コンセプトが独創的すぎたのか、それとも日本市場には時期尚早だったのか――完成度は高いにもかかわらず、市場で大きな支持を得られなかったSUVを5台厳選した。いずれも代えの利かない魅力と強烈な個性を備えたモデルだが、中古車市場ではその独自性が逆に評価され、意外な高値で取引されている。
今回は、中古車として店頭に並ぶとつい目を引く、個性派SUVの中古価格相場と流通状況を追った。

ホンダ エレメント:日本で売るには早すぎた超個性派SUV

2003年4月から2005年7月まで生産されたホンダ エレメントは、北米市場の若年層をメインターゲットとして開発されたモデルであり、製造国もアメリカとなる。

奇抜なデザインに加え、ドアは珍しい観音開きとなっており、リアハッチが上下展開となる点もエレメントのユニークな点だ。室内はアウトドアレジャーでの使い勝手に配慮され防水/防汚加工が施されており、泥などで汚れたアウトドア用品なども気兼ねなく積載できる。

ボディサイズは全長4300mm×全幅1815mm×全高1790mm。エンジンは当時のアコードなどにも搭載された2.4L直列4気筒i-VTECエンジンで、見かけ以上にトルクフルな乗り味を備えている。

現在の価格相場は50万円から170万円と幅広いが、販売期間はわずか2年であり市場流通量は少なく、良好なコンディションの個体は200万円を超える高値で取引される。

年式も古いため、購入時にはエンジンの状態や下回りのサビなどを入念に確認することが重要となる。その個性的なデザインと希少性から、特別感を求めるユーザーには魅力的な選択肢となるだろう。

スズキ SX4 S-CROSS:ハンガリー生まれのスタイリッシュコンパクトSUV

2015年2月から2020年12月まで販売されたスズキ SX4 S-CROSSは、ハンガリーのマジャールスズキ社で生産されたコンパクトSUVで、日本では輸入車扱いとなる。

エンジンはレギュラー仕様の1.6L直列4気筒エンジンが搭載され、ボディサイズは全長4300mm×全幅1765mm×全高1575mm。スタイリッシュな外観と、コンパクトながら実用性の高いスズキらしいパッケージングがSX4 S-CROSSの特徴だ。

2017年6月の以降のモデルは外観デザインのディテールが一新され洗練度を増した。また、2019年4月の改良ではサイドエアバッグおよびカーテンエアバッグが搭載されたほか、衝突被害軽減ブレーキもアップデートされ、アダプティブクルーズコントロールも標準装備となっている。

加えて、2019年4月以降の4WDモデルは新世代四輪制御システム「ALLGRIP(オールグリップ)」に置き変わり走破性と安定性が大きく向上した。

SX4 S-CROSS中古車価格帯は60万円から200万円となる。外観が変更された2017年6月以降のモデルの価格は130万円から、「ALLGRIP」が採用された2019年4月以降のモデルは160万円からが相場だ。

高年式の個体は総じて走行距離が少ない傾向にあるため、良好な状態の車両を見つけやすい。ただし全体の流通量は少なめだ。

ホンダ クロスロード:都市にもアウトドアにも似合うスクエアデザインの7人乗りSUV

ホンダ クロスロードは、2007年2月から2010年8月まで生産された7人乗りのSUV。スクエアなエクステリアデザインと、全長4285mm×全幅1755mm×全高1670mmのコンパクトボディに3列シートを備えた利便性の高さがクロスロード特徴だ。

2列目シートのスライド機構や、3列目シートの格納機能により、乗車人数や荷物の量に応じた多様なシートアレンジが可能な点は魅力だが、それ以上に目を引くのはその特徴的なデザインだろう。

新車販売台数はふるわなかったものの、都市にもアウトドアシーンにもよく似合う直線的なエクステリアデザインは現在でも高く評価されている。なお、搭載されるエンジンは1.8Lと2.0Lの直列4気筒i-VTECエンジンだ。

現在の中古価格相場は40万円から200万円と幅広いが、生産終了から時間が経過しているため、流通台数は減少傾向にある。走行距離6万km以下の個体は80万円程度からみつかるが、全体的に良好なコンディションの個体は極めて少ないのが現状だ。

日産 スカイラインクロスオーバー:再評価されるべき上質感あふれるプレミアムSUV

日産 スカイラインクロスオーバーは、2009年7月から2016年6月まで販売されたプレミアムSUV。北米向けとなる「インフィニティ EX35」を日本向けに仕立てたクーペスタイルのSUVがスカイラインクロスオーバーだ。

当時は今ほどクロスオーバーSUVへの理解度が高くなく、スカイラインのイメージ低下も相まってか販売台数が伸びることはなかった。しかし、SUVが当たり前の存在となった現在であれば、「スカイラインクロスオーバー」という存在も抵抗なく受け入れられるだろう。

不人気だったとはいえ、走行性能や内外装の上質感は折り紙付きだ。プラットフォームやエンジンは当時のV36型スカイラインとも共用しており、ボディサイズは全長4635mm×全幅1800mm×全高1600mm、エンジンは3.7L V型6気筒エンジンを搭載。後輪駆動のほか、アテーサE-TSを搭載した4WDも用意された。

現在の中古車価格帯は40万円から150万円となる。走行距離6万km以下の比較的良好な個体は80万円からが目安だ。新車価格が420万〜500万円であったことを考慮すれば十分買い得と言えるだろう。ただし、販売台数が少なかったために現在の流通量は極めて少ない。

日産 ジューク:奇抜なデザインと豊富な流通量が魅力のコンパクトSUV

2010年6月から2020年6月まで販売された日産 ジュークの特徴は他に類を見ない個性的なエクステリアデザインにある。

丸みを帯びたボディに大胆なフェンダーライン、独立した丸型ヘッドライトなどユニークな要素が組み合わされており、万人に受け入れられるデザインとは言えないが高く評価する声も多く聞かれる。

ボディサイズは全長4135mm×全幅1765mm×全高1565mm。パワートレインは1.5Lの自然吸気エンジンと1.6Lターボエンジンがラインアップしており、とくに1.6Lターボの「16GT」グレードや、それをベースとしたスポーツグレード「NISMO」はパワフルな走りが楽しめる希少なモデルだ。

現在の価格相場は20万円から160万円と幅広く、10年間にわたって製造されたこともあって今回紹介した5車種のなかで流通量はもっとも多い。走行距離6万km以下の個体や比較的高年式の個体でも50万円から見つけられる。