後席が狭くても売れているヤリスクロス


ヤリスクロスのボディサイズは全長4180mm×全幅1765mm×全高1590mm。コンパクトSUVのなかでもボディサイズは比較的小さめであり、後席空間/荷室空間はライバルであるホンダ ヴェゼルや日産 キックスなどの方が明らかに広く、ヤリスクロスは後席の乗降性も高いとは言えない。
発売当初は斬新と評価されたヤリスクロスの内外装デザインも、発売から5年が経過した現在となっては新鮮味はない。それでもヤリスクロスは現在も売れ続けている。
国土交通省の調査によるとクルマ1台あたりの平均乗車人数は1.3人とのことだ。パーソナルユースに適したボディサイズに留め、多人数乗車に対応できる最低限の後席空間に留めることで、コンパクトカーらしい使いやすさを維持している点がヤリスクロスの大きな魅力と言えるだろう。
また、搭載された1.5Lのハイブリッドシステムは優れた燃費性能で高い経済性をもたらす。WLTCモード30.8km/L(ハイブリッドX 2WD)の燃費性能は2025年現在もコンパクトSUVトップクラスだ。
1クラス上の室内空間が備わるカローラクロス


全長4455mm×全幅1825mm×全高1620mmのカローラクロスは、同クラスのライバル車と比べてわずかに大柄なボディサイズに留めながら、トヨタRAV4やハリアーなど1クラス上のSUVに匹敵する後席空間と荷室空間を備えている。
それでいながら価格はライバルと比べても安く、1.8Lハイブリッドエンジンの燃費性能もクラストップとなる26.4km/L(ハイブリッドG 2WD)だ。
広いクルマに乗りたいが維持費の高さを懸念するユーザーにとって、カローラクロスは理想的なクルマと言えるだろう。クラスのセオリーから外れた優れたパッケージ効率と高い経済性がカローラクロスが売れる大きな理由と言えそうだ。
3列目シートの役割が考え抜かれたシエンタ


トヨタ シエンタは、全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mmのコンパクトなボディに3列シートとスライドドアを備えた最大7人乗りのミニバンだ。5人以下では車内を広々と使えるうえ、必要なときには7人が無理なく乗車できるパッケージは多くの人が魅力的に感じるだろう。
シエンタの競合車種としてはホンダ フリードが挙がる。フリードは6人乗りキャプテンシート仕様の設定がある点と、3列目シートの格納方法が跳ね上げ式で座面のクッションが厚い点でシエンタよりも優れている。
しかし3列目シートを床下収納式としたシエンタは、7人乗り仕様を選んでもシートを格納しておけば5人乗り仕様とほぼ変わらない使い心地だ。使用頻度が低いであろう3列目シートを、非常用と割り切った設計がトヨタらしいと言えるだろう。
そして、ヤリスクロスと同じ1.5リッターハイブリッドエンジンによる28.5km/L(ハイブリッドX 2WD 7人乗り)の優れた燃費性能と手頃な価格設定も、経済性が求められるシエンタの強力な武器となっている。
総合力と価格比のコスパで群を抜くトヨタ車

トヨタのヤリスクロス、カローラクロス、そしてシエンタがこれほどまでに支持される理由は、コストパフォーマンスの高さにある。
万人向けのパッケージ設計に加え、徹底したコスト低減による低価格化と低燃費化が多くのトヨタ車に共通する特徴だ。とくにトヨタが長年培ってきたハイブリッドシステムによる優れた燃費性能は大きな強みとなる。
内装の質感やパワートレインやサスペンションの動的質感といった個々の性能や魅力においては、他メーカーのクルマが優位に立つ場合も多い。しかし、大多数のユーザーがクルマに求めるのはコストパフォーマンスだ。
トヨタ車は総合力/価格比のコストパフォーマンスで群を抜く。その人気が高いゆえに中古車としての売却価格も高くなるため、リセールバリューの高さもその人気をさらに後押しする。
またクルマ自体の性能や価格だけでなく、トヨタが持つ広大な販売網と整備拠点も販売台数に大きく影響している。「とりあえずトヨタ車」「次もトヨタ車を選んでおけば間違いない」といった信頼感もクルマ選びを多分に後押ししていることだろう。
