McLaren 750S X GTS

同じマクラーレン車とは思えないほど

事前の知識なくこの2台を見れば、同じブランドのスポーツカーとは思えないのではないか。それほどに見た目は違うにもかかわらず、ご存知のように新生マクラーレンの第1作である2011年の「MP4-12C」以降(最新のPHEVアルトゥーラを除いて)、すべてのシリーズ生産モデルの構造は基本的に同じである。

すなわち、「750S」も「GTS」もカーボンモノセルと称するバスタブ型のカーボンセンターモノコックの背後にV8ツインターボエンジンエンジンを搭載している。それでいながら両者のキャラクターは大きく異なる。

GTSはこの種のスーパースポーツとしては他に例を見ない、実用的なラゲージスペースを備えることが特長だが、それよりもまずそのスタイリングが“スーパーカー”としてオーセンティックである。750Sより110mmほど長い全長を生かしたシャープで流麗なボディラインは、クルマ好きの身体に染み込んだカッコいいミドシップカーをそのまま表現しているかのようだ。

快適進化形スーパースポーツ「マクラーレンGTS」にワインディングで試乗 | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

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新たな価値を生み出そうとする姿勢

いっぽうの750Sは明らかに異質である。昆虫の顔のようなフロント周りだけでなく、コクピットが前進したプロポーションも工業製品というよりは有機的な生物のようだ。モダニズムを牽引した米国の建築家ルイス・サリヴァンの「Form follows function」(形態は機能に従う)を地で行くそのミニマルなフォルムには、性能最優先で白紙からスタートした設計思想と、常識や慣例にとらわれることなく、新たな価値を生み出そうとするマクラーレンゆえの姿勢が表れている。

基本骨格を同じくしてこのような作り分けができるのは、レーシングカーのようにボディパネルが応力を担う必要がない成り立ちのおかげでもある。とはいえ、有機的で合目的的なそのフォルムはクルマ好きの間でも好き嫌いがはっきり分かれるものだろう。

風洞テストのデータのみに基づいてデザインされたようなボディが美しいのか、あるいは性能だけがスポーツカーの魅力なのか、という反論も十分理解できるが、同時に絶対的な性能やサーキットでの実績が圧倒的な説得力を持つのは古今東西変わらない。しかも最近はGT3レースの隆盛によって、その凄味はより濃厚にダイレクトに伝わってくるのではないだろうか。

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最高速と加速などの速さの違い

一般道ではなかなか実感できないエアロダイナミクスの威力を垣間見るには、高速からのブレーキング時が最適である。750Sのアクティブリヤウィングはエアブレーキとしても働き、必要な場合には一気に立ち上がる。その効果は驚異的で後ろから首根っこを掴まれたように、しかも地面に張り付くように減速する。

一般道レベルでもダウンフォースとはこういうものだったのか、と実感できるはずだが、周囲の交通を驚かせないように注意してほしい。ちなみに、前モデルの720Sに比べてダウンフォースは15%増加しているとされ、その代わりに750Sの最高速は332km/hに若干下がっているという(720Sは341km/hだった)。最初から最適設計を追求すれば、派手なGTウィングなどは必要ないのである。

最高速を若干犠牲にしたとはいえ、なお330km/h以上の数字に文句を言う人がいるとは思えないが、このレベルではこんな細部が重要だ。750Sの4.0リッターV8ツインターボユニットは750PS/7500rpmと800Nm/5500rpmを生み出し、マクラーレン史上最も軽量で最もパワフルと豪語するうえに、ファイナルギア比も720Sより15%低く設定されているせいで750Sの0-100km/h加速は720Sより0.1秒速い2.8秒(0-200km/hは0.6秒速い7.2秒!)という。

GTSのほうは467kw(635PS)/7500rpmと630Nm/5500~6500rpmを生み出すが(以前のGTよりも15PSパワーアップ)、パフォーマンスはこれまでと同じ0-100km/h加速が3.2秒、最高速326km/hという。750Sに比べればややおとなしいと言えるかもしれないが、とんでもない高性能車であることを忘れてはいけない。

大きく違う乗り心地

 750S(左)とGTS。
750S(左)とGTS。

その名の通り、より快適性を重視したとされるGTSは乗り心地がいい。もともとマクラーレンはしなやかと言っていいほどの乗り心地を持つ珍しいスーパースポーツカーであり、ゴツゴツした剥き出しの突き上げとは無縁だったが、750Sは以前よりも明確に締め上げられているようで、荒れた路面では若干神経質な挙動を示す。

いっぽうコンフォートモードでのGTSは以前同様むしろ柔らかめで、おとなしく流す高速道路では若干のピッチングを見せることもあるが、スピードが増すにつれてビシッと安定するから心配無用だ。

柔軟ではあるものの低回転では素っ気なくビジネスライクに回るV8ツインターボは4000rmぐらいから豹変し、爆発的に8000rpmを超えるまで瞬時に吹け上がるのも750S同様である。もちろん、750Sの妖刀のような切れ味は持ち合わせないが、山道でもその辺のスポーツカーとは比べものにならない鋭さを見せる。端的に言って両車の違いは、サーキットを走るか、走らないか、その一点にあると思う。

PHOTO/市健治(Kenji ICHI)

SPECIFICATIONS

マクラーレン750S

ボディサイズ:全長4569 全幅1930 全高1196mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1277kg(Dry)
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:552kW(750PS)/7500rpm
最大トルク:800Nm/5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR19(9J) 後305/30ZR20(11J)
車両本体価格:4170万円

マクラーレン GTS

ボディサイズ:全長4683 全幅2045 全高1213mm
ホイールベース:2675mm
車両重量:1466kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:586kW(635PS)/7500rpm
最大トルク:630Nm(64.2kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前225/35R20 後295/30R21
車両本体価格:2970万円

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