

2025年9月の第3土曜日に『トミカ』の新車として、それまでの『No.50 トヨタ ノア』に代わってラインアップされたのが『No.50 三菱 デリカD:5 消防指揮車』です。


消防指揮車は、火災や地震、交通事故などの現場で指揮本部の役割を果たす特殊車両であり、消火や救助を直接行なうのではなく、現場の司令塔として機能します。その任務は多岐にわたり、まず指揮官が乗車して現場に到着すると前線指揮所を設置し、状況に応じて部隊をどこに配置するか、どのように行動させるかといった方針を即座に決定します。

同時に、出火場所や火の広がり方、延焼の可能性、建物内部の状況、逃げ遅れや負傷者の有無など、現場の詳細な情報を集め、無線やデータ通信を通じて消防本部や他の部隊に伝達します。通信機能も重要であり、消防無線はもちろん、警察や自衛隊、自治体など他機関との連携を可能にする多様な通信装置を備えており、大規模な災害時にも現場を孤立させることなく活動を続けることができます。さらに、火災の延焼予測や避難経路の検討などを行う作戦立案も大切な役割で、近年はドローンや現場カメラからの映像を受信・解析したり、GIS(地理情報システム)を利用して地図上で建物構造や水利を確認したりするなど、情報をリアルタイムに分析して的確な判断を下せるようになっています。
消防指揮車には規模や用途に応じて種類があり、市町村の消防署に配備される小型指揮車は、ハイエースやキャラバンといったワゴン車やSUVをベースとした機動性の高い車両で、小規模災害における初動指揮に適しています。政令指定都市や都道府県消防本部に配備される中型・大型指揮車は、バスや大型トラックをベースにしており、車内には会議スペースや多くの通信機材を搭載し、大規模火災や長時間に及ぶ活動に対応できます。さらに国や大都市に配備される高度指揮車は、衛星通信装置や大容量の発電機、ドローン制御機能まで備え、まさに走る防災司令室と呼べる存在であり、大規模地震や広域災害時に真価を発揮します。
具体例として、東京消防庁の救援車(高度指揮支援車)は大型車両で、現場の映像をリアルタイムで消防本部に送信できる高度なシステムを備えています。一方で、地方消防本部の小型指揮車は小回りが利くため災害現場に迅速に到着し、初動対応の拠点として機能します。いずれの車両にも、無線機や衛星電話、大型モニターや指揮盤、ホワイトボードや地図台、さらには自家発電装置や照明などが搭載されており、停電時でも昼夜を問わず自立して運用することが可能です。
このように消防指揮車は、災害の規模に応じて小型は初動指揮、中型・大型は大規模災害対応、高度型は走る防災司令室として役割を果たし、情報を一元的に集約し、現場の安全性と活動の効率を高めるために不可欠な存在となっています。
さて、消防指揮車のベースとなっているデリカD:5は、三菱自動車工業(以下、三菱)が製造販売しているSUV風のワンボックス・ミニバン型多人数乗車乗用車で、2007年にデビューしました。三菱ではワンボックス車ならではのスペース・ユーティリティと、オンロード/オフロードいずれにおいても高い走行性能を発揮するワンボックスタイプのミニバンということから“オールラウンドミニバン”と称しています。また、三菱が代々製造販売してきたワンボックス車『デリカ』のうち、多人数乗車の乗用モデルとしては5代目にあたることから『デリカD:5』の名が与えられています。「さまざまな走行環境下で、多くの乗員を安全に目的地まで運ぶ」という歴代デリカの特長を発展させ、「ミニバンの優しさ」と「SUV の力強さ」の融合を開発テーマに、走行性能、ボディ構造、室内環境にいたるまで、すべて新設計されてました。
ワンボックスタイプのミニバンでありながら、三菱の“オール・ホイール・コントロール(AWC/全輪制御)”思想のもと、電子制御4WD、ASC(Active Stability Control/横滑り防止装置)の採用や、悪路での高い走破性を発揮する十分な対地障害角と最低地上高を確保することで、走行性能の向上がはかられているのが大きな特長です。また、乗員をしっかり守るボディ構造として、新開発の“リブボーンフレーム”と呼ぶ環状骨格構造を採用、さらに三菱初となる運転席SRSニーエアバッグの標準装備、柔軟性・復元性に優れた樹脂フェンダーの新規採用など、“安心・安全”装備を多数採用したことで話題となりました。
デリカD:5はデビュー以来、様々な改良が加えられてその都度進化して行きましたが、2019年に大がかりな変更が施され、ほとんど2代目モデルと言ってもいいほどの変化を果たしています。この大改良モデルがデリカD:5の現行モデルであり、最新モデルのベースとなっています。2019年に登場した19型は、“ダイナミックシールド”と称する、この時点で最新のフロントデザインコンセプトや縦型のマルチLEDヘッドライトを採用、一目で新世代モデルだとわかる特徴的なスタイリングに変化しました。またインテリアでは、インストルメントパネルのデザインを機能性と開放感を兼ね備える水平基調のものへ一新すると共に、上質感のあるものとしています。さらに衝突被害軽減ブレーキシステム“FCM(Forward Collision Mitigation System)”などから成る予防安全技術『e-Assist』を装備して安全性を向上、エンジンは大幅改良が施されたクリーンディーゼルエンジンに統合され、新開発のスポーツモード付き8速ATとの組み合わせにより、よりパワフルかつ静かで滑らかな走りへと進化させています。

電子制御4WDシステムには、新たにヨーレイトフィードバック制御を追加。車両の旋回運動を的確に判断し、ドライバーのハンドル操作に忠実な車両挙動を実現しています。また、フロントサスペンションのコイルスプリングの配置と傾斜角を変更し、正確なハンドリングと滑らかな操舵感を実現。リヤサスペンションはスプリング特性の見直しとショックアブソーバーのサイズアップにより、走破性能と乗り心地を両立させています。サスペンションの最適化だけでなく、ステアリングにはデュアルピニオン電動パワーステアリングを採用。初期操舵からのしっかり感を確保すると共に、モーターによる違和感を少なくし、より自然な操舵フィーリングを実現しています。
『トミカ』の『No.50 三菱 デリカD:5 消防指揮車』は、19型以後の“P”グレードの7人乗りモデルを再現しているように見えます。『トミカ』の『No.50 三菱 デリカD:5 消防指揮車』は、ベース車の持つ“ダイナミックシールド”の特徴的なフロントマスクの造形を細かなメッキグリルと共によく再現しており、特殊車両としての艤装も上手く再現されています。防災・消防の要である1台、あなたのコレクションに加えてみてはいかがでしょうか。
■三菱 デリカD:5 P 8人乗り主要諸元(『トミカ』のモデル車両と同一規格とは限りません)
全長×全幅×全高(mm):4800×1795×1875
ホイールベース(mm):2850
トレッド(前後・mm) :1540/1535
車両重量(kg):1980
エンジン型式:4N14型 直列4気筒DOHCインタークーラーターボ コモンレール式DI-Dディーゼル
排気量(cc):2267
最高出力:107kW(145ps)/3500rpm
最大トルク:380Nm(38.7kgm)/2000rpm
トランスミッション:8速ATスポーツモード付き
サスペンション(前/後):ストラット/マルチリンク
ブレーキ(前/後) :ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ:(前) 225/55R18
■毎月第3土曜日はトミカの日!

毎月第3土曜日は新しいトミカの発売日です。2025年9月の第3土曜日には、上でお伝えしているように、それまでの『No.50 トヨタ ノア』に代わって『No.50 三菱 デリカD:5 消防指揮車』が登場します。また、それまでの『No.10 三菱 アウトランダーPHEV』に代わって『No.10 ホンダ プレリュード』が登場します。なお、『No.10 ホンダ プレリュード』には初回のみの特別仕様(特別色)もあります。











