2025年7月、イタリア・アマルフィで世界初公開された「フェラーリ・アマルフィ」が、日本にも上陸した。東京・浜離宮恩賜庭園を望むウォーターズ竹芝で開催されたジャパンプレミアでは、アマルフィ海岸を再現した幻想的な空間の中、新型2+クーペがその姿を現した。

ローマの後継と位置付けられる本モデルは、フェラーリのプロダクトマーケティング責任者であるエマヌエレ・カランド氏の言葉を借りれば、「比類なきパフォーマンスと、ドライビングの純粋な喜びという二つの魂を完璧なバランスで具現化したモデル」である。

エレガンスと現代性が融合するデザイン

アマルフィのデザインは、フェラーリ・スタイリング・センターを率いるフラヴィオ・マンゾーニの指揮のもと、フェラーリ・ローマのエレガントなプロポーションを進化させたものだ。浮遊感のあるフェンダーとそれを引き締めるダークカラーの帯、グリルレスのフロントフェイス、そして全体を取り囲むようなリアラインが、スピード感と精緻さを同時に表現している。

インテリアには、ドライバーとパッセンジャーを包み込むような「デュアル・コックピット・レイアウト」を採用。ダッシュボードは単体の塊のような構造で、インストゥルメント・クラスターとエアベントが一体化されている。アルミ削り出しのセンタートンネルは宙に浮いているかのような印象を与え、視覚的な軽快さと上質感を両立する。

2+シート構成とともにトランクスペースもしっかりと確保されており、実用性も配慮されている点も見逃せない。また、14スピーカー/1200ワットのBurmester製プレミアムオーディオが選択可能で、音響環境も格別だ。

進化したV8エンジンは640馬力を発揮

心臓部には、多数の受賞歴を誇るF154ファミリーをベースとした3.9LツインターボV8(3855cc)を搭載。最高出力は640cv/7500rpm、最大回転数は7600rpmに達し、比出力は166cv/L。クラス最高のパワーウェイトレシオ(2.29kg/cv)を実現しているほか、ターボチャージャーの最高回転数は17万1000rpmまで引き上げられ、レスポンスと伸びが著しく向上した。

新開発の軽量カムシャフトや再設計されたエンジンブロックのほか、フェラーリエンジンとして初めて低粘度オイルを採用。これにより、冷間時の内部抵抗を30%低減している。また、フェラーリ特有のサウンドにもこだわり、フラットプレーンクランクシャフトと等長エグゾーストヘッダーを組み合わせることで、法規制をクリアしつつも感性に訴える音質を維持している。

トランスミッションには、8速デュアルクラッチ・ギアボックスを搭載。SF90ストラダーレで培った技術をさらに最適化し、変速スピードとスムーズさを両立させた。0-100km/h加速は3.3秒、0-200km/hは9.0秒をマークする。

エアロダイナミクスを徹底追求

アマルフィは、最新の車両制御技術とアクティブエアロを融合し、あらゆる場面で卓越した操縦性を発揮する。注目すべきは、3段階で作動する新型可変リアウィング。走行条件に応じて低ドラッグ(LD)・中ダウンフォース(MD)・高ダウンフォース(HD)を選択し、250km/h時には110kgのダウンフォースを生みつつ、空気抵抗の増加はわずか4%に抑えている。

ブレーキには、12チリンドリにも採用された「ABS Evo」およびブレーキ・バイ・ワイヤ・システムを導入。6Dセンサーにより、路面状況に応じた制動を最適に配分する。ステアリングはEPSの制御ロジックを見直し、グリップ推定の反応速度を10%向上。限界域においても高い精度でドライバーの意図に応える。タイヤはフロント245/35R20、リア285/35R20サイズで、ブリヂストン・ポテンザスポーツとピレリPゼロを選択可能。

新世代HMIと高度な快適装備を搭載

アマルフィのコクピットは、直感的で高機能なHMIが特徴だ。15.6インチのフルデジタルメーター、10.25インチのセンタータッチディスプレイ、8.8インチのパッセンジャーディスプレイが、運転中のあらゆる情報とエンタメをサポート。物理ボタンが復活した新型ステアリングホイールは操作感にも優れ、アルミ製スタートボタンが象徴的存在となっている。

Apple CarPlayやAndroid Autoに加え、MyFerrariコネクトアプリでの遠隔操作やスマートフォンのワイヤレス充電にも対応。フロントリフター(最大40mm車高アップ)や10個のエアチャンバーによるマッサージ付き快適シートなども用意される。

最新のフェラーリらしく、ADAS機能も万全だ。アダプティブ・クルーズ・コントロールや自動緊急ブレーキ、ブラインドスポット検出、レーンキープアシストなどを標準装備。さらにオプションで360度カメラやリアクロストラフィックアラートも追加可能だ。これらはカメラとレーダー、統合制御ユニットによりシームレスに連携し、快適かつ安全なドライビング体験を提供する。

車両スペック

フェラーリ・アマルフィ
全長×全幅×全高:4660×1974×1301mm
ホイールベース:2670mm
乾燥重量:1470kg
エンジン:V型8気筒ツインターボ
総排気量:3855cc
最高出力 :640cv/7500rpm
最大トルク:760Nm/3000〜5750rpm
駆動方式:後輪駆動
トランスミッション:8速DCT