エントリーの「e: G」グレードが269万9400円、上級の「e: L」グレードは319万8800円
ガソリン車のN-ONEがベースとなるEV(電気自動車)のN-ONE e:、そのグランドコンセプトは「e:Daily Partner (イー デイリー パート ナー)」だ。日々の暮らしを生き生きと活発にしてくれる“日常のパートナー”となるクルマとして、幅広いユーザーから支持されるスタンダードなEVを目指したという。

グレードは2タイプで、上級の「e: L」とエントリーの「e: G」が揃う。どちらもメカニカルな諸元に違いはなく、「e: G」が269万9400円、「e: L」が319万8800円という価格差は、「アルミホイール」「本革巻ステアリング」「ナビゲーションシステム」「急速充電機能」といった装備の有無によるものとなる(「e: L」はいずれも標準装備)。


N-ONE e:のボディサイズは、全長3395mm×全幅1475mm×全高1545mm、ホイールベース2520mm。全高が1550mm以下に抑えられており、機械式立体駐車場に対応するのは都市部のユーザーにとってはうれしいところだ。
エクステリアデザインは、N-ONEからさまざまな変更が加えられている。EV関連の機器を収めるためにフロントフードの高さを持ち上げる必要があったのだが、それに合わせてフロントフェイスは一新。ブラックマスクと上部を切り取った丸型ライトの組み合わせにより、どこか愛嬌のある顔つきをつくり出している。また、フロントフェンダーやリヤゲートはより丸みを持たせた形状のものに変更されたほか、リヤバンパーも専用デザインとするなど、スタイリングの見どころは多い。
そんなエクステリア以上に変更点が多いのがインテリアだ。インパネは、N-ONEとはもはや別物。上部を薄く感じさせる水平基調のデザインに刷新されており、乗り込んでみると、パッと前方に爽快な視界が広がるのが印象的だ。メーターはN-ONEのアナログタイプから7インチ液晶タイプに、シフトセレクターもボタンスイッチ式に変更されたことで、使いやすさと先進感が大幅にアップした。

ユニークなのは、「e: G」グレードのシンプルオーディオ仕様だ。センターディプレイがレス仕様となっており、インパネ上部が完全にフラットになるおかげで、より開放感のある室内空間を実現している。近所しか走らないのでナビはいらないという人や、スマホのナビアプリで済ませてしまう人には魅力的だろう。ちなみに、「e: L」グレードは9インチのホンダコネクトナビが標準装備となっている。

EVで気になるのは航続距離だろう。N-ONE e:はなんと、295kmを実現。軽商用EVであるN-VAN e:は245kmで、N-ONE e:も開発中の段階では「270km以上」と謳っていたのだが、市販モデルではそれらを遥かに上回り、300km近い航続距離で登場したのには驚いた。「毎日街中を20km走行しても、1週間充電しなくて過ごせる」航続距離ということで、実用性はかなり高そう。ライバルと言える日産サクラが180kmなのと比べると、N-ONE e:のアドバンテージは大きい。
充電時間は、時間は普通充電で約4.5 時間 、急速充電で約30分が目安。バッテリーは温度に敏感で、気温によって効率が上下してしまうが、N-ONE e:ではバッテリー冷却・加温システムの採用により、季節を問わず航続距離・ 充電時間が安定するという。

EVならではの機能が充実しているのもN-ONE e:の魅力だ。ホンダの軽乗用車として初めてシングルペダルコントロールを採用しており、シフトセレクター横に設けられたスイッチを押すと、アクセルペダルだけで加減速の調整が可能となる。完全停車まで行ってくれるのも地味ながらうれしいポイントで、特に街中の走行ではペダルの踏み変え操作の煩わしさから解放してくれそうだ。

さらにN-ONE e:では給電機能やV2H(Vehicle to Home)にも対応。AC外部給電器「 Honda Power Supply Connector (パワーサプライコネクター)」 を使用すれば、最大1500Wの電源を利用することが可能となる。キャンプなどのレジャーや災害時には、クルマを大型の蓄電器として利用できるというわけだ。

コネクテッドシステム「ホンダコネクト」にも、EVの利便性を高める機能がいくつも備わる。スマホアプリからバッテリー残量の確認ができるほか、最大電流/最大充電量/充電時間帯などの設定も可能。またアプリで出発時間をタイマー設定すると、その時間に合わせてエアコンを作動させて快適な温度に調整してくれたり、充電プラグ接続時は外気温に合わせてバッテリー温度をコントロールすることで航続距離を伸ばしてくれたりもする。
安全機能に関しては、先進安全運転支援システム「ホンダセンシング」が全グレードに標準装備される。ホンダの軽自動車としては初めて「トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)」にも対応しているのがトピックだ。渋滞などの低速走行時、前走車に追従しつつ、レーン内の走行を維持するようにステアリングを支援する機能で、停車・発進も制御してくれるから、ドライバーの負荷を大幅に軽減してくれる。
また、ホンダが掲げる「環境負荷ゼロ社会」の実現に向けた取り組みとして、N-ONE e:には各部に環境配慮素材が採用されている。フロントグリルには、廃棄されたホンダ車のバンパーをリサイクルした「バンパーリサイクル材」を使用。インストルメントパネル上部のベージュ加飾には植物由来のバイオ樹脂を用い、さらにインシュレーターや純正アクセサリーのフロアカーペットには、使用済みペットボトルなどを再資源化した素材を活用している。
日本国内のEV市場は、過去5年間で販売台数は3倍に拡大したものの、現在は踊り場にある状態だ。そんな中、N-ONE e:が属する軽乗用EVのカテゴリーは、モデルの種類は少ないものの販売ボリュームは大きいため、販売チャンスは大きいとホンダは見込んでいる。2026年には中国自動車メーカーのBYDが軽乗用EVを日本で販売する計画を表明している。今後、軽乗用EVの注目度はさらに高まっていくに違いない。

ホンダN-ONE e: グレード
・e: G 269万9400円
・e: L 319万8800円
ホンダN-ONE e: 主要諸元
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1545mm
ホイールベース:2520mm
トレッド:F1305mm/R1305mm
最低地上高:140mm
車両重量:1030kg
乗車定員:4名
サスペンション:Fマクファーソン式/Rトーションビーム式
モーター
MCF7型交流同期モーター
最高出力:47kW(64ps)
最大トルク:162Nm
一充電走行距離(WLTCモード):295km
交流電力量消費率(国土交通省審査値):
105Wh/lkm
市街地モード76Wh/km
郊外モード96Wh/km
高速道路モード124Wh/km
最小回転半径:4.6m
バッテリー容量:29.6kWh
総電圧:358V



