先ごろ先行披露された三菱の新型デリカミニと2022年にデビューしたダイハツのタント ファンクロスは、いずれも軽スーパーハイトワゴンの枠組みに収まりながら、SUV的な個性を前面に押し出した、アウトドア志向のユーザー向けモデルです。

三菱 新型デリカミニ
三菱 新型デリカミニ

まず外観デザインを比較すると、新型デリカミニはフロントウインドウの上端を従来モデルより約10センチ前方に移動させることで、より立ち上がった造形と堂々としたスクエアプロポーションを実現しています。厚みのあるバンパーや直線基調のボディラインは、軽自動車ながら“ミニ・デリカD:5”を思わせる存在感を与え、アウトドアでの使用を意識した力強さが際立ちます。

ダイハツ タント ファンクロス
ダイハツ タント ファンクロス

他方、タント ファンクロスは、タントの使いやすさをベースに専用グリルやルーフレール風のデザインを組み合わせ、角張ったフォルムとシルバー加飾のバンパー、サイドガーニッシュによりSUV風のタフさを表現しています。ルーフレールはキャリアやラックを装着することを前提にしており、自転車やキャンプ道具などの積載を想定した拡張性も兼ね備えています。こうして見ると、デリカミニは“本格SUV風の迫力”、タント ファンクロスは“親しみやすく遊び心のあるSUV風”と、それぞれ異なるアプローチでアウトドア志向を表現しています。

三菱 新型デリカミニ

サイズ感や質感についても個性が分かれます。新型デリカミニは専用設計の外装と内装を採用し、インテリアには撥水加工シートやグランピングをイメージしたソファ風シート、ドアトリムやアームレストにソフトパッドを配置するなど、軽自動車の枠を超えた上質感を追求しています。Aピラーから天井までブラック基調で統一されたキャビンは、まるでロールバーに守られているかのような安心感も演出します。

ダイハツ タント ファンクロス

タント ファンクロスは、ノーマルのタントと共通の広い室内空間を確保しながら、撥水・防水加工を施したシートや後席背面によってアウトドアでの使用に配慮しています。専用加飾を施したインテリアは遊び心を感じさせ、広さや使い勝手の面でも家族や仲間とアウトドアを楽しむシーンに適した設計となっています。

三菱 新型デリカミニ

パワーユニットと走行性能では、新型デリカミニは660ccの自然吸気とターボを用意し、FFと4WDを選択できます。ターボ仕様は高速道路や登坂での余裕を確保し、街乗りからアウトドアまで幅広く対応可能です。またセンターコンソールに配されたダイヤル式モードセレクトにより、パワー、エコ、ノーマル、グラベル、スノーといった5種類の走行モードを直感的に切り替えられ、雨天時の舗装路や未舗装路でも安心して運転できます。軽自動車でありながら、本格SUVに近い走行感覚を体感できるのが特徴です。

ダイハツ タント ファンクロス

他方、タント ファンクロスもNAとターボのエンジンを備え、FFと4WDを選択可能ですが、街乗りや高速道路での快適性を重視した味付けで、悪路での走破性はデリカミニほどではありません。その代わり、軽快で扱いやすい走りを重視しており、足まわりは快適性と安定性を両立するチューニングが施されています。

三菱 新型デリカミニ
三菱 新型デリカミニ
三菱 新型デリカミニ

室内空間と利便性では、新型デリカミニはSUVらしい大型グリップトレイや牛乳パックが収まるドリンクホルダー、ボックスティッシュ対応のアッパーグローブボックス、スマートフォン用の引き出し式ホルダーなど、多彩な収納と操作性を実現しています。12.3インチと7インチのディスプレイを組み合わせた最新のインフォテインメントシステムでは、Googleマップや音声操作に対応し、スマートフォンを接続せずとも高度なナビや情報検索が可能です。

ダイハツ タント ファンクロス
ダイハツ タント ファンクロス

他方、タント ファンクロスは“ミラクルオープンドア”による大開口を活かし、子供や高齢者もスムーズに乗降できます。ラゲッジは2段調整式デッキボードを備え、荷物のサイズや種類に応じてフレキシブルに活用でき、USBソケットやラゲージランプも装備され、アウトドアや日常生活の両方で便利に使える設計となっています。

三菱 新型デリカミニ
三菱 新型デリカミニ

安全装備については、新型デリカミニは現状では詳細な技術的説明はありませんが、先進的な運転支援システムが搭載されるものと考えられます。それに加え、キャビン設計やパッケージングによって心理的な安心感を高めているようです。

ダイハツ タント ファンクロス
ダイハツ タント ファンクロス

タント ファンクロスは最新世代のスマートアシストを全車標準搭載しており、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制制御に加え、ブラインドスポットモニターやリアクロストラフィックアラートなど、日常の安全性を高める先進機能も装備されています。

価格帯は、新型デリカミニは正式発売前ですが、約195万円~約295万円と発表されています。新たに上級の「DELIMARU Package」が追加されたこともあり、幅広い価格帯となっています。一方、タント ファンクロスは180万9500円〜202万4000円。新型デリカミニは趣味性や走行性能を重視するユーザー向き、タント ファンクロスは手頃な価格で日常の使い勝手や家族向けの利便性を重視するユーザー向きと言えるかもしれません。

総じて、新型デリカミニはSUV的デザインと走行モード切替によるアウトドア適性の高さが魅力で、本格派アウトドア志向のユーザーに向いているでしょう。タント ファンクロスは、広い室内やスライドドア、便利な収納など実用性を重視しつつ、SUV風の遊び心あるデザインで家族や仲間とのピクニック的なアウトドア利用に適していると言えます。両車とも軽スーパーハイトワゴンとしての快適性を維持しながら、それぞれ異なる方向性でユーザーのアウトドア志向を満足させてくれることでしょう。