連載

自衛隊新戦力図鑑

さまざまな攻撃用UAV(無人航空機)を導入

『SHELD』は「Synchronized, Hybrid, Integrated and Enhanced Littoral Defense(同時・混成・統合・先進型沿岸防衛)」の頭文字を組み合わせたもの。このように頭文字を組み合わせて、意味ある言葉を組み立てることを「バクロニム」と言い、アメリカ軍などは好んで兵器や計画名に用いている。文字通り、多種多様な攻撃・偵察無人機群を沿岸防衛の「盾」とする計画だ。取得が計画されている無人機について、順番に見ていこう。まずはUAV(無人航空機)からだ。

陸自は、情報収集用の『モジュール型UAV』と、自爆攻撃用の『小型攻撃用UAV』を取得する。小型攻撃用UAVは、近距離で車両等を攻撃する『I型』、中距離で小型上陸艇を攻撃する『II型』、遠距離で艦艇を攻撃する『III型』の三種類があり、掲載されたイメージ画像は、I型が「ポイントブランク」、II型が「HERO」シリーズに似ている。ともにイスラエル製であり、以前から導入候補に挙がっている機種だ。一方でIII型には(イメージ画像とは形状が異なるが)トルコ製「バイラクタル」やイスラエル製「ヘロンMk2」の名が挙がっている。

ポイントブランク(左)と、HERO120(右)。ポイントブランクは全長1mで最大2kgの弾頭を搭載し、手に持った状態から飛びたち、兵士や非装甲車両を攻撃する。HERO120は全長1.34mで4.5kgの弾頭を搭載し、専用のランチャーから射出される。戦車など装甲車両を攻撃する能力を持つ。どちらもイスラエル製(左/IAI、右/UVision)

海自は「水上艦発射型UAV」と「艦載型UAV(小型)」の2機種が記載されている。後者はすでに導入が公表されているアメリカ製「V-BAT」だろう。前者はおそらく自爆型ドローンだと思われるが、機種は不明だ。

V-BATは垂直離着陸可能なUAVで、3.6m四方のスペースさえあれば運用できる。海自は小型の新型哨戒艦に搭載する計画だ(写真/アメリカ海軍)
冒頭のイメージ画像では翼に爆弾のようなものを搭載して、対艦攻撃を実施している。この画像の詳細は不明だが、たとえば胴体部に取り付ける「ハチェット」という小型精密誘導爆弾が存在する(画像/ノースロップ・グラマン)

空自は「艦艇攻撃用UAV」と「レーダーサイト防衛用UAV」が記されている。イラストを見る限り、陸海空とも異なる対艦攻撃用UAVを取得するようだ。また、レーダーサイト防衛用UAVは、「敵UAVからレーダーサイトを防衛」すると説明されている。こうした防空用UAVで代表的なものにはアンドゥリル社の「ロードランナー」などがある。

アメリカのアンドゥリル製「ロードランナー」は垂直離着陸能力を持ち、ドローンや巡航ミサイル、そして有人機を迎撃する。また、対空ミサイルと異なり、迎撃しなかった場合は発射地点に帰って来る。対空ミサイルとUAVの中間のような存在といえる(写真/アンドゥリル)

陸上自衛隊が海洋無人機を運用

いわゆる「無人船」であるUSVとUUVだが、驚くべきことに陸自が取得する(USVは海自も取得する)。「小型多用途USV」は、モーターボートのような姿で描かれており、ウクライナの「マグラ」シリーズや、アメリカのメタルシャーク製無人水上艇を想起させる。

メタルシャーク社の「LRUSV(長距離無人水上艇)」。長距離の航行能力があり、偵察や警戒監視に活躍する。また写真のようなランチャーを搭載し、無人機のプラットフォームとしても活躍する(写真/アメリカ海兵隊)

「小型多用途UUV」は、主に情報収集にあたるようだが、陸自が運用するという点とあわせて、謎が多い。USVとあわせて海洋無人機は、陸自にとってまったく新たなジャンルの装備であり、どのような運用態勢が築かれるのか、興味深いところだ。

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