【理由その1】生産終了や数量限定で高まる「希少性」

2002年に1000台限定で販売されたR34型日産 スカイライン VスペックII ニュルは、2025年9月現在は、5000万円ほどの値段が付いている。なお、当時の新車価格は610万円だった。

古いクルマの中古車価格が上がる要因のひとつは、生産終了による絶対的な台数の減少による「希少性」の上昇だ。

メーカーが製造を終えることで市場に出回る台数はどんどん減り続け、需要に対して供給が追いつかなくなると価格は上昇していく。

とくに限定モデルや生産台数が少なかったスポーツカーなどは、年月を経るごとにその価値がさらに高まり、新車価格を大きく上回るプレミア価格で取引されるケースも珍しくない。

加えて、こうした希少性の高まりが投機目的の購入を呼び込み、さらなる価格の上昇に拍車をかけている実態もある。

【理由その2】再評価される「価値性」

人気マンガの影響で大きく中古車を引き上げたAE86型トヨタ スプリンタートレノ/カローラレビン。現在、状態良好な中古車は300万円以上。なかには500万円以上の個体も多く見られる。

特定のクルマが持つ「価値性」が再評価されることも、価格高騰の大きな要因となりうる。例えば、最新のクルマでは採用されなくなった技術や機構、あるいはクルマのキャラクターそのものが「価値性」として挙げられる。

後輪駆動やマニュアルトランスミッション、大排気量の自然吸気エンジンなど、時代の流れとともに姿を消しつつある要素は、それ自体が特別な価値を持つものとして扱われる。

また、衝突安全基準や排ガス規制が厳しくなる前の時代に各メーカーが競うようにして開発した個性的なデザインのクルマや歴史的価値があるクルマも、現代のクルマにはない魅力を持つため、中古市場での需要は高く値段は上がりやすい。

さらに、映画やアニメ、マンガやゲームなどに登場したことで人気が上昇するクルマもある。とくに1990年代から2000年代初頭の国産スポーツカーは、海外で「JDM(Japanese Domestic Market)」モデルとして高い人気を誇っている。

【理由その3】異常な高騰を後押しする海外からの「需要性」

1999年に発売され、25年ルールの対象となったS15型日産 シルビアの中古車価格は、安価な個体でも200万円程度。高いものでは600万円以上だ。

一部の古いクルマは、海外市場からの需要増加も価格高騰の大きな要因となっており、これには海外の輸入制度が大きく影響している。

よく聞かれるアメリカの「25年ルール」は、製造から25年が経過したクルマは現地の厳しい排出ガス規制や安全基準のチェックが免除され、合法的に輸入できるようになる制度だ。カナダでも同様の「15年ルール」が存在し、近年は両国からの需要によって価格が引き上がっているクルマも目立つ。

そのため、カナダやアメリカで人気のクルマは、製造から15年あるいは25年経過したタイミングで価格が跳ね上がる。さらに為替が円安になると、国を問わず海外から日本の中古車の買い付けが増えることでも価格が上昇する。

現在は「25年ルール」や「15年ルール」と円安が複合して、異常な価格で取引されている古いクルマも多く、国内のユーザーが欲しくても手が届かない状況が生まれている。