30数年を超えて令和に復活!

キャブの見た目と運転しやすさを叶えるフルコン制御の英国製6連スロットル

フェアレディZ伝説の礎となった、初代モデルのS30系。デビューしたのは1969年。日産(ダットサン)の北米市場拡大を目指して開発されたフラッグシップスポーツで、先代から受け継がれたフェアレディの車名に加えられた“Z”は、当時の北米日産社長が必勝を期して開発陣に送ったZ旗に由来するというのは有名な話だ。

オーナーの中島さんは2025年現在62歳。約30年の保管期間を経て復活を果たした、S31最大のこだわりを聞くと「なんといっても毎年税金を払い続けて死守した『横浜58』の若き日の思い出が詰まったナンバープレートです」と即答してくれた。

その願いは見事に実を結び、S30系は1978年までの8年間で世界販売52万台以上の大ヒットを記録。そんなS30系の後期モデル、S31を人生初の愛車として購入してから40年以上所有し続けてきたのが、今回紹介する中島さんだ。

「高校生の時に交差点で道を譲ってくれたのがZでした。当時としては珍しい2シータースポーツの格好良さに憧れて、自分もZに乗りたいと思ったんです。それから蕎麦屋で2年間必死にバイトして、19歳の時に購入したのが4年落ちの中古車だったこの78年式の最終モデルです」と、中島さんは当時を振り返る。

購入後はホイール変更やロールバー追加などのファインチューンを施して、ドライブやワインディングを満喫。購入時に2万kmだった走行距離は7年間で12万kmとなったが、中島さんとZとの蜜月関係は結婚を期に変化することとなった。

多くの場合は「残念ながら手放した」となるところだが、中島さんが選択したのは“保管”だったのが凄いところ。なんと、その期間は30年以上! ワインなら味も増すかもしれないが、クルマを熟成させて増すのは錆ばかり…。

「カミさんの実家の軒下にずっと置かせてもらっていましたが、何度も『もう売ったら』と言われてましたね(笑)。しかし、いつかまたという思いがあったので、ナンバーも切らずに動かないクルマの税金を払い続けていました。ようやく子育ても終わり、復活を果たすことができました」とのこと。

S31の復活プロジェクトは、約4年間を要して、今年の4月に完成したばかり。作業を担当したのは、エリアカーコンサルタント。ボディはガラス類まで全て取り外して、錆びてしまったフロント周りの補修と純正マルーンメタリック色でオールペンを実施した。

そして、注目したいのがボンネットの下に収まるL20改。オーバーホールされたエンジンに組み合わされているのは定番のソレックスキャブのようだが、実は英国JENVEY(ジェンビー)社のインジェクションシステム(L28用の44φ)。LINKフルコン制御により、令和版のアップデート仕様として生まれ変わったのだ。

「当初はキャブのつもりでしたが、エリアカーコンサルタントの福田さんの勧めの通り、フルコン制御にしてよかったです。何と言っても扱いやすいですし、レスポンスもパワーも休眠前とは別物です」と中島さんは復活したS31に大満足の様子だ。

インジェクション採用のS31とはいえ、点火は昭和式のフルトラ式デスビ。中島さんのマシンでは、クランクセンサー、カムセンサー、スロットルセンサーを装備し、フルコンによるきめ細かな点火制御を実現。

L20エンジンは純正クランク&ピストンでオーバーホールし、バルブスプリングを亀有に変更という仕様。ダイレクトイグニッションはR34GT-Rの流用だが、違和感のないようにレイアウトにこだわった。

エンジンへの負荷が大きい純正のカップリングファンを電動ファンに変更したのも、パワーやレスポンス向上の要因のひとつ。ラジエターはアルミ2層で、ファン制御はLINKフルコンで行なわれている。

燃料と点火、補機類の制御を司るLINK STORM X。JENVEYスロットル仕様への装着は国内では例がなかったため、セッティングは試行錯誤の連続だったという。

30年以上の保管期間で深刻なダメージを受けていたのがスチール製の燃料タンク。純正の新品もまだ供給されているものの、価格はなんと43万円(当時)。中島さんのマシンでは中古品を再生して装着している。

室内はほぼ休眠前の状態のままで、割れてしまったダッシュボードは今後対策の予定。またクランクプーリーの都合でエアコンレスとなってしまったので、できるだけ早期に電動エアコンの装着を検討中とのこと。

今回の復活でスターロードフロントリップと亀有トランクスポイラーを装着。RSワタナベのエイトスポーク14インチ(F6.5J R7J)は、大学4年生のときに購入した当時ものだ。排気系はフジツボ製のエキマニとシングルテールマフラーの組み合わせで、フジツボマフラーの80φ中間パイプはL20では太すぎるため、65φでワンオフ。触媒はS13用を流用して公認を取得している。

今後は、セッティングの煮詰めを行なっていくのに加え、酷暑での運転が可能なようにエアコン装着を予定。さらに、将来的にはエンジンの2.6L化でパフォーマンスアップも…と、中島さんが理想とするS31実現のプロジェクトは続いていく。

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