ボディが大きいのはステップワゴン、5ナンバーサイズでも広く機能的なセレナ

ステップワゴンは3ナンバーサイズ、セレナは5ナンバーサイズとなるが、室内寸法に大きな差はない。両車の大きな違いは乗車定員とシートアレンジと言えるだろう。

両車のハイブリッドFFモデルはステップワゴンが7人乗り、セレナは8人乗りが標準となる。どちらも2列目シートは左右方向にもスライドできるようになっており、ベンチシートとしてもキャプテンシートとしても使用可能だ。

ただし、セレナには前後席間を移動可能な「スマートマルチセンターシート」が備わる。これは、前へ移動させれば前席のアームレストとして使え、後ろに移動させれば後席に3座可能となる独自のシートギミックだ。

違いは3列目シートにも見られる。ステップワゴンの3列目シートは床下にスッキリと収納できるのに対し、セレナは左右跳ね上げ式となっておりどうしても荷室の左右空間を圧迫する。その代わりセレナの3列目シートは、ステップワゴンよりもしっかりとした作りになっている。

7人乗りと8人乗りをフレキシブルに使い分けられるセレナのシートアレンジは非常に機能的だ。ステップワゴンの方は、充実した装備が特徴と言えるだろう。

ステップワゴンの新グレード「AIR EX」は、これまで上級グレード「スパーダ」のみの装備だった「後席オットマン」「メモリー機能付きテールゲート」「トリプルゾーンエアコン」などが標準装備となったグレードだ。

オットマンを除く装備は、セレナは望んでも装着できない。電動テールゲートが備わらないセレナだが、ガラス部分のみを開閉できる構造になっているため、小さめの荷物なら素早く出し入れ可能だ。

ホンダ ステップワゴン e:HEV AIR EX
ボディサイズ=全長4800mm×全幅1750mm×全高1840mm
ホイールベース=2890mm
車両重量=1830kg
タイヤサイズ=205/60R16(前後)

日産 セレナ  e-POWER ハイウェイスターV
ボディサイズ=全長4765mm×全幅1715mm×全高1870mm
ホイールベース=2870mm
車両重量=1810kg
タイヤサイズ=205/65R16(前後)

動力性能は互角だが、高速道路の燃費性能はステップワゴンに軍配

今回の改良でステップワゴンのパワートレインに変更はない。ただし、ハイブリッドモデルから安価な「AIR」グレードがなくなったため、「AIR EX」がハイブリッドモデルの最廉価グレードとなる。

ハイブリッドモデルは、どちらもエンジンで発電した電力でモーターで駆動する仕組みであり、そのため両車の動力性能はエンジンスペックよりもモータースペックに大きく依存する。

両車のモータースペックはステップワゴンが最高出力184ps/最大トルク315Nm、セレナが163ps/315Nmと大きな差はない。WLTCモード平均燃費を比べても、ステップワゴンが19.8km/L(e:HEV AIR EX)、セレナは19.3km/L(e-POWER ハイウェイスターV)と同じくらいだ。

ただし、ステップワゴンのe:HEVは一定速度以上でエンジンの動力を直接使って駆動できる特徴を持つ。ガソリンエンジンが得意とする中回転域の動力を効率的に使えるため、ステップワゴンの高速モード燃費は19.5km/Lとセレナに対して1.2km/Lほど優れており、高速道路の勾配を走行する機会が多い場合はさらに大きな燃費差が生じるはずだ。

ただし、ステップワゴンのハイブリッドモデルに4WDの設定がない点だけは留意しておきたい。

ホンダ ステップワゴン e:HEV AIR EX
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1993cc
最高出力=145ps/6200rpm
最大トルク=175Nm/3500rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

日産 セレナ  e-POWER ハイウェイスターV
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1433cc
最高出力=98ps/5600rpm
最大トルク=123Nm/5600rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

用途が購入の決め手!高速道路ならステップワゴン、街乗り主体ならセレナがコスパ高

「ステップワゴン e:HEV AIR EX(7人乗り)」の価格は393万8000円、「セレナ e-POWER ハイウェイスターV(8人乗り)」は373万5600円だ。装備を拡充させたステップワゴン「e:HEV AIR EX」の価格は、旧来の「e:HEV AIR」よりも大幅に引き上がり「スパーダ」に近い価格となっている。

これまで標準スタイルのステップワゴンには「AIR」しか選べず、装備を充実させるにはスポーティな外観となる「スパーダ」を選ぶしかなかった。新グレード「e:HEV AIR EX」は、装備を充実させたお買い得グレードではなく、標準ステップワゴンのプレーンな見た目のまま快適装備や安全装備、内装装飾を「スパーダ」並に引き上げたグレードとなる。

同時に「e:HEV AIR」は消滅したため、ステップワゴンのハイブリッドモデルは実質的な値上げとなった。対するセレナのe-POWERモデルの最廉価グレード「X」なら324万8300円から販売されている。

価格は安くとも明確に劣る部分はなく、日常的な用途ならセレナで十二分に事足りる。ステップワゴンはボディサイズを含めたシャシーやパワートレインの性能、各種装備などの諸々を含め、セレナより幅広いシーンに難なく対応できる懐の深さを備えたミニバンと言えるだろう。

街乗りを主体とする用途なら、セレナの方が圧倒的にコストパフォーマンスが高い。高速道路を利用して頻繁に長距離移動をする用途にはステップワゴンがおすすめだ。

車両本体価格