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自衛隊新戦力図鑑

一見すると弱くなったように見えるが…

儀仗隊を先頭に開始されたパレードは、徒歩の隊列に続いて戦闘車両が登場した。先陣を切ったのは、現在の主力戦車「99式戦車」だ。125mm砲を備えた50トン級の戦車であり、1999年に公開された。中国の戦車開発のなかで初めて世界水準の能力を獲得した車両とも言われている。

99式戦車の最新モデル99B式。125mm砲を搭載する強力な戦車であり、現在の中国の主力戦車となっている(画像/国営CCTVより)

99式戦車に続いたのが、完全新型の「100式戦車」だ。主砲はあきらかに99式より小さく、105mm砲だと言われている。あわせて、重量も40トン程度に軽量化されているようだ。一般に軽量な戦車は装甲防護力が低いと理解される。つまり、一見すると100式は99式より「弱い」戦車に見える。これはなぜだろう?

初公開された100式戦車。2025年公開で、なぜ「100式」なのか? 「99式(ZTZ-99)の次(ZTZ-100)」という説や、「中国共産党100周年(2021年)にちなむ」という説がある。筆者は周主席が強くアピールしている「人民解放軍建軍100周年(2027年)」に関連するのでは…とも考えている(画像/国営CCTVより)

こうした軽量化の動きは「大陸での重量級戦車同士の戦いから、海上輸送や山岳輸送を見据えた機動性重視への転換」と分析されている。もともと、中国の戦車開発は中ソ対立を背景としてソ連・ロシア戦車との戦いを想定していたが、現在の中国の目は台湾や、山岳地帯で国境を接するインドに向けられている。そのため、機動力に優れた軽量で小回りの利く戦車が求められた、というのだ。

単に軽量化されただけではない。100式戦車は設計面で大きな革新が見られる。パレードを見るとわかるとおり、砲塔に乗員の姿がない。本車は無人砲塔だと言われている。被弾率の高い砲塔を無人化し、装甲防護を集中させた乗員区画を車体側に設けることで、乗員の生存性を高めた。あわせて砲塔の装甲を削減できるため、軽量化にも貢献している。

砲塔上面には車内から操作するリモート武器システム(RWS)が搭載されているが、これは対ドローンの自己防衛を考えての武装だろう。また、左右の四連の筒型装置は、対戦車ミサイル等を自動迎撃する自動防護システム(APS)と思われる(画像/国営CCTVより)

さらに戦術AIの搭載により、乗員が2名のみとの情報もある(既存の戦車は3~4名)。仮に2名が事実であれば、AIは乗員のアシスタンスにとどまらず、かなりの部分を自動化している可能性がある。まさに、未来の戦車だ。そのため既存戦車(第3世代)を上回る「第4世代」戦車であるとも言われている。

100式戦車と連携するドローン戦車両

くわえて注目したいのが、100式戦車に続いて登場した「100式支援戦闘車」だ。本車は、まったく新しい概念の戦闘車両だと推測されている。車体は100式戦車と共通だが、フロントエンジン化して、後部に人員搭載区画を設けた。従来の考え方だと、歩兵を搭載するところだが、本車ではドローン・オペレーターが搭乗しているようだ。

100式支援戦闘車。中国語表記は「100支援战车(支援戦車)」だが、中国語で戦車は「坦克」のため、この「戦車」は戦闘車両の意味だと思われる。100式戦車と共通の車体と思われる(画像/国営CCTVより)

主砲の口径は不明だが30mm以上の大口径機関砲だろう。大口径弾薬はセンサー類を搭載した空中炸裂弾などを作ることができる。砲塔最上部の対空レーダーとあわせて、ドローンやミサイルなど空からの脅威を迎撃する能力を持つのではないだろうか。つまり、100式支援戦闘車はドローン運用とドローン迎撃、両方の能力を兼ね備えた「ドローン戦車両」である可能性が高い。

100式支援戦闘車の後部ハッチより乗り込むドローン・オペレーター。これまで戦車随伴の戦闘車両といえば歩兵を輸送するものだったが、本車はドローン戦に特化している点で既存のいかなる車両とも異なる存在だ(画像/国営CCTVより)
車体後部に置かれたドローン(クワッドコプター)とドローン・オペレーター。

兵器とは、その国や軍が「やりたいこと」を実現するための道具であり、単に攻撃力を高めればいいというものではない。その意味で、100式戦車と100式支援戦闘車は中国軍の新たな戦略・戦術思想を体現するものであり、注目に値する。

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