ジウジアーロが手掛けたシンプルで合理的な設計の小型大衆車
1980年に誕生した初代パンダは、同社のカルロ・デ・ベネデッティ副社長(当時)からの指名により、ジョルジェット・ジウジアーロ氏がコンセプトワークとデザインを手掛けた126や127に代わるフィアットの小型大衆車である。

このクルマの開発をするに当たって、ジウジアーロ氏にフィアットが遵守を求めた開発要件は、大人4人が快適に移動できる広々とした空間を持ちながらも、インテリアや装備は簡素で、合理的な設計により生産性や経済性に優れ、重量と価格は126並という厳しいものであった。
通常の自動車設計者なら匙を投げ出すであろうこの難題にジウジアーロ氏は、片腕のアルド・マントヴァーニ氏とともに驚くほど短期間で構想とスケッチをまとめ上げたと伝えられている。


初代パンダのエクステリアの特徴となる平面ガラスや簡素なグリル、蓋状にデザインされたボンネット、ドアノブを備えない2枚のドア、ボディパネルの溶接箇所をモールディングで隠して側面を屋根に組み立てる独特な製法など、初代パンダの外観上の特徴はこの段階ですでに採用を決定していた。

また、ジウジアーロ氏の手腕はインテリアにも余すことなく発揮されており、シトロエン2CVから着想を受けたハンモック構造のシート、ボディパネルむき出しのインテリア、収納スペースが露出した備えたファブリック製ダッシュボードなどは、鬼才と呼ばれた彼ならではのアイデアによるものだ。


思わずDIYでカスタムしたくなる素材としての魅力
こうした経済性と生産性を重視したシンプルな設計の小型大衆車は、新車価格が安価ということもあって、中古車になってからも手頃な価格で流通することから、クルマ好きがカスタムやドレスアップの素材として好んで用いることが多い。

さすがに50万円以下で中古車が選びたい放題という時代はとっくに過去のものとなったが、それでもBMCミニやVWタイプI、ヌォーバ・チンクェチェントなどのビンテージの領域に入った1世代前の欧州製小型車に比べれば、初代パンダの中古車相場はまだまだ安い。

車齢の古さから市場に流通しているクルマの多くが、走行教理が10万kmを超えているものばかりだが、探せばメンテナンス履歴のしっかり残ったコンディションの良い個体を100万円前後で見つけることもできるようだ。



とは言うものの、生産終了から20年以上が経ち、カスタムやドレスアップの前にコンディション回復のための修復作業が必要な個体も多く、またパーツの欠品も増えつつあり、部品の入手性がかなり悪くなっているので、初代パンダを維持するのは言うほど簡単ではない。


ただ、それでもこのクルマのシンプルなメカニズムはDIYで手を入れやすいことに変わりはなく、会場にはオーナーの個性を反映した魅力的なカスタムパンダが並んでいた。カスタムの手が入ったパンダは、そのどれもが独自色に溢れており、1台として同じものがなかった。以下、会場で見つけたユニークなカスタム&ドレスアップパンダを中心に紹介していこう。
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