実用性と快適性は比べるまでもなくオーラニスモが上
ボディサイズはどちらも同じくらいだが、GRヤリスは2ドアの4人乗りで、オーラニスモは4ドアの5人乗りだ。
GRヤリスの後席膝周り空間は5ドアのヤリスと同程度だが、後傾したルーフにより頭上空間は狭く成人男性が快適な姿勢で乗るのは難しいだろう。オーラニスモは広いリアドア開口面積と後席を持つノートと同じであるため平時の使い勝手はオーラニスモの方が圧倒的に高い。
荷室空間はオーラニスモの4WDモデルの荷室容量が、2WDモデルより80L少ない260Lとなる。GRヤリスはそれよりさらに小さい174Lで、後席を倒せばタイヤ4本を積載できるだけの空間が備わるが、日常用途ではやや心もとない容量だ。
インテリアに関しても、オーラNISMOはレッドの加飾をアクセントとした専用内装となるが基本形状はオーラと共通となる。
それに対して、GRヤリスのインパネは仰々しいコックピット風の専用デザインとなっており、レーシングハーネスを装着した状態でもスイッチ類に手が届く配置となっているが平時の運転ではやや圧迫感がある。実用性と快適性は比べるまでもなくオーラニスモが優れていると言えよう。
トヨタ GR ヤリス RZ GR-DAT
ボディサイズ＝全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mm
ホイールベース＝2560mm
車両重量＝1300kg
タイヤサイズ＝225/40R18（前後）
日産 オーラ NISMO tuned e-POWER 4WD
ボディサイズ＝全長4120mm×全幅1735mm×全高1505mm
ホイールベース＝2580mm
車両重量＝1390kg
タイヤサイズ＝205/50ZR17（前後）
オーラニスモの性能は、特定条件下ならGRヤリスをも上回る
GRヤリスは最高出力304ps／最大トルク400Nmを発揮する1.6L3気筒ターボエンジンを搭載し、専用の4WDシステム｢GR-Four｣を介して四輪を駆動する。2025年4月のマイナーチェンジで、高度な変速性能アルゴリズムが取り入れられた8速ATの｢GR-DAT｣モデルが追加された。
対するオーラニスモは、エンジンを発電機として使い常時モーターで走行する｢e-POWER」であり、最高出力136ps／最大トルク300Nmのフロントモーターに加え、82ps／150Nmのリアモーターを搭載している。
GRヤリスのは低回転数から大トルクを発揮できるエンジン特性となっているが、回転初動から最大トルクを発揮するモーター駆動のオーラニスモの発進性能には敵わない。しかしより高い速度領域での加速性能はGRヤリスがオーラニスモを圧倒する。
オーラニスモの真価は加速性能よりもコーナリング性能にあると言ってよいだろう。オーラニスモの4WDモデルは後輪の動力を前輪と完全に独立して制御可能だ。後輪の駆動力を使ってクルマを曲げる特性どちらも持ち合わせているが、機械式4WDのGRヤリスではオーラニスモの4WDほど緻密に駆動力を制御することはできない。
さらにオーラニスモはボディの前後に補強を追加して剛性を高め、リアサスペンションには減衰応答性に優れたモノチューブダンパーを装備することで、後輪の駆動力を使い切るためのセッティングが施される。
トヨタ GR ヤリス RZ GR-DAT
エンジン形式＝直列3気筒ガソリンターボエンジン
排気量＝1618cc
最高出力＝304ps/6500rpm
最大トルク＝400Nm/3250-4600rpm
トランスミッション＝8速AT
駆動方式＝4WD
日産 オーラ NISMO tuned e-POWER 4WD
エンジン形式＝直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量＝1198cc
最高出力＝82ps/6000rpm
最大トルク＝103Nm/4800rpm
トランスミッション＝単速
駆動方式＝4WD
スポーツカーに求めるものは何か
｢GR ヤリス RZ GR-DAT｣の価格は483万円、｢オーラ NISMO tuned e-POWER 4WD｣は 347万3800円だ。言うなればGRヤリスは競技車両で、オーラニスモはスポーティカーだ。成り立ちが大きく異なっていることもあってコストのかけ方も大きく違う。走行性能における総合的なスペックはGRヤリスの方が遥かに上と言えるだろう。
しかし、日常的に使いやすいのはオーラニスモの方だ。モーター駆動による加速とコーナリングの演出によって、わかりやすいスポーツ感を提供してくれる。ただしe-POWERのオーラニスモは、バッテリー電力を使い果たすと消費電力に発電が追いつかずモーター出力が低下してしまう。少なくとも大型サーキットでのタイムアタックが目的ならオーラニスモは選ぶべきクルマではない。
対するGRヤリスは2ペダルのGR-DATモデルであっても、高すぎるスペックゆえに性能を引き出そうとすると公道では持て余す。GRヤリスが本領を発揮できるのはサーキットやダートなどのクローズドコースだ。
どちらもスポーツカーと呼んで差し支えない見た目とスペックを備えたクルマであることは間違いない。しかし、どちらのクルマも一般的なスポーツカーの認識で購入すると後悔するかもしれない。両車は｢スポーツカーに求めるものは何か｣と問いかけてくる両極端な性能の2台と言えるだろう。
車両本体価格
トヨタ GR ヤリス RZ GR-DAT：483万円
日産 オーラ NISMO tuned e-POWER 4WD： 347万3800円
