連載

ランクルプラド Up Style Project

“チョイアゲ”の美学とは?

アップスタイル・プロジェクトと銘打つからには、早くリフトアップしたいと思っていた。ホイール&タイヤに加えてキャリアやラッピング、サイドステップと手を加えていくうちに、その欲求は強くなるいっぽうだ。

しかし実用性を度外視した見上げるように高いリフトアップではなく、あくまでさりげない感覚で、都会でも違和感のないルックスに。まるでよじ登るように乗り込まなきゃいけないなど、著しく実用性が損なわれるのも困る。もちろん胸を張って車検にも適合させたい。そんなワガママ路線にしたいと考えていた。

その考え方に共感いただき、開発に名乗りを上げてくれたのが、同様のコンセプトでホイールを供給し、このプラドにも取り入れているデルタフォースだった。彼らのOVAL(オーバル)ホイール、その17インチにマッチさせるリフトアップ計画が始まった。

純正スプリング&ダンパーを徹底的に解析し、まずは30㎜リフトアップのスプリングを試作する。ちなみに車検証記載値から40㎜以内であれば、構造変更ナシで車検に対応する。オフロードタイヤへの交換に伴ってわずかに外径が大きくなることを見越して30㎜アップにとどめた。

その上で純正と同じスプリングレートのもの、5%と10%ほどレートアップしたもの、合計3種類のスプリングを用意する。そこに組み合わせるのは低圧ガス式のツインチューブダンパー。14段階に区切られたダイヤルを持って減衰力を調整できるものだ。

つまり純正よりも30㎜ほどリフトアップしながら、増大するロール量をスプリングレート&ダンパーセッティングによって抑制しつつ、その上で快適な乗り味をキープする。そのベストアンサーを探るための開発である。

開発段階の今回は、アレコレと装着してみることに。わずかにリフトアップされるヴィジュアルは狙い通り。乗り味に関しても、基本的にネガティブな面は見られなかった。それどころか純正よりも足もとがバタつかず、アタリの柔らかい快適な乗り味を感じた。リフトアップを目的とせず、乗り心地や運動性能の向上という目的だけで選んでもいい気がする。ただし、スプリング自体の選択肢に始まり、それに組み合わせる減衰力を含めて無数とある設定値をどこへと持っていくか。それを探るのが今後の課題だ。これがキマれば、さらに気持ちいい乗り味をもたらしてくれると思わせた。

もちろん、搭載エンジンや積載量、普段使うシチュエーションによってベストアンサーは変わるはずだ。常に重い荷物を積んで多人数乗車する機会が多ければ、スプリングレートを相応に高めるべきだし、一人乗り+空荷であれば純正相当のレートでもいい。常に荷室に重い荷物を積みっぱなしであれば、リアだけ固めのスプリングを選んでもいいだろう。たとえ純正ホイール&タイヤであっても、このリフトアップキットだけを取り入れてもいい。その上で、個体に応じてキメ細かく減衰力を設定する楽しみもある。

スプリング&ダンパーの方向性が見えてきたら、デルタフォースブランドとして市販する予定だという。いかなるバリエーション&パッケージングでリリースされるかはまだ未定だ。とはいえリフトアップ云々を問わず、プラドの魅力を底上げする機能パーツであることは間違いない。

このプラドのオリジナルセッティングが決まれば、またご報告したいと思う。

デルタフォースが開発中のリフトアップキット。30mmアップのスプリングと減衰力14段階調整付きのダンパーという構成だ。開発過程においては、ひとまず3種類のスプリングレートが用意された。
まずは純正ダンパー&スプリングの仕様を解析するところから開発が始まった。同じ150系プラドでも搭載エンジンや用途によりベストアンサーは異なる。そのため複数のスプリングと減衰力変更機能付きのダンパーを用意することになった。
用意したスプリングは3種類。純正+30mmアップを固定として、純正同等のスプリングレート、純正比5%レートアップ、10%レートアップを用意。それぞれテストを開始した。
前後ともに14段階の減衰力調整機能付きのダンパーを採用。30mmアップのスプリングに合わせた適正なストローク量も確保した。好みや用途に応じて自在に減衰力変更できる。
荷物や乗員などの関係で個体ごとに異なる前後重量配分を始め、装着タイヤ&ホイール、あるいはユーザーの好みなどで足まわりには多種多様の回答がある。できるだけユーザーニーズに即した開発を続けていく。

【今回の進化】
11 デルタフォース・リフトアップキット

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STYLE WAGON(スタイルワゴン) 2019年12月号  ※記事は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです

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