バッテリーの有効エネルギー量は25%増、重量とサイズは標準EQSバッテリーと同等

ドイツ・シュトゥットガルトからスウェーデン・マルメへの走行は、メルセデス・ベンツにおける固体電池技術の包括的検証プログラムの一環とされている。最先端施設でのデジタルシミュレーションや試験に加え、車両と電池は公道での実環境条件下でテストされた。その目的は、異なる気候帯やルート特性における車両全体の性能を評価し、量産化への駒を着実に進めることだ。

ルートはドイツとデンマークを経由し、A7号線とE20号線の高速道路を通りスウェーデンのマルメまで進んだ。地形、交通状況、周囲温度、冷暖房のエネルギー需要を考慮した最適なルートは、フェリーを使用せずに「エレクトリック・インテリジェンス」を用いて計算された。

この固体電池システムは、英国ブリックスワースにあるメルセデス・ベンツグループのF1技術センター「メルセデスAMGハイパフォーマンスパワートレインズ(HPP)」との緊密な連携により開発された。車両に採用されたリチウム金属電池セルは米国ファクショナル・エナジー社製で、FEST技術(ファクショナル電解質システム技術)を基盤としている。

この技術特有の体積変化に対応し、セルへの適切な接触圧を確保するため、固体電池には空気圧アクチュエーターが装備されている。これらのアクチュエーターは充電・放電時のセル体積変化に反応し、長期にわたりバッテリーの完璧な動作を保証する。バッテリーの使用可能エネルギー量は25%増加した一方で、重量とサイズは標準EQSバッテリーと同等レベルを維持。受動的な空気冷却により、さらなる軽量化とエネルギー効率の向上が実現されている。