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今日は何の日?■イプサムの室内空間をさらに拡大したガイア
1998(平成10)年6月29日、トヨタは初代「イプサム」をベースにした5ナンバーサイズの上級ミニバン「ガイア」を発売した。イプサムに対して、全長を90mm、全高を55mm拡大して室内スペースを拡大した上で、ボディ外観にメッキパーツを多用し、内装には高級な素材を用いることで高級感を演出した。

5ナンバーサイズに効率よくまとめたミニバン、イプサム
1996年6月にデビューしたイプサムは、1994年に登場して大ヒットしたホンダ「オデッセイ」を意識して、トヨタが初めてミニバン市場に投入した乗用車ベースのミニバンである。

特徴は、ターゲットをヤングファミリーに設定し、女性ドライバーも多いという状況から、オデッセイの3ナンバーに対して取り回しのよい5ナンバーサイズにしたこと。プラットフォームは「コロナプレミオ」をベースに、シートは5ナンバーながら2/3/2の3列で7名が乗車できることに加え、様々なアレンジ可能なシートにより多様な用途に対応できた。

イプサムは丸型4灯異形ヘッドランプ、後傾したリヤピラーとリヤウインドウがサイドまで回り込んだように見える独特のスタイリングを採用。パワートレインは、最高出力135ps/最大トルク18.5kgmを発揮する2.0L直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFとフルタイム4WDが用意された。1997年には、最高出力94psの2.2L直4 SOHCディーゼルターボが追加された。

乗用車ベースのミニバンとしてはオデッセイが先だが、イプサムはオデッセイの対抗モデルとして5ナンバーボディにこだわり、取り回しの良さをアピール。ジャストサイズのミニバンとして大ヒットした。
イプサムの上級モデルとして登場したガイア

ガイアは、初代「イプサム」をベースにした5ナンバーサイズの上級ミニバンで、1998年6月のこの日に発売。全幅、ホイールベース、トレッドはイプサムと共通だが、全長を90mm、全高を55mm増大して、イプサムの弱みでもあった室内スペースを拡大。そのほか、ボディ外観にメッキパーツを多用するとともに、内装に高級な素材を用いることで高級感を演出した。
パワートレインは、イプサムと共通の2.0L直4 DOHCと2.2L直4 SOHCディーゼルターボの2種エンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFと新開発のアクティブトルクコントロール4WDが用意された。

また、ガイアは上級ミニバンを目指しただけあり装備が充実していた。運転席シートアジャスターや木目調パネル、デュアルエアバッグ、デュアルエアコン、ABSなどを標準装備し、2/2/2名の6名モデルと2/3/2名の7名モデルの2タイプが設定された。

また2001年4月のマイナーチェンジで内外装を小変更し、FFモデルのガソリンエンジンを152psの直噴エンジンに変更した。
車両価格は、205万円(ガソリン)/223万円(ディーゼル)に設定。当時の大卒初任給は19.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約241万円/262万円に相当する。
ガイアはその後2004年まで販売されて1代で生産を終えた。イプサムに較べると地味な存在ではあったが、堅調な販売を続けた。
イプサムのもう一つの派生車ナディア
イプサムの派生車には、上級車ガイアのほか、もうひとつ2列シートの「ナディア」があった。ナディアは、初代イプサムをベースに、ミニバンとセダンの中間的性格を持たせたハイトワゴン。ミニバンとの違いは、リヤウインドウを傾斜させて3列シートをなくした2列シートの5名乗りとしたこと。ミニバンベースのため余裕のある室内の高さや幅を生かしながら、多彩なシートアレンジが可能だった。

パワートレインは、イプサムと共通の2.0L直4 DOHCに加え、最高出力が145psに向上した直噴エンジンの2種と4速ATの組み合わせ。駆動方式は、ガイアと同じくFFとアクティブトルクコントロール4WSが用意された。


ナディアは取り回しに優れたワゴンだったが、ミニバンブームとイプサムの陰に埋もれて2003年に1代限りで生産を終了した。ナディアの基本コンセプトやスタイルは、現在普及しているJPNタクシーに通じるものがある。
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大ヒットモデルの派生車は、同じくヒットを狙うというよりは、ベース車からこぼれたユーザーを拾い上げるという狙いがあるようだ。ガイアもナディアもそのような役割を十分果たしと思われる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
