定番のL28改3.1L仕様の半分ほどの費用で完成!?

コスパに優れたL20改2.6L仕様に注目せよ!

1978年(昭和53年)に登場したS130型フェアレディZは、初代S30Z基本的なスタイルを受け継いでいるため、一見すると大きな違いはないように見える。しかし、ボディサイズは拡大され、シャシー剛性や空力性能は格段に向上。インジェクション仕様のL型エンジン(L20E/L28E/L20ET)を搭載し、装備も室内空間もグレードアップされており、各部が着実に進化した“次世代Z”である。

そんなS130Zを昨年手に入れたのが、山中親子だ。父・宏之さんは若かりし頃にBNR32やFD3Sなどに乗っていた、いわゆる“走り屋世代”。しかし、当時憧れていたS30Zは結局手に入れることができず、結婚や子育て、仕事に追われるうちにクルマ趣味からも自然と離れてしまっていたという。だが、「いつかはまたチューニングカーを楽しみたい」という思いは、心のどこかでずっとくすぶっていたそうだ。

そして息子の淳暉さんが成人したタイミングで、ついに旧車ライフを再開しようと決意。淳暉さんもその計画に賛同し、こっそりと奥さんにナイショでクルマ探しをスタート。ところが、念願のS30Zは中古車価格の高騰によって現実的ではなく、候補をS130Zに変更。そんななか、四国に良質な車両があるとの情報をキャッチし、親子で旅行がてら現地へ向かうことに。現車を見て即座に購入を決意したという。

この車両は、前オーナーが買い替えのため早期売却を希望しており、相場より安価で購入できたのも決め手だった。しかし、購入後すぐに陸送先の手違いで自宅へ届いてしまい、奥さんにサプライズがバレるというオチつきだったとか。

車両はシャシーの状態も良く、ボディも比較的キレイなコンディション。ただし、ノーマルのL20Eエンジンは不調気味で、オイル滲みやオーバーヒートの形跡も確認された。さらにギヤ抜け、クラッチ切れ不良、ショック抜けなど、いわゆる“旧車あるある”が盛りだくさん。すぐに遠出できるような状態ではなく、まずは徹底した検診とメンテナンスが必要だった。

そんなとき、旧車に強く親身になってくれると昔の仲間に紹介されたのが、このマシンを仕上げたOMR。ここで各部のメンテナンスを受けながら、並行してチューニング&アップデートの方向性も検討することに。

当初はL28エンジンへの換装を考えていたものの、ベースエンジンそのものの価格が高騰しており、サラリーマンのお小遣いでは到底手が出ないレベル。そこで提案されたのが、OMRが近年注目している“L20改2.6L仕様”だったのだ。

出力面ではL28改の本格チューンに劣るものの、600ccの排気量アップに加えて、圧縮比の向上やカム・ポートの最適化によって十分に“チューンドL型”らしいフィーリングが味わえる。しかも、L28改3.1L仕様だとエンジン本体だけで150〜200万円かかるところ、L20改2.6Lなら約80万円前後。およそ半額で導入できるという“コスパの良さ”が最大の魅力だ。

今回のエンジンは、L28用のクランクに亀有製83φピストンを組み合わせてフルフロー加工。ボア×ストローク比はL26と同様になる。L20ヘッドには段付き修正+αのポート加工を施し、FET極東製のL28チューン用インマニと組み合わせ。カムは亀有製の75度Aタイプに強化バルブスプリングを組み、8000rpm+αまで許容する設計だ。キャブはウェーバーの40φを装着。

点火系はもともとウルトラのCDIとMSDのコイルが装着されていたため、そのまま流用。エキマニとマフラーは旧フジツボ製で、現状ではキャパがやや不足気味。将来的にはOMR製のフルエキゾーストに交換予定。なお、エキマニにはバンテージとヒートプレートを装着し、パーコレーション対策も万全だ。

インテリアはキャブ車らしく、機械式燃圧計をセット。シートはノーマルベースの張替えで、非常に綺麗な状態を保っている。

サスペンションは抜けていたショックをカメアリのショートストロークタイプに交換。デフはR180にニスモのLSDを組み込む。ホイールはRSワタナベの8スポークにプロクセスR1R(F:205/50R15、R:225/50R15)を組み合わせている。

外装にはシティーオート製の前後スポイラーを装着し、バンパーはL28用と思われるオーバーライダー付き。フェンダーミラーは視認性に若干の難があるものの、当時感があってお気に入りだという。

内装を外してみたところ、鉄板が綺麗にリペアされていたので現状はそのままむき出し。ボディ剛性の不足は否めないため、リヤゲートに補強バーを追加したところ改善が見られたという。

無理のない範囲で楽しみながら、少しずつ手を入れていく。そんなスタイルで始まった山中親子のS130Zライフは、今の時代の旧車の楽しみ方としてひとつの好例と言えるだろう。今後どのように仕上がっていくのか、ステップアップが楽しみな一台だ。

⚫︎取材協力:ガレージOMR 愛知県名古屋市西区長先町21 TEL:052-509-5055

「L型チューンの常識を覆せ!」現代級のパワーフィールを獲得したS130Z改スーパーチャージャー仕様の衝撃

L型といえばキャブ&NAの王道が定番。しかしこのS130Zは、その常識を覆すスーパーチャージャー仕様。3.1L化されたL型にGTS8550を組み合わせ、ターボとは違うリニアなレスポンスと400psの大出力を実現。40年落ちの旧車が、現代スポーツ顔負けのパフォーマンスを見せつける。