幅広いライダーから支持を得ている「MT-09」のパワーユニットをもとに、ミドルクラス最強のトラックパフォーマンスを具現化

2022年2月に国内発売されたスーパースポーツモデル「YZF-R7」は、レーシングマシンを想起させるスタイリングそのままに、カジュアルにスポーツライディングを楽しめる新しいカテゴリーを生み出した。
幅広い層に受け入れられ、需要の高まりを見せている。
こうした時代の声に応え、ヤマハはスーパースポーツの理想を詰め込んだ新しいミドルクラス・900ccの姿を追求、多彩な新技術を織り込み「YZF-R9 ABS」を開発した。
600cc直列4気筒スーパースポーツ「YZF-R6」に匹敵する性能を備えながら、幅広いスキルやステージに対応できる親しみやすさを併せ持つ「YZF-R9 ABS」の誕生により、YZF-Rシリーズのラインナップがさらに充実する。

YZF-R9 ABS」は「Re-DNAed Supersport」をコンセプトに開発された。
幅広いライダーから支持を得ている「MT-09」のパワーユニットをもとに、ミドルクラス最強のトラックパフォーマンスを具現化。
最高のエキサイトメントと、スキルやステージを選ばない親しみやすさを併せ持つ懐の広いモデルに仕上げられている。

主な特徴は以下のとおり。
1)トルクフルで余力のあるパワーを発揮するCP3エンジン(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)
2)ヤマハ歴代スーパースポーツ(※1)最軽量の新型重力鋳造アルミフレーム
3)足つき性と快適性も考慮したスポーティなライディングポジション
4)緻密な減衰調整が可能な前後KYB製新型サスペンション
5)ウイングレットの採用などエアロダイナミクス効果の高い外装
6)YZF-Rシリーズらしさを受け継ぎ進化させたデザイン
7)「YRC(Yamaha Ride Control)」やクルーズコントロールシステム「YVSL(Yamaha variable speed limiter)」などの走行支援
8)ラップタイム計測や走行データの可視化が可能なアプリ「Y-TRAC Rev(※2)」など“つながる”機能
※1:YZF-R1、YZF-R6を指す
※2:アプリは2025年10月14日リリース

詳しくみていこう。

1)トルクフルで余力のあるパワーを発揮するCP3エンジン
888cc水冷4ストローク3気筒DOHC 4バルブのCP3(クロスプレーン・コンセプトの3気筒)エンジンを搭載。
燃料供給系には、「YCC-T(Yamaha Chip Controlled Throttle=ヤマハ電子制御スロットル)」を採用し、よりきめ細やかな吸入空気量制御を行っている。

またドライバビリティに寄与する吸排気音に着目し、CP3エンジンらしさを活かすサウンドをデザイン。
エアクリーナーボックスの形状とそのカバーに設けたフィンによって、低速・低回転域では排気音が心地よく、高速・高回転域では吸気音を強調、トルク感と加速感を際立たせている。

2)ヤマハ歴代スーパースポーツ最軽量の新型アルミフレーム
専用開発の重力鋳造アルミフレームを採用。
低荷重域でのしなやかさと、高荷重域での強度の両立を狙った。
ベースモデルの2024年「MT-09」から各剛性はねじり18%、縦37%、横16%アップしている。こうした剛性を充分確保しつつ、軽量化も実現。
メインフレームの単体重量は、ヤマハの歴代スーパースポーツ(YZF-R1/YZF-R6)のなかで最も軽い9.7kgだ。

3)良好な足つき性と快適性を達成したスポーティなライディングポジション
優れたハンドリングと高い一体感を実現するため、前後荷重配分、ホイールベース、キャスター角、トレール量、前後サスペンションのストロークに伴うバネ上固有値、アンチスクワット率(加速時に車体後方の沈み込みを穏和する割合)などを相互最適化。
そのうえで理想のライディングポジションを決定した。
適度な前傾姿勢を実現するため、ハンドルポジションからヒップポジションの距離を既存のYZF-Rシリーズよりも短くし、良好な足付きを確保するため、ヒップポイントと膝周りが窮屈にならないようフートポジションを下げて、運動性とサーキットに限定しないさまざまなシーンにおける乗りやすさを両立している。

なお、ハンドルはハンドルクラウン下方にマウントするセパレートタイプを採用。
スーパースポーツとして求められるフロント荷重を確保しつつ、適度な前傾姿勢による日常的な扱いやすさも重視した。

4)緻密な減衰調整が可能な前後KYB製サスペンション
新構造のKYB製サスペンションを「YZF-R9」専用にセッティングし、前後に採用した。
フロントには、2025年モデルのフラッグシップ「YZF-R1」と同じ、インナー径φ43mm・ストローク量120mmの倒立式サスペンションを搭載。
イニシャル調整のほか、減衰力は右が伸び側、左が圧側を受け持つ左右独立方式が採用された。
圧側はさらに高速と低速の2ウェイセッティングが可能だ。
ベースバルブを追加しており、ボトム部分へ流入するオイルを制限、もしくは抑止することによって、シリンダー内の圧力を最適化。ストローク時の応答性を高めている。

リヤには、極低速減衰力発生構造を持つ新設計のリンク式モノクロスサスペンションを装備。
イニシャルのほか、伸び側減衰力、圧側減衰力、車高の調整機構を備えている。
ピストンロッドの先端に微低速領域を司るバルブを加え、フリクション領域に近い部分の減衰力をコントロール。
バネ下の不要な動きを抑え、上質なストローク感と接地感に貢献する。

なお、フロントのアウターおよびリヤのリザーバータンクには、外観品質に優れ、耐摩耗性に優れるカシマコートが施されている。

5)ウイングレットを採用したエアロダイナミクス効果の高い新外装
風洞実験や流体解析を幾度も重ね、これまでのヤマハスーパースポーツモデルのなかで、最も空気抵抗の少ない「YZF-R6」より優れたCd・A値(※)を達成した。
※Cd値(車両の持つ空気抵抗係数)にA(前面投影面積)を乗じた係数で、数値が低いほど空気抵抗を受けにくく最高速に有利となる

また、ウイングレットをポジションランプ下部に採用。
サーキット走行などでのウィリー限界を高めるためではなく、公道走行時、横風などの外乱を抑制しつつ、旋回中により接地感を高めることを目的とした形状としている。
ウイングレットを採用したことにより、直進時は6~7%、また旋回中は、フロントM字ダクト下に設けたスポイラーとの組み合わせで、10%程度前輪揚力を抑制する。

6)各種走行支援
ライダーが自身の好みや路面状況にあわせて、エンジンフィーリングや各種電子デバイスの介入度を選択できる機能「YRC(Yamaha Ride Control)」を搭載。
あらかじめプリセットされた3種のパターン(SPORT/STREET/RAIN)のほか、2種のカスタマイズ枠(CUSTOM1~2)、またTRACKモードでは4種の枠(TRACK1~4)から、シーンに応じてモード選択が可能だ。

走行をサポートする制御設定可能な項目は、クルーズコントロールシステムや、設定した速度に最高速度を制限できる「YVSL(ヤマハバリアブルスピードリミッター)」、トラクションコントロールシステムのほか、PWR(パワーデリバリーモード)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)、 QS(クイックシフター:加減速時のアップ/ダウン共に可能)、LC(ローンチコントロール)、EBM(エンジンブレーキマネージメント)、BC(ブレーキコントロール)、BSR(バックスリップレギュレータ)、ABSリアOFFが挙げられる。

7)ラップタイム計測や走行データの可視化が可能なアプリ「Y-TRAC Rev」など“つながる”機能
5インチのフルカラーTFTディスプレイを採用。
速度やデジタルバーによるタコメーターのほか、燃料計、平均燃費、水温計、気温計、シフトインジケーターなどの表示機能を搭載。
各機能の情報操作、セレクトは、コンパクト化に貢献するFPC(Flexible Printed Circuits)を組み込んだ直感的操作が可能なハンドルスイッチで行う。
表示パターンは、4種のテーマとラップタイムをメインにしたTrackモードがあり、好みや走行シチュエーションに応じて選択可能。

また専用アプリ「YAMAHA Motorcycle Connect(略称Y-Connect)」をインストールしたスマートフォンとペアリングすると、「YRC」セッティングや「Y-TRAC Rev」アプリを楽しめるほか、ディスプレイに、電話やメールの着信、スマートフォンの電池残量などを表示。
一方、スマートフォン画面では、エンジン回転数、スロットル開度などの表示、オイル・バッテリーのメンテナンス推奨時期のお知らせや燃費管理、車両の最終駐車位置の確認などが行える。
さらに無料のナビアプリ「Garmin StreetCross」をインストールしたスマートフォンと車両を接続すると、ディスプレイをナビ画面として使うことができる。

「Y-TRAC Rev」は、サーキット走行中のラップタイム表示をはじめ、ピットクルーからの指示や情報をディスプレイに表示するバーチャルピットボード機能、また車体のCANデータに基づいた走行データをスマートフォンやタブレットで確認ができるなど、サーキット走行を楽しめる無料アプリ。2025年10月14日(火)にリリースされる予定だ。

8)便利な機能・装備
以下のような便利な機能・装備も採用された。
•新設計の14段階アジャスタブルクラッチレバー
•質感と剛性の高いアルミ鍛造のブレーキペダルとシフトペダル
•ブレンボ製のモノブロックキャリパー「Stylema」
•フラッシャー機能とハザード時の点滅機能に加え、「二段階フラッシャー機能」「エマージェンシーストップシグナル」「消し忘れ機能」を搭載したフラッシャー
•良好な足つき性と乗降性を実現したシート
•USBタイプC端子に対応した充電ソケットをシート下に設置

9)YZF-Rシリーズのアイコンを受け継ぎ進化させたデザイン
フロントフェイスのM字ダクトや二眼ポジションランプ、サイドビューの水平を基調とした「ホリゾンタル・ムーブメント」など、YZF-RシリーズのDNAを継承しつつ、ウイングレットの採用など、新世代「R」としての進化も感じさせるスタイリングを実現している。

ブルー(ディープパープリッシュブルーメタリックC)
マットダークグレー(マットダークグレーメタリック6)
ホワイト(ブルーイッシュホワイトパール1)

カラーリングは3色を設定。
YZF-Rのブランドを象徴するヤマハレーシングブルーを表現した「ブルー(ディープパープリッシュブルーメタリックC)」、シリアスなスポーティネスを表現し、幅広い層に向けた「マットダークグレー(マットダークグレーメタリック6)」、そして初代「YZF-R1」の「白と赤」のトーンを本モデルの造形&時代感にマッチするように仕上げた「ホワイト(ブルーイッシュホワイトパール1)」だ。