ヤマハ向けアクセサリーの開発を担うワイズギア

設立時からヤマハ発動機製品のためのアクセサリーに注力しており、開発した製品はヤマハ純正品となっている。

ワイズギアは1997年、ヤマハ発動機の部品事業部国内営業室が独立して誕生した会社だ。ヤマハ発動機の各種製品の国内マーケットを中心としたアクセサリー製品の企画・開発・販売を担当している。

現在は約120名規模の組織で、設立当初はもちろんヤマハ発動機からの出向社員が多かったが、現在ではプロパー社員が中心となる構成だという。

さて、そんなワイズギア製品群の中で、モーターサイクル向けのオリジナル開発製品のひとつにローダウンリンクがある。まずはその開発の様子から、ワイズギアのモノづくりを見ていきたい。


車両の開発初期から始まるワイズギア製品の開発とは?

ーーーヤマハ発動機本社内や、海外の事業部などでもアクセサリー用品、アフターパーツなどは作られるとのことですが、ワイズギアではオリジナル製品の開発をどのように進められているのでしょうか?

森 製品開発のタイミングとしては、車両開発と同時ではないですが、かなり初期段階から始まることもありますし、途中段階からスタートする場合もあります。例えば「Ténéré700なら、日本人には足付きをもう少し良くしてあげたい」といった場合に、ローダウンリンクやローダウンシートなどは早い段階から車両開発と平行して進めていきます。技術的なデータは本社と共有されていますので、それを元に車両と同じ基準で開発を進めます。

ワイズギア開発部 開発課 森斗志輝(もり・としき)/2018年ワイズギア入社/父親の影響もあり大学時代からオートバイに乗り始める。オートバイに快適に乗る為の小物(シートバッグの台座/足首カバー)を自作し始めたことがきっかけで、オートバイ本体ではなく身の回りの用品を作る仕事に興味をもった。そして、オートバイではなく用品の方が、自分が手掛けた商品でお客さんを喜ばせられると思ったため、用品を専門で取り扱っているワイズギアに入社を決める。

ーーーということは、完成した車両に取り付けられそうな製品を考え出すというより、本社の開発部とコミュニケーションを取りながら進められるわけですね。

池上 設計段階から、例えばキャリアの取り付けのための構造だったり、アクセサリ電源を取るための配線をお願いしたりといったリクエストをする場合もあります。

ワイズギア 開発部 開発課 池上敦哉(いけがみ・あつや)/1990年ヤマハ発動機入社/小学生の頃スーパーカーブームを経験し、オートバイにも興味を持ち、お小遣いでオートバイ雑誌も時々買っているような少年だった。技術者への憧れがあり、大学も工学系に進学。就職先には2輪か4輪メーカーで考えていたが、ある分野の専門家になるより、自分で車両の幅広い範囲を担当したいと思いヤマハ発動機に入社。

ーーー四輪でローダウンと言えば、車高を下げて低重心に見せるためのスプリングなどを想像しますが、ワイズギアのローダウンリンクとはどんな製品でしょうか?

小島 装着しても見た目はほぼ違いがわかりません。ですが、お客様からすると、足が着かないというのは切実な問題で、ショールームで気に入ったオートバイに跨がって「足さえ着けばこのバイクを買うのになぁ」といった問題を解決する製品です。リヤサスペンションのリンクを変えることで、スプリングやダンパーは変更しないで、車高を低くします。もちろん実用上問題ない範囲ですが、サスペンションストロークは短くなります。

ワイズギア 開発部 開発課 小島儀隆(こじま・よしたか)/1985年ヤマハ発動機入社/高校1年時に中型免許を取得し、400ccオートバイで走り回っていた。ヤマハ発動機に入社後の寮生活で、同郷の先輩方がMC(モーターサイクル)開発に携わっていることを知り、開発に興が沸き、入社数か月で開発部門への異動希望を提出した。

ーーースペック的には20mmローダウンなどの数値が多いようですけど、2センチでそんなに足着きが変わるものですか?

森 両足の親指の先が着くというのと、その指先が指の腹まで着くというだけでも全然違います。特に風が強い日などに、隣にトラックが通ると、つま先だけでギリギリ止まっている姿勢では、どうしても不安になります。それが親指の腹まで着くようになれば全然違います。20mmは本当にちょっとの差なんですけど、効果は結構大きいですね。

リヤサスペンション取り付け部分のプレートを交換することで車高を下げる「ローダウンリンク」。シンプルな構造でわずか20mm程度の車高ダウンながら足つき性アップの効果は絶大。

ーーーサスペンションの変化として、走りへの影響はあるのですか?

小島 仕様としては、機敏な動きからおっとりした動きになる方向です。お客様によっては、足も地面にしっかり着いて、機敏すぎず安定して走れると、喜ばれる場合もあります。

20mmの車高ダウンでは走行性能やスタイリングへの影響はみられないが、足着き性の向上で乗車時の安定感が生まれる。

ーーーその違いは、ハッキリわかるレベルですか?

小島 乗り比べればわかると思いますが、買ったオートバイに最初から付いていれば気付かない人も多いのではないでしょうか。

森 他社からも足着きを良くするための製品は発売されていますが、ワイズギアでは性能面も担保しながら車高を下げられる製品を開発しています。


古くから「ハンドリングのヤマハ」と表現されるが、その特性を損なうことなく、日本人のニーズに合うローダウンへの製品開発の姿勢がひしひしと伝わってきた。

その他のオリジナル開発製品として、タンクなどに貼るプロテクションパッドがある。オートバイのデザインの最重要箇所のひとつとも言えるタンクの見た目に影響する部分に取り付けるアイテムはどのように開発するのだろう。


ーーープロテクションパッドとはどのような製品ですか?

森 ワイズギアの定番商品で、各機種にラインアップしています。デザイン的なドレスアップと傷付きにくくしたり、滑りにくい素材でニーグリップをしやすくするといった機能も持ち合わせています。

タンクなどに貼ることで傷からの保護、ニーグリップ性向上、それにドレスアップ効果もあるプロテクションパッド。ワイズギアからヤマハ各車種用がリリースされている。

ーーー開発やデザインはどのように行われるのですか?

池上 車両のデザインをベースにしながら、違和感なく、スタイリッシュに見えるような形でデザインをしています。車種ごとの専用設計で開発しているのが社外の製品とは違っているところですね。ヤマハデザインをちゃんと受け継いで、車両のバランスを壊さないような形で昇華させていくようなデザインとしています。

ーーーデザインはワイズギア社内でやられているのですか?

池上 プロテクションパッドだけでなく、シングルシートカウルなど造形が発生するものも、GKダイナミックス(ヤマハ車の多くのデザインを手掛けてきた総合デザイン事務所)がデザインを担当しているので、車両本体のデザインと同じところでやっていただいています。

ーーー確かに、それは他社ではできない取り組みですね。


企画、設計はワイズギア内で行うが、デザインを必要とする部分では、ヤマハ発動機と同じくGKダイナミックスに依頼することで、まさに違和感ない製品となるばかりでなく、もしかすると本来デザイナーが温めていた「少し遊んだアイデア」が、ワイズギアだからこそ形になっているのかもしれない、そんな想像もしてしまった。

そんなデザインへの拘りに限らずやはりヤマハグループとしての共通項がワイズギアにはあるはずだ。


ワイズギアにはヤマハ発動機以上にヤマハらしさを感じる!?

ーーー森さんは、プロパー社員としてワイズギアに入社されていますが、ヤマハらしさとは何だと感じますか?

森 ワイズギアに入社して、最初にヘルメットを担当しました。ヘルメットはオートバイに乗ってもらうために必要なものなので、お求めやすい価格で良いものをお届けしなければと感じました。また、プロテクションパッドの話にもありましたが、ヤマハの車両でもっと喜んでもらえるように、ヤマハで作った車両の「ヤマハらしさ」を受け継ぐモノづくりを心掛けていきたいと思っています。

ーーー池上さんはヤマハ発動機時代に、車体やサスペンションの開発、設計などをやってこられたとのことですが、ワイズギアにも共通するものを感じますか?

池上 デザインのところでも話しましたが、ヤマハで一緒に開発やデザインしてきた人たちとの関係性を活かした製品を開発していけるのがワイズギアの強みだと思います。その強みを活かしていくことでヤマハらしい商材ができているんだろうなと思いますね。

ーーー小島さんは、ヤマハ発動機で操縦安定性開発、走行実験や研究開発などに携わり、ワイズギアには2025年7月に入ったばかりだそうですね。まさにヤマハの開発の根幹にいた立場から見て、ワイズギアにも共通するマインドを感じますか?

小島 ワイズギアに来て感じたのは、「やっぱり青い(=ヤマハのイメージカラーであるブルー)会社だな」でした。現在、プロパーの社員が中心になっていますが、ヤマハ本社に負けないぐらいオートバイ好きの若手が多いんですよ! 年配ライダーの気持ちは私にもわかるんですけど、ワイズギアは、若い年齢層のオートバイ好きの気持ちをキャッチアップすることがうまいんです。なので、これからもヤマハ本社に肩を並べるほどヤマハらしいことができるんじゃないか、これは面白いなと、オールドルーキー(笑)としては期待しています。

若手社員が自分の好きなことに熱中できる環境がワイズギアの魅力でもある。経験豊富な先輩方が暖かく見守っている。

ヤマハ本社で企画した製品に、独自のオリジナリティを添加してよりヤマハらしい車両にも仕上げることができる。また、自分らしさ溢れる世界で一台の愛車にすることもできるかもしれない。

ワイズギアは、ヤマハ車の完成度を最後にもう一段引き上げることができるブランドとして、単なる関連会社ではなく、ヤマハの持つ情熱をより熱くしてユーザーの手に届けることができる“もうひとつの開発拠点”と言えるだろう。

ライダーがオートバイに跨がるたびに感じるヤマハらしい歓びを、安心を損なうことなく届けていく。それこそ、ワイズギアが絶やすことなく燃やし続けている情熱であり、ヤマハグループにとって非常に重要な役割なのだと感じた。

ワイズギアでは今回紹介したローダウンリンクやプロテクションパッドのほかにも、ウエアやセキュリティグッズ、オートバイ用アクセサリー&カスタムパーツ、ボート用品、マリン用品、電動アシスト自転車(PAS・YPJ)用品など、ライフスタイルを豊かにする製品を幅広く展開している。いずれもヤマハ製品との親和性を重視し、デザイン・品質・機能性のすべてにおいて高い完成度を追求している点が特徴だ。日常の快適さから趣味の充実まで、ユーザーの「ヤマハライフ」を支える製品群となっている。詳しくは、下記のワイズギア公式HPを確認してほしい。

ヤマハ純正アクセサリー | ヤマハ発動機グループ ワイズギア

ヤマハ発動機グループ ワイズギアのオフィシャル企業サイトです。ヤマハ純正アクセサリーであるバイク用品・バイクカスタムパーツ、ボート用品・マリン用品、電動アシスト自転車(PAS・YPJ)用品を中心に、ライフスタイルを豊かにする製品をご紹介します。

https://www.ysgear.co.jp/