今回の取り組み実施に至った背景
総合モビリティカンパニーへの進化を目指すホンダには、多様な才能を持つ従業員が多く在籍している。一人ひとりが夢と強い想いを持ち、多様な知と多様な夢を相互に作用させて「より自由で、より便利で、より楽しいモビリティ」を実現するために、チャレンジが続けられている。その実現のためには、担当する領域を越えた技術・人材の連携・活用が重要だとされている。近年急速に進化した生成AIは、業務効率化だけでなく大きな価値創出の可能性を持っている。AIに関する知見や経験を持つ人材は社内に存在していたが、その技術を「誰が」「どこで」使いこなすかという全体的な視点では、それらの人材が全社的に十分に認知・評価される環境には至っていなかった。
自律型コミュニティ「Borders」
そのような背景の中で、「個々のスキルを連携させれば、世界一になれる」という想いから従業員自ら立ち上げられたのが、口コミ中心のIT技術の自律型コミュニティ「Borders(ボーダーズ)」だ。生成AIに関心とスキルを持つ従業員がBordersに集まり、月例の勉強会やPoC(Proof of Concept、概念実証)を通じて、ホンダにおける生成AI活用の実践的知見を蓄積している。その活動は、経営層と対話が重ねられた結果、全社施策としての位置づけを獲得するに至った。
「Gen-AIエキスパート制度」
また、AI人材の活用では、デジタル領域と人事領域が連携し社内初となる「Gen-AIエキスパート制度」を数カ月の短期間で検討して2024年6月に導入。この制度は、生成AIに関する高い知識、技術、経験を生かして自らシステム構築が可能なエキスパートを社内で発掘・認定し、認定を受けた従業員をプロジェクトへアサインすることで、組織の枠に捉われず活躍できる制度となっている。プロジェクトに従事している期間は、3段階の認定レベルに応じて最大月15万円のエキスパート加算が支給される。
自律型コミュニティ「Borders」×「Gen-AIエキスパート制度」による成果
BordersとGen-AIエキスパート制度により、社内に点在していた生成AIの専門スキルを持つ人材の見える化と、組織の壁を超えた人材活用、AIを専門としない領域からでも業務貢献が正しく認知・評価される仕組みが整った。その結果、AIによる人材スキルとプロジェクトニーズのマッチング機能の仕組みを作り、人とプロジェクトの最適配置を実現。全社横断でのプロジェクト支援や管理が行われている。BordersのネットワークとGen-AIエキスパートを認定する制度が連携し、ホンダらしい自発的な“学びと挑戦”を支える施策のプラットフォームへと進化した。施策の開始から1年で50件以上の生成AIプロジェクトが支援され、開発・品質・生産・営業・人事など、全社の幅広い領域で業務効率化や品質向上、意思決定支援といった成果が得られている。