手軽に手の届く、スタンダードなEVという新たな選択肢
ホンダは軽乗用EV(電気自動車)の「N-ONE e:」を2025年秋に発売する。それに先駆けて、8月1日から先行予約の受付が開始された。ホンダにとっては2024年10月に発売が開始された軽商用EVの「N-VAN e:」に続く、2台目の軽EVとなる。

N-ONE e:は、その名前から推察できるように、ガソリン軽乗用車「N-ONE」の電気自動車バージョンだ。N-ONEの原点は、ホンダ初の軽乗用車「N360」。そのDNAを受け継ぎ、N-ONEは「かわいらしいデザイン」「誰にでも優しいクルマ」「自分らしさを表現できるパートナー」として生まれた。その精神を継承しつつ、EVとして新たな価値を加えたのがN-ONE e:だ。ホンダが考える“手軽に手の届くEV”として、スタンダードなEVという位置付けになっている。

N-ONE e:のメインターゲットは、N-ONEでも中心となっていた40〜50代の女性と、20代の独身層だ。これらのターゲット層に共通するのは、短距離移動が中心で、シンプルな使いやすさとコストパフォーマンスを重視するという傾向。特にコロナ禍以降は、「時間を大切にしたい」「シンプルで機能的なものを選びたい」といった価値観が顕在化している。そこでホンダでは、「日常を効率よく移動したい」「安心して運転したい」「小さな贅沢を大切にしたい」というニーズに応えるべく、N-ONE e:のグランドコンセプトを「e:Daily Parner(イーデイリーパートナー)」と設定した。
航続距離は270km以上を実現。非常時やアウトドアで活躍する外部給電機能も
EVで気になるのは航続距離だが、N-ONE e:では270km以上(WLTCモード)を達成している。毎日20km走るような使い方でも、1週間充電することなく過ごすことが可能だ。ライバルと言える日産サクラは180kmなので、航続距離に関しては、N-ONE e:はかなりのアドバンテージを持っていると言える。
また、N-ONE e:は1500Wまでの外部給電にも対応している。災害時にはクルマが蓄電池となり、非常電源として活用することが可能なのも頼もしい。クルマから電源を簡単に取り出せることで、より快適なアウトドアライフも楽しめそうだ。

エクステリア:フロントマスクやリヤまわりをイメージチェンジ
N-ONE e:では、内外装のデザインにも注目したい。N-ONEがベースにはなっているものの、フロントフェイスやリヤまわり、そしてインパネが新しい意匠となっており、その印象は実に新鮮だ。
エクステリアデザインのコンセプトは、「軽快ナチュラルエクステリア」だ。Nシリーズのヘリテージに、現代のEVらしさやサステナビリティ感を掛け合わせ、以下の3つの要素を取り入れている。
1:足取り軽やかな「軽快フォルム」
横から見た際の「スムーズに力強い走り出しと軽やかさ」を表現。重心の高いリヤゲートから、前方に向かって勢いのあるシルエットをデザイン。

2:長く愛せる「愛着フェイス」
フロントフェイスは、黒いフロントグリルと上部をカットした丸型ヘッドライトを組み合わせて、あざとすぎないニュートラルな印象に。また、フロントバンパーの開口部やリヤバンパーのガーニッシュなどには、「カドマル」の四角い形状を採用しているのも特徴だ。


3:誰にでも馴染む「ツルンとサーフェス」
目指したのは、思わず撫でたり、洗車してあげたくなるような凹凸のないクリーンな形状。フロントフェンダーやリヤゲートパネル、は専用デザインとなっており、張りがあってスムーズな面質を実現している。

灯体(ライト)のデザインにもこだわりが詰まっている。ヘッドランプは「親しみやすさ」と「EVらしいクリーンで先進的な機能」の共存を狙って、完全な丸型ではなく、デジタルなセグメント状に分けたリングライトを採用。テールランプも、リングを白くすることでEVのクリーンさを表現した。



ボディカラーは「いきいきニュートラルカラー」をコンセプトに、乗る人を主役にしつつ愛着が湧くようなクリーンでナチュラルなカラーを5色ラインナップ。特に「チアフルグリーン」はN-ONE e:のグランドコンセプトを体現する「元気のあるカラー」として開発された新色となっている。
インテリア:ベース車とはまったく異なる水平基調のクリーンなインパネ
インテリアデザインのコンセプトは、エクステリアと同様に「軽快ナチュラル」が掲げられた。日常使いの中で、自然と気持ちが軽くなるような空間を目指したという。その実現のために、実際に生活圏内20〜30km程度を移動する、ターゲットと同じ年代の女性へのヒアリングを実施して、3つの要素を設定した。
1:身軽な使い心地
軽快で広々とした空間に感じられるように、インストゥルメントパネル上部は薄く、水平な造形を採用。また、より自然な運転姿勢が取れるように、N-ONEに対してステアリングの位置をドライバー側に37mm近づけている。
また、操作スイッチ類は手が届きやすいインストゥルメントパネル中央部に集約され、シフトセレクターもスイッチタイプを採用。回生ブレーキを強めることで、アクセルのオン/オフで速度調整が可能となる「シングルペダルコントロール」も備わる。

2:気軽な使い勝手
助手席側のインストゥルメントパネル上面はスマホなどがさっと置けるワイドなトレーとなっているほか、前席シートの間にはトートバッグもすっぽり収まるロングコンソールを配置するなど、豊富で使いやすい収納スペースが自慢だ。また、ナビゲーションがない仕様では、Bluetooth機能によって、乗り込んだ瞬間にスマホと連動していつもの音楽が流れる「シンプルオーディオ」も用意されている。



3:暮らしに馴染むディテール
エアコンの吹き出し口やシフトセレクターの周辺部分には“削り処理”を入れることで、触り心地が良く愛着が持てるディテールに。さらに、シートベルトやシートのタグなど、インテリアの要所に温もりを感じさせる暖色系のワンポイントを散りばめている。


シートは乗り降りのしやすさを重視して、座面両端の高さを抑えた形状を採用している。ヘッドレストは、高さ調整の必要がない一体形状としているのもポイントだ。表皮は、どんな年齢やファッションでも似合う柄をチョイス。明るい色調だが、複数の色糸を混ぜることによって、汚れが目立ちにくくなっているという。


また、N-ONE e:ではホンダ車の廃棄バンパーを再利用した素材をフロントグリルに採用するなど、限りある資源を有効活用する「リソースサーキュレーション」の取り組みを実施。さらにインストゥルメントパネルのアクセント部にも植物由来のバイオ樹脂を採用するほか、フロアカーペットやインシュレーターには使用済みペットボトルやホンダ従業員の作業着を再利用した素材が使われている。

2グレード構成:シンプルに徹した「L」と、9インチナビ+アルミホイールが標準の「G」
N-ONE e:はスタンダードの「G」と上級の「L」の2グレードで構成される。主な違いは、ホイールとオーディオだ。
「L」のホイールはピューターグレート切削シルバーが組み合わされた、スポーティなアルミが標準装備となる。「G」はシルバー/ピューターグレーのトリムホイールキャップが組み合わされたスチールホイールが標準だ。
そして、「L」では9インチ Honda CONNECTナビが標準装備となる一方、「G」はシンプルオーディオが標準となる。



2040年のEV・FCEVの販売比率100%のためには、EVの普及が不可欠
ホンダは2050年のカーボンニュートラルと交通事故死ゼロに向け、四輪車の電動化を本格的に推進中だ。そして2040年にはEV・FCEV(燃料電池車)の販売比率100%という目標を掲げている。国内EV市場は一時的に踊り場を迎えているものの、政府や地方自治体は補助金やインフラ整備の拡大を行うことで、今もEV普及を後押ししている。
振り返ってみれば、現在はもはやスタンダードな存在になっているハイブリッド車だって、1997年にトヨタが初代プリウスを発売して以降、本格的な普及期に至るまでには10年以上の月日が必要だった。EVも、ハイブリッド車のような普及期がいずれやってくることだろう。ホンダはそんな未来を見据えて、EVの販売基盤を着実に構築することで、EVのリーディングカンパニーを目指している。その橋頭堡の1台となるニューモデルが、N-ONE e:なのである。
