可変圧縮比ターボ+e-4ORCEがいい

日産エクストレイル X e-4ORCE エクストリーマー(3列)車両本体価格:462万3300円

日産が誇るハイブリッド技術、e-POWERの凄味を一番感じられるのは、4WDモデルである。とくに「e-4ORCE(イーフォース)」と呼ぶ、前後モーターを高度に制御する4WDモデルは、素晴らしい。

と書き始めた理由は、数日間試乗させていただいたノートオーラNISMO tuned e-POWER 4WDを横浜の日産グローバル本社へ返却して入れ替わりにエクストレイル X e-4ORCEを走り始めた瞬間に、「これはいい!」と感じだからだ。

e-POWERも4WDも一世代違う、とすぐに感じ取れる。4WDは通常のモーター4WDとe-4ORCEの違いだ。e-POWERはノートオーラ4WDもエクストレイルe-4ORCEも「第二世代e-POWER」を搭載しているから世代は同じ。でも、明らかにエクストレイルの方が上質だと感じさせるのは、車格の違いとやはりエンジンだ。

なにせ、エクストレイルe-POWERは、可変圧縮比+ターボというエンジンエンジニアの夢を実現した1.5L直3ターボ(KR15DDT)を搭載している。e-POWERの発電用に専用開発されたいわば”特別誂え”のエンジンだ。

全長×全幅×全高:4665mm×1840mm×1720mm ホイールベース:2705mm
トレッド:F1585mm/R1590mm 最小回転半径:5.4m 最低地上高:185mm
車両重量:1900kg 前軸軸重1050kg 後軸軸重850kg

まず、横浜から新宿まで一部渋滞のある首都高速をさらっと走って20.8km/Lの好燃費をマークした(平均速度52km/h)(ちなみに同じルートをノートオーラNISMO 4WDで走ったときは、18.5km/Lだった)。

俊足の電動シティレーサー、日産ノート オーラNISMO 4WDの実力を900km走ってチェック

日産が誇るNISMOモデルのエントリーモデルとなるのが、ノート オーラNISMOだ。そこに2024年7月に加わったのが、ノート オーラNISMO tuned e-POWER 4WDだ。NISMOがチューンしたe-POWER、しかも4WDというのが最大の売り。さて、その実力を約900km走って確かめてみた。

https://motor-fan.jp/mf/article/339299
ボディ色はブリリアントホワイトパール3P/スーパーブラック2トーン特別塗装色9万3500円
ちなみに、7色あるボディ色で特別塗装色でない(追加料金のない)のは、ダークメタルグレー(M)のみ。

第一世代e-POWERで感じられた「エンジンが始動したときのがっかり感」は、エクストレイルではほぼ解消しているし、高速道路での燃費だった悪くない。散々「e-POWERは高速燃費が悪い」と報道されてしまったが、常識的な速度で走っていれば、まったく問題ない。正直言って、世界最高峰の燃費性能を誇るトヨタのハイブリッドと比較すれば、多少物足りないのは事実だけれど。

モード燃費を比べてみると
エクストレイルX e-4ORCE
WLTCモード 18.3km/L
 市街地モード16.1km/L
 郊外モード:19.9km/L
 高速道路:18.3km/L

RAV4 E-Four(Adventure)
WLTCモード燃費:20.3km/L
市街地モード17.9km/L
 郊外モード22.4km/L
高速道路20.1km/Lとなる。

エクストレイルがRAV4に対してアドバンテージがあるのは、リヤモーターだ。
エクストレイル:136ps/195Nm
RAV4:54ps/121Nm

日産が世界に誇る可変圧縮比ターボ、KR15DDT型エンジン
エンジン
形式:直列3気筒DOHCターボ
型式:KR15DDT
排気量:1497cc
ボア×ストローク:84.0mm×90.1 mm
圧縮比:8.0-14.0
最高出力:144ps(106kW)/4400-5000pm
最大トルク:250Nm/2400-4000rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:55L
後輪もモーター駆動だ。
フロントモーター
BM46型交流同期モーター
最高出力:150kW(204ps)
最大トルク:330Nm
リヤモーター
MM48型交流同期モーター
最高出力:100kW(136ps)
最大トルク:195Nm
タイヤサイズ:235/60R18サイズ
FALKEN ZIEX ZE301A ECORUN
指定空気圧はF250kPa/R230kPa
リヤサスペンションはマルチリンク式 
フロントサスペンションはストラット式

高度な制御の前に、リヤモーターが後ろからグッと押してくれる感覚がエクストレイルe-4ORCEの大きな長所だ。悪天候のときだけでなく、ワインディングロードや高速道路の乗り降りのループでもリヤモーターの効力は感じられる。2基のモーターが前後の駆動力と回生ブレーキを絶妙に制御し、前のめりになる不快な揺れを抑制してくれるから、ドライブの疲労も少ないし、同乗者も酔いにくいと思う。エクストレイルのe-4ORCE代は、約30万円(Xは384万0100円/X e-4ORCEは414万0400円)。いつもは2WDで充分だと考える筆者だが、エクストレイルならe-4ORCEを選ぶ。

ライバルに負けない実力の持ち主だ

いまさら、復習をしておくと現行エクストレイルは2022年7月デビュー。2023年4月に値上げ(エントリーモデルのSが319万8800円→350万0100円へ)したこと、デビュー直後に半導体不足による供給不足もあって、実力にともなった大ヒットになっていないのが惜しい。

3列目シートを畳んだときのラゲッジスペース。充分な容量だ。

販売台数を調べてみた。2024年4月から25年3月(2024年度)の国内SUV販売台数は以下の通りだ。

ホンダ・ヴェゼル:71,120台
トヨタ・ハリアー:63684台
トヨタ・ランドクルーザー:57,093台
ホンダWR-V:39,069台
ホンダZR-V:35,368台
トヨタRAV4:29,848台
日産エクストレイル:26,293台
スバル・フォレスター:26,192台
マツダCX-5:23,038台
レクサスLBX:21,843台
レクサスNX:20,465台
マツダCX-30:14,360台
三菱アウトランダー:8,885台
マツダCX-60:8,394台
三菱エクリプスクロス:7,633台

記事タイトルに「e-4ORCEもe-POWERも実力充分」と書いたが、e-POWERはともかく、「e-4ORCE」って何回書いても、書きづらいなぁ。

日産のSUVラインアップはアリア、エクストレイル、キックスの3モデルしかない。これに対してトヨタ(レクサス含めず)はランドクルーザー70、ランドクルーザー300、ランドクルーザー250、RAV4、ハリアー、bZ4X、カローラクロス、ライズという布陣。トヨタのHPでみると、SUVラインアップにはこれにクラウンエステート、クラウンクロスオーバー、クラウンスポーツ、ハイラックスも含まれている。

つまり、エクストレイルはハリアー、RAV4、カローラクロス、bZ4X連合軍と戦わなければならないわけだ。

今度は、同じカテゴリーのライバル、エクストレイル、ハリアー、RAV4、フォレスターの販売台数も見てみよう。

2024年1-12月
ハリアー:64,181台(13位)
エクストレイル:31,776台(24位)
RAV4:30,599台(26位)
フォレスター:22,977台(29位)

2023年1-12月
ハリアー:75,211台(12位)
RAV4:41,018台(21位)
エクストレイル:27,129台(24位)
フォレスター:22,141台(30位)

2022年1-12月
ハリアー:34,182台(18位)
RAV4:31,118台(22位)
フォレスター:25,096台(24位)
エクストレイル:18,066台(29位)

2021年1-12月
ハリアー:74,575台(7位)
RAV4:49,594台(15位)
フォレスター:22,903台(27位)
エクストレイル:12,016台(42位)
ハリアーの強さは圧倒的だが、エクストレイルも健闘しているではないか。

日産のSUVラインアップの最重要モデルがエクストレイル(ローグ/キャシュカイも含めて)。第3世代e-POWERの搭載を待たなくても、現行エクストレイルは商品力が高い。ぜひ、一度試乗してみてほしい。ぜひ、e-4ORCEモデルも試していただきたい。

今回の試乗では、トータル390.2km走行した。平均燃費は17.7km/L(平均時速は36km/h)でWLTCモード燃費(18.3km/L)に対する達成率は96.7%と非常に良好だった。

日産自動車、第3世代e-POWERを搭載したキャシュカイを欧州市場で発表!

日産自動車は、欧州で第3世代となるハイブリッドシステム、e-POWERを搭載したキャシュカイを発表した。第3代目となる新世代e-POWERは、燃費性能を向上するとともに、より高い静粛性を実現。新世代e-POWERを搭載したキャシュカイは、Cセグメントクロスオーバー市場において最高水準の燃費と低CO₂排出量を達成している。キャシュカイは、英国サンダーランド工場で生産され、2025年9月より欧州市場で発売予定。その後、アフリカおよびオセアニア市場にも順次展開される予定。また、第3世代e-POWERは日本市場においては2026年度の発売が予定されている新型エルグランド、また北米市場においては2026年度中に発表予定の新型ローグに搭載される予定だ。

https://motor-fan.jp/mf/article/341120