専用ショックアブソーバーに幅広ホイール、4WD制御までNISMO専用

2025年8月21日にマイナーチェンジを発表した日産エクストレイル。内外装のアップデートがメインといった内容で、パワートレインに関しては大きな変更は公表されていないようだ。しかし走りが進化していないわけではない。
走りの面におけるマイナーチェンジでのビッグニュースはエクストレイルNISMOが新設定されたことだ。
「より速く、気持ちよく、安心して走れる」性能を目指したエクストレイルNISMOの専用装備や走りの進化について、ここでは深掘りしていきたい。
NISMOロードカー共通テイストのエクステリア、オプションのレカロシートなどアグレッシブな気持ちを盛り上げるインテリア、そしてNISMOチューンによる電動4WD「e-4ORCE」がトピックス。
とくにe-4ORCEについては駆動力配分をリヤ寄りとすることでフロントタイヤの性能をこれまで以上にコーナリングに使えるようになり、優れたライントレース性能を実現しているという。まさに「より速く、気持ちよく、安心して走れる」というコンセプトを、4WD制御によって実現しているわけだ。
今回の取材は、日産のテストコース「グランドライブ」が会場となっていた。低速コーナーから高速コーナー、意図的に段差を設けた路面など、多彩なシチュエーションで走りが確認できるだけに、はやく走り出したいと思ってしまうが、内外装のNISMOらしさから確認してみよう。

20インチのフットワークは「アリアNISMO」と共通

エクストレイルNISMOを標準モデルと差別化するエクステリアパーツ群を箇条書きで整理してみたい。
- フロントバンパーロアフィニッシャー
- リヤバンパーロアフィニッシャー
- ドアロアフィニッシャー
- リヤフォグランプ
- リヤフォグランプフィニッシャー
- ドアミラーレッドアクセント
- 前後NISMOエンブレム
- 20インチエアロアルミホイール
- ミシュラン・パイロットスポーツEV(NISMO専用チューニング)
そのほか、フロントグリルのトップ部分をダーククロム仕様にしたり、ホイールアーチフィニッシャーをグロスブラックにしたり、ルーフレールをブラックにしたりといった標準車からのカラー変更も実施されている。

空力性能を感じさせるロアフィニッシャー群に施されたレッドアクセントはひと目でNISMOロードカーであると認識させるものだ。しかも、これらは差別化のためのドレスアップアイテムではない。空気抵抗係数であるCd値を維持しながら、ダウンフォースを29%も向上させるという、本物のエアロパーツなのである。
さらに20インチのタイヤ&ホイールは、重量級のEVスポーツである「アリアNISMO」に採用されたものと共通。e-4ORCEという電動4WDを活かすためのNISMO専用チューニングを受けたタイヤ「ミシュラン・パイロットスポーツEV」とエクストレイルNISMOのマッチングはどれほどなのか注目だ。
なお、ボディカラーはイメージカラーとしてニスモ・ステルスグレーを含む全6色の設定となっている。
レカロシートをオプション設定するスポーツできるインテリア

レッドアクセントが印象的に仕上がっているインテリアにおけるNISMO専用アイテムは厳選された以下の4点。
- インストデコフィニッシャー(レッドカーボンプリント)
- ステアリングレッドセンターマーク
- NISMOメタルエンブレム
- スタータースイッチ
加えて、ステアリングやシート、インパネパッドのステッチをレッドにしているほか、シフト周りのパネルをブラックヘアライン仕上げにするなど標準車からのカラー変更によって、トータルでのNISMOロードカーらしいインテリアに仕上げている。
インテリアでの最注目アイテムは、オプション設定となるレカロのスポーツシートだ。フラックとレッドの本革にアルカンタラファブリックをコンビネーションさせた姿は、それだけで上級スポーツカーを思わせるが、もちろん見た目では終わらない。
座った瞬間から、エクストレイルNISMOがSUVであることを忘れてしまうような、圧倒的なホールド感があり、スポーツドライビングに誘うのだ。

専用セッティングのSPORTモードが楽しすぎる!

というわけで、紛うことなきNISMOロードカーに仕上げられたエクストレイルNISMOで、グランドドライブのテストコースに繰り出してみよう。
今回、エクストレイルNISMOではe-4ORCE(電動4WDの駆動力制御)やVCM(ビークルコントロールモジュール:車両安定制御)などをNISMO専用セッティングとすることで「より速く、気持ちよく、安心して走れる」ことを目指したというが、まずはデフォルトといえるAUTOモードで走り出してみた。
最初に気が付いたのは、コーナーでロールをしっかり抑えているのに、段差を超えたときの乗り心地が良いこと。いわゆる“固めた脚”でロールを抑えていると、乗り心地が犠牲になることもあるが、その背反する性能をうまくバランスさせている。
ポイントは、日産として初めてカヤバ製「Swing Valve」ショックアブソーバーを採用したことだ。通常のショックアブソーバーと異なり、Swing Valveショックアブソーバーは伸び縮みするときのストロークスピードによって減衰力を変化させることができるのが特徴となっている。
エクストレイルNISMOでは、段差を乗り越えるときなどストロークスピードが中低速となるときには減衰力を下げ、逆に大きなコーナーを走行しているときのようにストロークスピードが極微低速であるときは減衰力を高めるセッティングとしている。これにより、スポーティな旋回性と、上質な乗り心地という二面性のある走りを実現している。

さらにe-4ORCEのNISMO専用セッティングにより、AUTOモードを選んだときでもステアリング操作を駆動力でアシストするようなセッティングがなされているという。その効果は、「思い通りに曲がる!」と表現したくなるパフォーマンスとして現れている。アクセルレスポンスも標準車より鋭い味付けになっていることもあり、全体にリニアリティが増した走り味がNISMOロードカーらしいと感じた。
しかし、エクストレイルNISMOが本領を発揮するのはドライブモードで「SPORT」を選んだときだ。リヤの駆動力を曲がるために活用するというセッティングとなり、積極的にアクセルを踏んでいくことでコーナリングフォースが高まっていくのが実感できる。この感覚は、スカイラインGT-Rが搭載したアテーサE-TSを思わせるもので、まさに日産の考えるスポーツ4WDの理想が実現している。
リニアリティも非常に高まっており、標準車と同じコーナーで比較するとステアリングの操作量が指一本ぶんは少なくなっている。これはリヤ駆動で“曲がる”をアシストすることによりフロントタイヤの旋回能力が高まっていることの証左といえるだろう。
もちろん、SPORTモードを選んで“激しめ”に走っていても、ストレスなく正確に操作ができるのはオプションのレカロシートが役立っていることは言うまでもない。
視点の高さはSUVだが、その走り味は日産のスポーツ4WDが培ってきたテイストの最新版。しかも乗り心地も確保されている。エクストレイルNISMOはファミリーユースのスポーツカーを求めているユーザーへ向けた最適解のひとつとなりそうだ。

エクストレイルNISMO Advanced Package e-4ORCE 主要スペック
エクストレイルNISMOの発売は2025年9月24日予定。エクストレイルNISMO(541万6400円)と装備を充実させたエクストレイルNISMO Advanced Package(596万2000円)の2グレード設定で、いずれもe-4ORCE(電動4WD)の設定となる。



- 全長×全幅×全高:4690mm×1840mm×1720mm
- ホイールベース:2705mm
- 最低地上高:185mm
- 車重:1890kg
- 駆動方式:4WD
- 乗車定員:5名
- 発電用エンジン型式:KR15DDT
- エンジン最高出力:106kW
- エンジン最大トルク:250Nm
- フロントモーター最高出力:150kW
- フロントモーター最大トルク:330Nm
- リヤモーター最高出力:100kW
- リヤモーター最大トルク:195Nm
- 最小回転半径:5.4m
- タイヤサイズ:225/40R20
- メーカー希望小売価格:5,962,000円




