念願の 「2リッター幌モデル」の販売概要は?

まず、今回発売されるのは2台のロードスター派生モデル、ひとつは「MAZDA SPIRIT RACING ロードスター(以下:MSR ロードスター)」と、「MSR ロードスター 12R(以下:12R)」。これにより、「幌 × 2リッターエンジン」という長らくロードスターの日本仕様では実現しなかった組み合わせが公式に復活する。

価格はMSR ロードスターが526万5700円〜、12Rが761万2000円で、前者は2000台限定で予定数に達するまで販売、後者は200台限定で抽選により予約権を獲得する販売方法となった。

両モデルとも4代目ロードスター(ND)としては初めて2.0L「SKYACTIV-G」エンジンを搭載し、スペックは以下。

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER
最高出力:135kW(184ps)/7000rpm
最大トルク:205Nm(20.9kgm)/4000rpm
車両重量:1070kg

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R
最高出力:147kW(200ps)/7200rpm
最大トルク:215Nm(21.9kgm)/4700rpm
車両重量:1050kg

基本はRFに搭載する「SKYACITV-G 2.0」(PE-VPR[RS]型)をベースに主に制御系を変更。サーキット走行時に180km/hオーバーの速度でも走れるよう、”特定の操作により”ブレーキ・オーバーライド・システムとスピードリミッターを同時に解除する機能の追加。減速時、ブレーキングに集中できるようヒールアンドトゥ操作による回転上昇をアシストする制御をなどが新採用されている。

また、12Rでは、吸気ポートの”匠の手”による研磨、大型フレッシュエアダクト、藤壺技研と共同開発した専用エキゾーストマニホールドは4-2-1を4-1排気と改め、ガラス繊維のバンテージとステンレスメッシュ採用など、メーカーによる本格的なチューニングが施され、フライホイールもシングルマス化される。さらに手塗りの結晶塗装を施し他ヘッドカバーには、200台限定の何台目かがわかる「○○○/200」といったシリアルナンバープレートが設置される。

もちろんいずれも6速MTで、FR駆動を意のままに操る愉しみと共に、サーキット走行に耐えるポテンシャルを高めている。

ボディ・足回り関連では、専用チューニングを施したビルシュタイン製ダンパーを採用。ストラットタワーバーを標準装備。12Rでは、熟練工による高精度なサスペンションアームの締め付けとホイールアライメント調整を実施しているという。

ホイールは、レイズと共同開発した専用の鍛造アルミホイール。S耐参戦で使用している「TE37」をベースに剛性を高めて、形状を最適化。センターキャップには専用エンブレム、外周にブランドネームがあしらわれる。12Rには、円周に沿ったラインが施されている。

外装では、フロントグリルにメッシュデザインを採用し、専用エンブレムを配する。12Rには、専用デカールを設定。 ニュルブルクリンクサーキットで走行安定性を追求して独特な形状のリアスポイラーを含めたエア
ロパーツが装着される。

内装、コクピット回りでは、黒基調を採用し、引き締まった印象と視界集中性を目指した。シートベルト、ステアリングトップマーク、ステッチ、シートパイピングなどの縫製や装飾部には、鮮やかな赤のアクセントを施し、操作系(ステアリング、シフトノブ、パーキングレバー)にはアルカンターラを採用した。

シートはいずれもレカロ社と共同開発している。MSRロードスターには、セミバケットシートを採用し、日常性と快適性を保つ。ヘッドレスト部にはブランドロゴをエンボス加工。12Rは、フルバケットシートを標準装備。表皮には RECARO 純正で使われる「カムイ素材」を採用し、耐久性・質感を確保した。

また、12Rのタコメーターには、200ps を発揮する回転数位置に「▲マーク」をタコメーター上に配置している。

ここまで特別なロードスターが生まれた背景には何があったのか?

マツダ・スピリットレーシング前田育男代表(右)と現ロードスターの齋藤茂樹開発主査(左)。

「MAZDA SPIRIT RACING(マツダ スピリット レーシング)」はマツダがモータースポーツ参戦を発端とするサブブランド。これまで、アパレルなどの販売は行われていたが、車両そのものは今回が初となる。その背景について、代表の前田育男さんは語った。

まず、マツダ スピリットレーシング(以下MSR)は、MSRブランドを通じて30年近くマツダはファクトリーとしてモータースポーツから離れていたのを復活させた。スーパー耐久に参戦し、モータースポーツ参加を単なる広告や象徴ではなく、技術開発と人材育成の場と位置づけてきた。バイオディーゼル車の投入、 CO₂吸着装置の検討など、環境技術との融合も視野に入れた挑戦が進行しているという。

また、普段ビジネスでは競合相手であるトヨタ、日産、スバル、ホンダとマツダは、次世代のクルマ好き、レース好きへと切り開いていく盛り上げていくために連携している。

そうした活動の思いを込めた象徴として「R」をデザインモチーフにしたエンブレムに「地球にレーシングの火を灯し続ける」ことを掲げていると語った。

また、齋藤主査は、2リッターの幌モデルがこのタイミングで出ることになった理由について、それを要望する声は大きかったものの、ND登場時に「国内では2リッターを載せません」と宣言してしまっていた。齋藤主査でNDの主査も3代目となったことで、「もう(2リッターモデルを出して)良いのではないか」という社内外の意見もあったが、簡単には「グレード追加しました」という形で撤回はできない。

そんな中、レースで培った技術を量産車にフィードバックさせるという形で、スペシャルバージョンのクルマを作ろうじゃないかということから、実現に結びついたという。

マツダ・スピリットレーシング ロードスターに装着されるパーツは純正パーツであり、他のロードスターに装着されることも想定されているという。単なるコンプリートカーの販売でなく、サーキットで培ったパーツの開発を既存ユーザーにも展開も考えている点で、これまでのファンも置いていかないことへも評価に値するし、コンプリートを買ったユーザー向けのオーナーイベントも企画予定だという。

今後のスケジュールは、12Rについては、発表が2025年10月4日(土)で、商談予約抽選応募受付が翌日の10月5日(日)14時~、公式アプリで開始され、受付終了は10月20日(月)23:59まで。予約抽選結果通知が、10月23日(木)、商談開始(当選者のみ)10月24日(金)以降となる。

また、12RでないMSRロードスターは2025年10月24日(金)~予約受注を開始とのこと。つまり、12Rの当選に外れた人が注文できるというわけだ。

納車最初期は、契約順・生産計画に応じて契約後順次。「最初のお客様は 1月上旬納車」とのこと。

いずれにしても、単なる待望の2リッター幌モデル登場というだけでなく、メーカーのメカチューンによる特別なエンジンを積んだロードスターの登場は、記憶が確かならM2 1001、及び1028以来のことではないだろうか。両車はいまでもファンの間で伝説的に語り継がれ、市場価格も大いに跳ね上がっている。

マツダ・スピリットレーシング ロードスターも、その輝かしいロードスターの歴史の中で、輝くひとつの星にきっとなってゆく、そんな予感が十分に感じられるのは僕だけではないはずだ。まずはそのステアリングを握る日が訪れるのを期待してやまない。

<関連情報>
「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER」「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER 12R」に関する情報サイト

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER|スポーツ|マツダ

MAZDA SPIRIT RACING ROADSTERとは、マツダのモータースポーツ活動におけるサブブランド、「MAZDA SPIRIT RACING」 から初めて登場した商品です。

https://www.mazda.co.jp/cars/mazda-spirit-racing-roadster/

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