コピー品VS正規品、再び激突!

近年、人気ブランドのスポーツホイールを模倣した“コピー品”が海外で大量に製造され、日本国内にも流通している。正規品と見分けがつかないほど精巧に作られたものもあるが、素材や製造工程の品質は大きく異なり、安全性に深刻な問題を抱えるケースも多いのが現実だ。

「粗悪コピーホイールの真実」本物と偽物の差は!? 禁断の強度試験を実施してみた!

その危険性を白日の下に晒すために、WEB OPTIONは日本が誇るアフターホイールメーカー「レイズ」に協力を仰ぎ、コピーホイールの強度試験を再び実施。前回はボルクレーシングCE28Nを題材としたが、第2弾となる今回は王道6本スポーク、ボルクレーシング最強鍛造モデルの「TE37」がメインターゲットだ。

左からボルクレーシングTE37 SONIC SL/ニセモノ/MIDレーシングR06

テストに使用するのは、1996年にデビューして瞬く間に鍛造スポーツホイールの絶対王者に君臨したTE37。デビューから30年近くが経過した今もなおアップデートを辞めず、進化を重ね続けているが、今回はコピー品とサイズを揃えるために現行モデルの「TE37 SONIC SL」を用意した。

また、レイズの計らいでテストには鋳造スポーツホイールブランドとして急成長中のMIDレーシングも参戦。同じ6スポークデザインを持つ「R06」を同様の試験にかけることにした。

ホンモノとニセモノの差異

一見、ロゴも形状も本物そっくり。遠目からでは撮影スタッフすらも判断できなかったほどだ。しかし細かく検証してみると、ディティールに明確な差があることに気づく。なお、コピーホイールは鋳造(販売サイトではフローフォーミングと説明が書いてあった…)と思われる。

ボルクレーシングTE37 SONIC SL

PCD100の4H専用設計としたことで、センターサークルは従来のTE37よりも小径化され、同時にスポークのワイド化や接合部をリム側に引き上げるなど、より高い剛性の確保に成功している。

偽物TE37ホイール

本物はスポークサイドにえぐり処理とリブ構造を組み合わせて強度を高めているが、コピーホイールにはそれがなく、フラットな形状となっていた。

MIDレーシングR06

特徴的なリムフランジは、重量増を抑えながら、ねじれ耐性を引き出すためにコの字形状で立体的にデザインしている。

重量測定

ボルクレーシングTE37 SONIC SL(15×7.0J+34)=4.922g
MIDレーシングR06(15×7.0J+38)=7.174g
偽物TE37ホイール(15×7.0J+38)=5.260g

サイズは全て15インチでJ数やインセットもほぼ共通。重量測定の結果、コピーホイールは本物のTE37よりも重くR06よりも軽いことが判明したが、R06は鋳造スポーツホイールの中では軽量な部類だ。理論的にR06以上に軽く強度を持たせた鋳造ホイールを作ることは難しく、これが衝撃試験にどう影響するのか見ものだ。

スポーク厚

ボルクレーシングTE37 SONIC SL=10mm
MIDレーシングR06(15×7.0J+38)=21mm
偽物TE37ホイール(15×7.0J+38)=14mm

スポークの厚さを手動計測したところ、コピーホイールは本物のTE37に迫る数値であることが判明。もっとも厚かったのはR06だが、これは性能を最優先に設計した結果だ。トライアングル形状の開口部で応力分散性能を高め、コンケイブの落差を稼ぎ出すためのスポークエンドも、応力が集中することなく立体感が高まるツーモーションラインを採用しているのだ。

衝撃(インパクト)試験

これが衝撃試験の設備。タイヤ付きのホイールを13度の角度で固定し、強度的に不利なバルブ位置側(頂点)に規定の重さと高さで衝撃を与えるのだ。テスト後、一分間放置してエアが漏れていなければ合格となる。

前回同様、強度試験に使用する設備は、レイズが所有する13度衝撃試験機だ。

これは、斜め方向からの衝撃を想定した試験で、JWLの基準ではホイールサイズごとに定められた重量物を230mmの高さから落とすのだが、レイズではさらに厳しい独自基準「JWL+R」を設定しているのがポイント。

具体的には、鋳造ホイール基準のスペック1( 255mmの高さから落とす)と、鍛造ホイール基準のスペック2(305mmの高さから落とす)が存在し、今回のテストでは本物(TE37SONIC SL)をスペック2で、R06をスペック1で、偽物を通常のJWL基準でそれぞれ行った。

精巧に見えてもニセモノは所詮ニセモノだった!

本物(JWL+Rスペック2試験)=クリア

当然ながらクラックすら発生せず、直撃箇所は凹みすらなし。エア漏れも起こらなかった。さすがである。

偽物(JWL試験)=破断

固定していたスポーク部を残し、全ブリッジが折れてリムが分離するという、前回と同じ結果に…。

R06(JWL+Rスペック1試験)=クリア

わずかな歪みは発生したが、クラックは確認できず、エア漏れも起こらなかった。

TE37 SONIC SLおよびR06は試験を問題なくクリア。もちろんエア漏れなども皆無で、衝撃を与える前と何も変わらない状態だった。一方のコピー品は、爆発音とともに一発でスポークとリムが破断。一般的なJWL基準の試験で、だ。つまり、コピー品はそもそも鋳造ホイールの強度すら保持していなかったわけだ。

【総括】

ホイールは“走るためのアクセサリー”ではなく“命を支える構造物”

レイズ 企画部 広報マーケティングGr. 石田拓也

レイズ企画本部・広報マーケティンググループの石田さんは、今回の結果について次のように語る。「予想通りの結果です。コピー品の破断面を見ると、通常走行でちょっとしたギャップを拾っただけでも危険でしょう。ホイールの形状は製法や素材があって初めて成り立つもので、形だけ真似ても強度や剛性までは再現できないってことですね」。

続けて「ボルクレーシング製もMID製も、レイズ独自の安全基準をクリアしなければ絶対に製品化しません。鍛え抜かれた素材、積み上げた設計思想、そして進化を続ける製法。我々が守り続けているのは“デザイン”ではなく“哲学”です。ホイールは“走るためのアクセサリー”ではないと言うことを忘れてはなりません」。

ホイールは、誇張などではなく“命を支える構造物”だ。見た目だけを真似た粗悪なコピー品は、その機能を果たすことができない。鍛造という技術、そして安全基準を守り抜くメーカーの姿勢があってこそ、真のパフォーマンスが宿る。安さよりも信頼を。それが、ホイール選びの唯一の正解だ。

なお、今回の強度試験の模様は動画でも公開している。レイズのホイール製造技術が、単なる軽量化ではなく“安全性そのもの”を意味することが、きっと理解できるはずだ。

【関連リンク】
レイズ
https://www.rayswheels.co.jp