チャイルドシートがレトロかわいい。でも124ccお直線番長、ホンダ・シャリイ!【4MINIマニアの肖像】

4MINIと呼ばれる4ストエンジンの原付カスタム。その始まりは50cc時代のホンダ・モンキーであり、同時にシリンダーが水平にレイアウトされる横型エンジンのチューニングがブームを加熱させた。すると当然、モンキーと同じエンジンを搭載する別の車種にもカスタム熱が波及する。少々大きなボディのダックス、女性向けファミリーバイクのシャリイ、モンキーの外装を変えたゴリラ、無骨な外観のモトラなどがその筆頭。もちろん元祖横型エンジン搭載車のスーパーカブ系も加わり、現在ではバラエティに富んだカスタムシーンが展開されている。

そんな4MINIの世界に7年前、足を踏み入れたのが続けて紹介している4MINIマニアの長澤勝美さん。現在56歳だから40代の終わりにこの趣味を始めた、いわば遅咲きの人。ただ、その情熱の傾け方はハンパではなく、7年の間に20台もの4MINIカスタムを製作してしまう。自営業のため比較的時間とお小遣いが自由になるからできたことだが、それ以上に自らの手でカスタムする楽しさ、出来上がったバイクに乗る満足感は何者にも代え難いことだろう。

4MINIを自分でカスタムする人の多くが通る道なのがモンキー。ところが長澤さんはモンキーのカスタム車を所有していない。お気に入りなのは前回紹介したエイプと今回紹介するシャリイ、そしてダックスだという。不思議に思って聞けば、何台かモンキーを作ったものの現在はバラバラの状態にしたのが何台分かあるだけ。おそらくだが4MINI仲間にモンキーオーナーが多く、日頃からカスタムされたモンキーを目にする機会が多いことが関係している。モンキーのカスタムは奥が深いので、自分でモンキーを作るなら徹底的なこだわりを発揮させたいと考えてしまうのだろう。だから、なかなか完成しないのでは？という推理だ。

では今回紹介するシャリイはどうだろう。そもそもこのシャリイはフルノーマルで程度の良いものが偶然手に入った。しかも塗装は新車のままのオリジナルペイント。入手時は「これはイジッたらもったいない個体だ」と考えていたのだが、モンキーを始め何機もの横型エンジンを組んでいるうちに悪い虫が騒いでしまった。「やっぱりイジリろう！」と当初の決意を翻してしまうのだ。

やるからにはトコトンやるのが長澤さん。まずはシャリイのカスタムで定番ともいえるローダウンだ。フロントフォークはノーマルを使いながらインターチューブをカットして詰める。リヤは短いリヤショックを用いてスイングアームはノーマルのままローダウンする。さらに横型エンジンはブローさせたものを含めて何機ものストックパーツがあるから、キタコのボアアップシリンダーとピストンを組み込み124cc化させた。

124ccエンジンに合わせてトランスミッションとクラッチはスペシャルパーツ武川製に変更している。しかもクラッチカバーは70年代の同社製砂型カバーを使いマニアを唸らせるものにしているし、クラッチも3枚の強化タイプを組んでいる。もちろん吸排気系にも抜かりなく、PE28キャブレターとRPMマフラーを組み合わせてパワーアップと高レスポンスを手に入れている。

バックステップやハンドルなどもカスタムして、メーターはダックスK0純正を使っているが、ここでお気づきの人もいることだろう。そうなのだ、この車両には切った貼ったのワンオフ加工はしておらず、外装や車高、エンジンの中身も元の状態にすれば、いつでもフルノーマルに戻せる仕様なのだ。オリジナルペイントがそのまま残る個体だから、ノーマルに戻せないカスタムを施しては価値がないと考えた結果の姿だ。

だから外装のカスタムは最小限。定番の自転車用バスケットやチャイルドシート、表皮をホワイトに張り替えたシート、クリアウインカーなどは簡単に脱着できるし、ワイド化したタイヤ＆ホイールもノーマルリムに戻せばいいだけ。現在はGクラフト製の前3.5J、後4.5Jとしているがスポークは純正をメッキして塗装を施しただけだ。それでもこれだけルックスを変えることができるから4MINIの世界は楽しい。

124ccまでチューニングしてあり、さらには高回転を好んで使うためオイルの管理には気を遣う。そこでキジマ製オイルクーラーをエンジンの前のフェンダーと接触しないギリギリの位置にセット。これで容量自体を増やしつつ、さらにはキャッチタンクをシート下に配置している。と、マシンのサイドにはHONDAのロゴが入るプレートが付いている。何かと思えば純正クランクケースのカバーだけをくり抜いたものだとか。こうしたセンスもカスタムする上でポイントになるのだ。

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