミです。
5月末から6月にかけて、世界各地で24時間レースが開催されました。
ル・マン24時間レース、ニュルブルクリンク24時間レース、スパ・フランコルシャン24時間レースそして富士スピードウェイで富士24時間レース。
私は5月30日~6月1日に富士スピードウェイで「ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 富士24時間レース」(以後富士24時間レース)に5年ぶりに参戦しました。
2018年に復活した富士スピードウェイでの24時間レースは今年で8回目の開催となります。レースだけではなく、サーキット全体でお祭りムードが高まり、イベント広場での催しや気球でのレース観戦、夜間の花火大会、そしてサーキット内各所でキャンプしながらレース観戦をするお客様の様子は、もはや富士スピードウェイの風物詩となりました。
タイヤも参加クラスも変わり気持ちを新たに挑んだので、ワタシも初心者の気持ちをもって、わかりやすくレースやサーキットの様子をご紹介したいと思います。
ST5RクラスにPROGRESSレーシングから参戦しました。

スーパー耐久シリーズはバラエティあふれるマシンが参戦できるよう、排気量は駆動方式などによって10クラスに分かれてレースが行なわれます。私は1500cc未満の後輪駆動車両を対象としたST5Rクラスでの参戦となりました。マシンはマツダ・ロードスター、チームはPROGRESSレーシングです。チームはスーパー耐久シリーズにレギュラー参戦していますが、今回は24時間レースということで助っ人としてチーム入りしました。
ちなみにST5Fクラスもあるのですが、こちらは1500cc未満の前輪駆動車両を対象としたクラスで、主にホンダFITが多く集まるクラスとなっています。
他のドライバーが走っているときは何をやっているの?

チームの戦略や体制によりますが、レースは登録している4名〜6名のドライバーで順番に交代をしながら24時間戦います。走っていない間は、ドライバーは仮眠します。各チーム工夫を凝らし体力を回復させます。今回はオリンピックアスリートも愛用する「DENBA Health」に協力いただき、ピット内に仮眠スペースを作っていただきました。
私は夜間担当のドライバーとして、夜中の12時から2時すぎまで走りました。DENBAで筋肉疲労を緩和し、深い睡眠を取ることができたことは本当に助かりました。
夜間は誰でも走れるわけではありません。走行できるドライバーは規定で決まっています

24時間レースといえば夜間の走行。とはいえ誰でも走れるわけではありません。事前に夜間走行テストや夜間ドライバーズミーティングに参加してないと乗ることができません。 夜間走行テストはS耐主催者が定めた公式の夜間走行枠を走ったドライバーか、過去3年間に24時レースで夜間を走ったドライバーのみと定められています。当然国際Cライセンス以上を所持している必要があります。
メカニックは寝ているの?

ドライバーは走っていない間は休むことができる一方で、メカニックやチーム監督は24時間休むことはありません。常にレースの様子を見守りながら、タイヤ交換などのピット作業やマシントラブルに対応します。
さらに、レースが終わったあともピットを綺麗に片付け、マシンや工具などのトラックへの積み込みなどと、40時間以上がんばってくれています。メカニックがいなければ私たちドライバーはマシンを動かすこともできないのです。
FCYとSCの違いは?

レース中にクラッシュなどのアクシデントが発生し、コース上にマシンが止まってしまったり、コース外であっても二次的なアクシデントに巻き込まれそうな車両の処理などを行なうような場合、ひと昔前までは赤旗でレースをストップするか、セーフティカー(SC)を導入し、全車追い越し禁止の状態でレースを継続するかのどちらかの方法がとられてきました。
SCが導入された場合、レースの先頭を走るレースカーの前にはオフィシャル車両が導入され、全体の走行をストップせずに隊列を作り、コースの安全が確保するまでその状態をキープします。赤旗を提示してレースを一旦ストップしてしまうと、再スタートの手順に時間がかかったり、レース車両に負担がかかるので、赤旗を出すのかSCを入れるのかはアクシデントの状況を見ながら判断されます。
いっぽう、SCを導入するとSCを先頭にすべての走行車両が間隔を詰めて隊列を作るため、せっかく作ったリードが一気になくなってしまうことになります。また、周回遅れのマシンにとっては先頭争いの邪魔になるばかりでなく、場合によってはレースを挽回するチャンスが奪われてしまいます。
そこで、世界耐久選手権で発明されたのがフルコースイエロー(FCY)です。このFCY状態になると、全コースにわたって走行するスピードが一斉に一定速度に制限されます。つまり、前を走るマシンとも後ろを走るマシンとも速度が同じになるので、マシンの間隔を保ったままレースは継続され、アクシデントの処理が安全に実施することが可能となります。スーパー耐久ではFCYではスピードが50km/hに規定されています。
ちなみに今回の富士24時間レースでは、SCが8回、FCYが12回、赤旗が1回提示されました!
24時間レースならではのゼッケン

車両の番号を表示するゼッケンは、有機LEDを使用し、観客・チーム・オフィシャルに番号が夜間でもはっきりと見えるようになっています。
また、夜間走行をより安全にするために、車体の前後に反射テープの取り付け義務や、上位クラスとの速度差があるST-5RクラスにはグリーンのLEDを取り付けることも決まっています。
トラブルありながらクラス・ファステストラップを記録!
見どころ盛りだくさんの富士24時間レースでしたが、今回はST-5Rクラス4位という結果でした。
レース前半でエンジンベルトが飛んでエンジンブロー寸前というトラブルに見舞われましたが、メカニックの懸命な対応のおかげでコース復帰ができました。そして、ドライバー一人ひとりがバトンを繋ぎ、無事完走することができました。
71周目には2分05秒104というST-5Rクラスでのファステストラップも記録しました!

安全に楽しめるサーキットでお待ちしています!

5年ぶりの24時間耐久は主催者の安全面への配慮、そして観にくる皆様に楽しんでもらいたいという気持ちがとても伝わりました。 ST-5クラスは上位クラスのバトルに気を配りながら、同クラスでの順位争いを繰り広げます。 ドライバーの全能力を注ぎ込んで走ることに、ドライビングテクニックを磨く要素がたくさん感じられました。
来年もここで頑張って戦いたいと思います。
そして、モータースポーツは決して遠い世界ではありません。
年齢性別関係なくチャレンジできるので、少しでもワクワクするというあなた! まずは気軽にサーキットでの体験走行に参加してみては、いかがでしょう?
クルマ好き、レース好きのみなさんをサーキットでお待ちしています!