フィアット・パンダが300台!? 歴代パンダオンリーのミーティング『パンダリーノ2025』に行ってみた!やっぱり初代が一番人気?

2025年5月24日(土)と25日(日)の2日間に渡って静岡県浜松市にある渚園キャンプ場を会場に「パンダリーノ2025」が例年通り開催された。このイベントは初代モデル~3代目モデルまでのフィアット・パンダを対象にしたオンリー・ミーティングだ。前日の土曜日は雨に祟られたが、ミーティング開催日の日曜日は天候が回復。今年のパンダリーノも盛り上がりを見せた。 REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

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『パンダリーノ2025』イベントレポートvol.1はこちら。

ジウジアーロが手掛けたシンプルで合理的な設計の小型大衆車

1980年に誕生した初代パンダは、同社のカルロ・デ・ベネデッティ副社長(当時)からの指名により、ジョルジェット・ジウジアーロ氏がコンセプトワークとデザインを手掛けた126や127に代わるフィアットの小型大衆車である。

このクルマの開発をするに当たって、ジウジアーロ氏にフィアットが遵守を求めた開発要件は、大人4人が快適に移動できる広々とした空間を持ちながらも、インテリアや装備は簡素で、合理的な設計により生産性や経済性に優れ、重量と価格は126並という厳しいものであった。

通常の自動車設計者なら匙を投げ出すであろうこの難題にジウジアーロ氏は、片腕のアルド・マントヴァーニ氏とともに驚くほど短期間で構想とスケッチをまとめ上げたと伝えられている。

1987年型パンダ1000CL。フロントグリルの形状と円形のサイドマーカーからセリエ2のMC前(中期型)だとわかる。
初代パンダの特徴的なオプション装備が写真のWサンルーフ。キャンバス製の幌を開けることで乗員全員が等しく陽の光を浴びることができる。

初代パンダのエクステリアの特徴となる平面ガラスや簡素なグリル、蓋状にデザインされたボンネット、ドアノブを備えない2枚のドア、ボディパネルの溶接箇所をモールディングで隠して側面を屋根に組み立てる独特な製法など、初代パンダの外観上の特徴はこの段階ですでに採用を決定していた。

シンプルで合理的な設計の初代パンダだけに使い勝手は良好。アウトドアなどのレジャーとの相性も抜群に良い。

また、ジウジアーロ氏の手腕はインテリアにも余すことなく発揮されており、シトロエン2CVから着想を受けたハンモック構造のシート、ボディパネルむき出しのインテリア、収納スペースが露出した備えたファブリック製ダッシュボードなどは、鬼才と呼ばれた彼ならではのアイデアによるものだ。

セリエ1(前期型)のモデルライフ途中に追加されたパンダ4×4。その名の通り、シュタイアープフ製のドライブトレインを採用した4WDモデル。トランスミッションはMTのみの設定となる。
パンダ4×4のインテリア。ダッシュボード上の傾斜計は標準装備。

思わずDIYでカスタムしたくなる素材としての魅力

こうした経済性と生産性を重視したシンプルな設計の小型大衆車は、新車価格が安価ということもあって、中古車になってからも手頃な価格で流通することから、クルマ好きがカスタムやドレスアップの素材として好んで用いることが多い。

セリエ2のMC後(後期型)のパンダ4×4。ユニークなのはランチア・デルタHFインテグラーレにインスパイされたランチアマスクだ。

さすがに50万円以下で中古車が選びたい放題という時代はとっくに過去のものとなったが、それでもBMCミニやVWタイプI、ヌォーバ・チンクェチェントなどのビンテージの領域に入った1世代前の欧州製小型車に比べれば、初代パンダの中古車相場はまだまだ安い。

違和感なく収まっているランチアマスク。グリルはY10あたりのものを流用したのだろうか? ヘッドランプも丸型ヘッドランプに透明のランプカバーをつけることで表情を変化させている。

車齢の古さから市場に流通しているクルマの多くが、走行教理が10万kmを超えているものばかりだが、探せばメンテナンス履歴のしっかり残ったコンディションの良い個体を100万円前後で見つけることもできるようだ。

ランチアマスクのパンダ4×4を後から撮影。リヤエンドはほぼ純正にまま。白い5本スポークのアルミホイールがレーシーな雰囲気を演出している。
ランチアマスクのパンダ4×4のエンジンルーム。ヘッドカバーはブルーの結晶塗装を施した上でジャンニーニの文字が踊る。K&Nのダイレクトエアクリーナーにオイルキャッチタンクを装備し、ハイテンションコードなども青で統一。
インテリアはイエローグリーンで統一。スチールの剥き出し部分はグリーンの布地で隠されている。

とは言うものの、生産終了から20年以上が経ち、カスタムやドレスアップの前にコンディション回復のための修復作業が必要な個体も多く、またパーツの欠品も増えつつあり、部品の入手性がかなり悪くなっているので、初代パンダを維持するのは言うほど簡単ではない。

ローダウンした足まわりにRAYS TE37を組み合わせた走り屋仕様の1989年型パンダ1000sie。ボンネットはキャッチピンが備わることからFRP製に交換されているのだろう。
インテリアはストリップダウンした上でロールケージを組み込み、運転席回りは社外製のステアリングホイールとフルバケットシートを装着。ダッシュボードには後付けのタコメーターを装着している。かつてのパンダカップカーかと思ったが、オーナーに聞くとノーマル車両をカスタムして仕上げたそうだ。

ただ、それでもこのクルマのシンプルなメカニズムはDIYで手を入れやすいことに変わりはなく、会場にはオーナーの個性を反映した魅力的なカスタムパンダが並んでいた。カスタムの手が入ったパンダは、そのどれもが独自色に溢れており、1台として同じものがなかった。以下、会場で見つけたユニークなカスタム&ドレスアップパンダを中心に紹介していこう。

『パンダリーノ2025』に集まった個性的な初代パンダを一気に紹介!

1990年型パンダ1000sie改。かつて開催されていたパンダカップカーの希少なサバイバー。
フロントマスクはパンダ45のグリルに換装した上で、ライトポッドを追加。レーシーな雰囲気が漂うマスクとなった。
1990年型パンダ1000sie改カップカーのリヤビュー。
ローダウンした足まわりに組み合わされるホイールはO.Zレーシングの13インチをチョイス。タイヤは165/60R13サイズのダンロップDIREZZA 02Gを履く。
パンダ1000sie改カップカーのエンジンルーム。ボディ剛性向上のためストラットタワーバーを装着。
ボンネットステーはなんとチタン製。
パンダ1000sie改カップカーのインテリア。リヤシートを撤去した上でカーペットやトリムをストリップダウン。フロントシートは左右ともにMOMO製のフルバケットタイプに交換されている。助手席側のハーネスやシフトノブもMOMO製で揃える。
パンダ1000sie改カップカーのラゲッジルーム。7点式ロールケージに注目。
1996年型パンダ・セレクタ改。MTに載せ替えた車両だそうで、外装はエアロパーツとオーバーフェンダーで武装している。
フロントマスクは中期型のラジエターグリルに換装した上で、カナード付きのリップスポイラーを装着している。
ルーフ後端には小ぶりなGTウイングを追加。
パンダ・セレクタ改のリヤビュー。インチアップされたOZレーシング製ホイールが目を引く。
2024年の『さいたまイタフラミーティング2024』のリポートで紹介したアルファロメオSZを所有するホールズさんの2000年型パンダ4×4。薄いピンクのボディカラーがなんともかわいらしい。
世界限定1000台!新車価格1000万円!アルファロメオSZの魅力と誕生に秘められた苦悩とは? in『さいたまイタフラミーティング』

埼玉県吉見町にて、2024年11月17日(日)に開催された『さいたまイタフラミーティング2024』には、関東を中心に新旧のイタリア車とフランス車が600台も集まった。その中で筆者が最も注目したのが1990年型アルファロメオSZ(ES30)だ。じつは、筆者も同型車を所有していたことがある。そんなことから世界限定1000台という希少性だけでなく、個人的な思い入れ……懐かしさも手伝って今回紹介することにした。 REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

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『さいたまイタフラミーティング』のSZについてはこちらをご覧ください。
ホールズさんのパンダ4×4のリヤビュー。ボディ側面にはアバルトのサイドデカールが入り、ハッチゲートにはサソリのデカールが貼られている。
ホールズさんのパンダ4×4のインテリア。ステアリングはアバルト製に交換されていた。
クォーターウィンドウにはこれまでにこのパンダで参加したイベントのステッカーが誇らしく貼られていた。
中期型のグリルに換装した1996年型パンダ1100CLX。それ以外の外装はノーマルに見えるが……。
この車で注目すべきはインテリア。灰皿を左右に移動させるレールには、オーナー手製のドリンクホルダーが備わる。
ドアトリムにはパワーウインドウスイッチが備わる。本来パンダは手動のレギュレーターのみなのだが、どうやらDIYでパワーウィンドウ化を果たしたようだ(レギュレーターのハンドルは残っている)。

フォトギャラリー:『パンダリーノ2025』にエントリーしていた初代パンダ