パイオニアのハイエンドホームオーディオ技術をクルマに

クルマの静粛性が高まり快適になればなるほど、リスニングルームとしての期待は大きくなってきている。そこで、比較的交換のしやすいスピーカーのハイスペック製品の登場は根強く続いているのだが、そこに登場したのが驚きの超ハイエンドモデル『グランド・レゾリューション』だ。

パイオニアの原点である「ダイナミックスピーカーを日本で初めて開発したメーカー」としてのアイデンティティに基づき、トゥイーターとミッドレンジを完全に同軸上に設置したコアキシャルスピーカーであるCSTドライバーの車載用としての有効性を突き詰めたのが今回のモデルだ。このシステムは同社のハイエンドホームオーディオブランドである、TAD(TECHNICAL AUDIO DEVICES LABORATORIES) が育んだハイスペックスピーカー。

技術的特徴は、同軸型ユニットでトゥイーターとミッドレンジの音響中心を完全に一致させたことが最大のポイントだ。ミッドレンジのコーン自体がトゥイーターのウェーブガイドとしての機能を持つ。これにより、位相特性、音圧特性、指向減衰特性を一致させることができ、明確な音像定位と自然で豊かな音場を実現した。

点音源再生を可能とするCSTドライバー。音源の再生を1点とする目的を持ってのコアキシャル化。点音源再生という高みを目指すのが、ハイエンドホームオーディオTADの開発思想であり、カーオーディオのプレミアムブランド『グランド・レゾリューション』の目的地でもある。
トゥイーターは、蒸着法でベリリウム振動板を構築。インゴット(かたまり)にプラズマを当てて気化した物質を堆積させて造るので、結晶方向が縦方向に走る。そのため構造上の強度が非常に高くなり、曲がらないという性質を持つ。

パイオニアの歴史を継承する点音源再生技術

『グランド・レゾリューション』の特徴的な振動板技術となるのが、トゥイーターの蒸着法によるベリリウムの採用だ。すでに鍛造法によるベリリウム振動板の採用例はあるが、パイオニアは硬く曲がらない振動板を創るべく蒸着法を選んだ。

さらに、ミッドレンジとウーファーには2層開繊カーボンを採用し、カーボン繊維を平たく伸ばして織ることで、非常に薄くて軽く、硬い振動板を実現した。これにより、スピード感に満ちた圧倒的な再生能力を実現したという。

超高速、ハイパワーでも歪ませない。その思いから生まれたスピーカーシステムがもたらすのは、大量な情報量とそのピュアさである。実はこの製品、単体での販売はしないということで、専門店と協力して適切な取り付けとチューニングを行なう体制を整えるという。そこまで力の入った製品がこの時代に登場するということ、究極のハイファイに本気で向き合っている製品があるということが、本当に嬉しいニュースなのである。

パイオニアのスピーカー技術の原点は、1937年に創業者である松本望が開発した日本初のダイナミックスピーカー「A-8」。実はこのモデル、コーン紙の中央にジュラルミン製の振動板を採用する、同軸型ユニットの「音を一点にまとめる」技術がここから生み出された。それらを突き詰めて進化させた結果が、現在のCSTドライバーにつながっているのだ。
絶対的な剛体であることが要求される、ウーファーのマウント部の構造体には、フルバスケットアルミダイキャストフレームを採用。カロッツエリアの上位モデルでもダイキャスト製となるが、それらトラスバスケット構造の上をいくハイエンドフレームを開発。