LAMBORGHINI TEMERARIO

フルラインナップのPHV化が完了

ウラカンより少し大きくなったボディ。デザインのテーマはモーターサイクルだという。

およそ10年に渡って販売された「ウラカン」は、間違いなく近年のランボルギーニの成長を支えた存在だった。ステファン・ヴィンケルマンCEO自らも「過去最も成功したランボルギーニ」と評するウラカンの後継モデルを開発するのは、相当な困難があったことだろう。しかもランボルギーニは全モデル電動化というプロダクトの大転換機にあり、次期ウラカンは「電動化されたスーパースポーツカー」という課題をクリアしなければならなかったのだ。

そしてウラカン後継となる「テメラリオ」は、予想通りPHVのスーパースポーツカーとして登場した。ミッドシップであることはウラカンと変わらないが、そのエンジンはウラカンのV10自然吸気からV8へと変化。排気量もウラカンの5.2リッターから4.0リッターへとダウンサイズされた。しかしV8エンジンはツインターボで過給され、エンジン単体で800PSを発生する。ちなみにランボルギーニがミッドシップのスポーツカーにターボエンジンを搭載するのはこれが初めてだ。

3基のモーターによるハイブリッド

フロントに2モーター、リヤに1モーターのPHV。バッテリーはレヴエルトと同じくセンタートンネルに搭載。

ハイブリッドシステムは基本的にレヴエルトと同様で、エンジン後方のトランスミッションに1基、フロントに2基のモーターを装着し、フロントはモーターによってトルクベクタリングが行われるAWDだ。モーターも合わせたトータルのパワーは920PSと発表されている。

だがハイブリッド、つまりモーター&バッテリーの搭載を好まない古いタイプのスポーツカーファン(本音を言えば私もそう)は世界中にとても多い。ましてランボルギーニのファンは自然吸気のフィールが好き、という人がかなりの割合を占めていることは間違いない。もちろんそんなことはランボルギーニは百も承知なのだろう。そんなコアなファンをも満足させるため、ランボルギーニはテメラリオのV8ツインターボに驚くべきサプライズを用意した。それが10000rpmという最高回転数だ。

10000rpmはホンダのエンジンにインスパイア!?

レヴエルトはエンジンがむき出しだが、テメラリオにはカバーが付けられる。

最初にこの数字を聞いた時は、すぐには信じられなかったほどだ。ターボエンジンの市販車で10000rpmというのは、常識を越える超高回転であり、しかもローンチコントロール使用時には10250rpmまで回るのだという。自他ともに認める高回転ユニットである「ポルシェ 911 GT3」の水平対向6気筒でもMAX9000rpmでしかも自然吸気だから、世界のライバルたちも驚いたに違いない。CTO(チーフ・テクニカル・オフィサー=技術部門責任者)を務めるルーヴェン・モール氏は日本車のスポーツカーの大ファンで、特に高回転まで回るホンダエンジンが大好きなのだという。「ホンダエンジンの超高回転の感覚にインスパイアされたんだよ」と笑顔で語るモール氏。歴代「日産 GT-R」をすべて所有し、最近も「ホンダ S2000」を購入したという彼のその言葉は、おそらく本音だろう。

超高回転を達成するために試行錯誤

エンジンの設計を担当したエンジニアによると10000rpmを実現するためにメタルやバルブスプリング、タペット、もちろんターボチャージャーなどなど、多くの部品を試行錯誤しながら開発していったという。その結果メタルは大同メタル工業製、ターボチャージャーはIHI製が採用されたそうだ。技術部門責任者の日本車愛も含め、テメラリオには日本が深く影響を与えているという事実を知り、ちょっぴり誇らしい気持ちになった(IHIのターボチャージャーはイタリア製だったが)。

広くなったインテリア

ひと通りの予備知識を得て、試乗の場所となったサーキットでテメラリオと対面する。レヴエルトよりも241mm短い全長は、ずいぶんとコンパクトに感じるが、それでも4706mmという長さはウラカンよりも100mmちょっと長くなっている。全高も36mm高くなるなど、全体的に少しずつウラカンより大きくなっているが、室内はその分スペースが増えているようで、乗降もさほど窮屈な思いをせずにすむのはありがたい。

コースインし、少しずつスピードを上げていく。スポーツモードを選んでおくとEV走行は行わないので、モーターの存在はほぼ意識しないことになる。回転の上昇はNAのスポーツエンジンのようにスムーズで、特に5000rpm以上のピックアップは最高だ。コーナーの出口に向かって僅かにアクセルを開けただけで感覚にぴたりと合ったトルクがついてくる。驚くのは2000rpm付近からでも6000rpmを超えてからでも、素晴らしく豊かなパワーとトルクが盛り上がってくることだ。

超高回転にスポットを当てたエンジンは、ともすると低回転で力強さがなくなって扱いづらくなる傾向があるが、テメラリオのV8ツインターボは全回転域がパワフルでトルキー。その源が3基のモーターだ。ターボチャージャーも含めたエンジンの特性は基本的に高回転寄りに、そして低〜中回転域はエンジンに加えてモーターがパワーとトルクを補う。このモーターの存在あってこそ、テメラリオの全域での力強さと気持ちよさが実現できた。逆に言えば、モーターなくして10000rpmのエンジンを市販車に搭載することは不可能だっただろう。

ライトウエイトスポーツのような軽快感

超高回転型のエンジンとモーターで、全域での気持ちよさを実現した。

ストレートでフルスロットルを加えると、タコメーターの針は瞬く間に駆け上がり、まったくストレスなく10000rpmに到達した。こちらが拍子抜けするほどのスムーズさで、しかもパワーが途切れることもない。結構タイトな1コーナーに向けてフルブレーキ、ステアリングを切り込んでいく。1連の動きの中で感じるのはライトウエイトスポーツカーのような軽快感だ。フロントのモーターの駆動力は主張しすぎることはなく、ごく自然な軽いオーバーステアに終始する。自分を中心に素直にクルマが反応する感覚はとても心地よく、これに比べるとやはりレヴエルトは重厚というか、乗せられている感がある。

スーパースポーツPHVの理想形

タイヤはブリヂストンと共同開発したポテンザスポーツ。よりサーキットユース向けのポテンザレースも用意される。

先にも書いたように、ハイブリッドのスーパースポーツカーにはまだ否定的な意見もある。テメラリオは、それに対するランボルギーニからの強烈な提案だ。市販車では前代未聞の超高回転エンジンは、モーターが補完することで全域での気持ち良さを実現した。さらに街中では10kmほどのEV走行まで可能だ。スーパースポーツカーのハイブリッドとして、これはひとつの理想形と言えるのではないか。

モーターやバッテリーの搭載を好まない古いタイプのスポーツカーファンも、そろそろ認識を改めた方がよさそうだ。私も含めて。

トルクベクタリングは自然な動きで、違和感はない。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・テメラリオ

ボディサイズ:全長4706×全幅1996×全高1201mm
ホイールベース:2658mm
車両乾燥重量:1690kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 
総排気量:3995cc 
エンジン最高出力:357kW(800PS)/9000〜9750rpm 
最大トルク:730Nm(58.1kgm)/4000〜7000rpm 
モーター最高出力:41kW
システム最高出力:398kW(900PS)
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:Fダブルウイッシュボーン Rマルチリンク 
ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック) 
タイヤサイズ(リム幅):F255/35ZR20(9J) R325/30ZR21(11.5J)
0→100km/h加速:2.7秒
最高速度:343km/h 

「ランボルギーニ テメラリオ GT3」の走行シーン。

ランボルギーニがテメラリオ GT3を発表「4.0リッターV8ツインターボの非ハイブリッドマシン」【動画】

ランボルギーニは、グッドウッド・フェスティバル・スピードにおいて、テメラリオをベースにした初のカスタマー向けレーシングカー「テメラリオ GT3」を発表した。世界中のGTレースシリーズに導入されるテメラリオ GT3は、イタリアのサンターガタ・ボロネーゼで完全に設計・開発、製造された初のレーシングカーとなる。