ヤマハ向けアクセサリーの開発を担うワイズギア

ワイズギアは1997年、ヤマハ発動機の部品事業部国内営業室が独立して誕生した会社だ。ヤマハ発動機の各種製品の国内マーケットを中心としたアクセサリー製品の企画・開発・販売を担当している。
現在は約120名規模の組織で、設立当初はもちろんヤマハ発動機からの出向社員が多かったが、現在ではプロパー社員が中心となる構成だという。
さて、そんなワイズギア製品群の中で、モーターサイクル向けのオリジナル開発製品のひとつにローダウンリンクがある。まずはその開発の様子から、ワイズギアのモノづくりを見ていきたい。




車両の開発初期から始まるワイズギア製品の開発とは?
ーーーヤマハ発動機本社内や、海外の事業部などでもアクセサリー用品、アフターパーツなどは作られるとのことですが、ワイズギアではオリジナル製品の開発をどのように進められているのでしょうか?
森 製品開発のタイミングとしては、車両開発と同時ではないですが、かなり初期段階から始まることもありますし、途中段階からスタートする場合もあります。例えば「Ténéré700なら、日本人には足付きをもう少し良くしてあげたい」といった場合に、ローダウンリンクやローダウンシートなどは早い段階から車両開発と平行して進めていきます。技術的なデータは本社と共有されていますので、それを元に車両と同じ基準で開発を進めます。

ーーーということは、完成した車両に取り付けられそうな製品を考え出すというより、本社の開発部とコミュニケーションを取りながら進められるわけですね。
池上 設計段階から、例えばキャリアの取り付けのための構造だったり、アクセサリ電源を取るための配線をお願いしたりといったリクエストをする場合もあります。

ーーー四輪でローダウンと言えば、車高を下げて低重心に見せるためのスプリングなどを想像しますが、ワイズギアのローダウンリンクとはどんな製品でしょうか?
小島 装着しても見た目はほぼ違いがわかりません。ですが、お客様からすると、足が着かないというのは切実な問題で、ショールームで気に入ったオートバイに跨がって「足さえ着けばこのバイクを買うのになぁ」といった問題を解決する製品です。リヤサスペンションのリンクを変えることで、スプリングやダンパーは変更しないで、車高を低くします。もちろん実用上問題ない範囲ですが、サスペンションストロークは短くなります。

ーーースペック的には20mmローダウンなどの数値が多いようですけど、2センチでそんなに足着きが変わるものですか?
森 両足の親指の先が着くというのと、その指先が指の腹まで着くというだけでも全然違います。特に風が強い日などに、隣にトラックが通ると、つま先だけでギリギリ止まっている姿勢では、どうしても不安になります。それが親指の腹まで着くようになれば全然違います。20mmは本当にちょっとの差なんですけど、効果は結構大きいですね。

ーーーサスペンションの変化として、走りへの影響はあるのですか?
小島 仕様としては、機敏な動きからおっとりした動きになる方向です。お客様によっては、足も地面にしっかり着いて、機敏すぎず安定して走れると、喜ばれる場合もあります。

ーーーその違いは、ハッキリわかるレベルですか?
小島 乗り比べればわかると思いますが、買ったオートバイに最初から付いていれば気付かない人も多いのではないでしょうか。
森 他社からも足着きを良くするための製品は発売されていますが、ワイズギアでは性能面も担保しながら車高を下げられる製品を開発しています。
古くから「ハンドリングのヤマハ」と表現されるが、その特性を損なうことなく、日本人のニーズに合うローダウンへの製品開発の姿勢がひしひしと伝わってきた。
その他のオリジナル開発製品として、タンクなどに貼るプロテクションパッドがある。オートバイのデザインの最重要箇所のひとつとも言えるタンクの見た目に影響する部分に取り付けるアイテムはどのように開発するのだろう。
ーーープロテクションパッドとはどのような製品ですか?
森 ワイズギアの定番商品で、各機種にラインアップしています。デザイン的なドレスアップと傷付きにくくしたり、滑りにくい素材でニーグリップをしやすくするといった機能も持ち合わせています。

ーーー開発やデザインはどのように行われるのですか?
池上 車両のデザインをベースにしながら、違和感なく、スタイリッシュに見えるような形でデザインをしています。車種ごとの専用設計で開発しているのが社外の製品とは違っているところですね。ヤマハデザインをちゃんと受け継いで、車両のバランスを壊さないような形で昇華させていくようなデザインとしています。
ーーーデザインはワイズギア社内でやられているのですか?
池上 プロテクションパッドだけでなく、シングルシートカウルなど造形が発生するものも、GKダイナミックス(ヤマハ車の多くのデザインを手掛けてきた総合デザイン事務所)がデザインを担当しているので、車両本体のデザインと同じところでやっていただいています。
ーーー確かに、それは他社ではできない取り組みですね。
企画、設計はワイズギア内で行うが、デザインを必要とする部分では、ヤマハ発動機と同じくGKダイナミックスに依頼することで、まさに違和感ない製品となるばかりでなく、もしかすると本来デザイナーが温めていた「少し遊んだアイデア」が、ワイズギアだからこそ形になっているのかもしれない、そんな想像もしてしまった。
そんなデザインへの拘りに限らずやはりヤマハグループとしての共通項がワイズギアにはあるはずだ。
ワイズギアにはヤマハ発動機以上にヤマハらしさを感じる!?
ーーー森さんは、プロパー社員としてワイズギアに入社されていますが、ヤマハらしさとは何だと感じますか?

森 ワイズギアに入社して、最初にヘルメットを担当しました。ヘルメットはオートバイに乗ってもらうために必要なものなので、お求めやすい価格で良いものをお届けしなければと感じました。また、プロテクションパッドの話にもありましたが、ヤマハの車両でもっと喜んでもらえるように、ヤマハで作った車両の「ヤマハらしさ」を受け継ぐモノづくりを心掛けていきたいと思っています。
ーーー池上さんはヤマハ発動機時代に、車体やサスペンションの開発、設計などをやってこられたとのことですが、ワイズギアにも共通するものを感じますか?

池上 デザインのところでも話しましたが、ヤマハで一緒に開発やデザインしてきた人たちとの関係性を活かした製品を開発していけるのがワイズギアの強みだと思います。その強みを活かしていくことでヤマハらしい商材ができているんだろうなと思いますね。
ーーー小島さんは、ヤマハ発動機で操縦安定性開発、走行実験や研究開発などに携わり、ワイズギアには2025年7月に入ったばかりだそうですね。まさにヤマハの開発の根幹にいた立場から見て、ワイズギアにも共通するマインドを感じますか?

小島 ワイズギアに来て感じたのは、「やっぱり青い(=ヤマハのイメージカラーであるブルー)会社だな」でした。現在、プロパーの社員が中心になっていますが、ヤマハ本社に負けないぐらいオートバイ好きの若手が多いんですよ! 年配ライダーの気持ちは私にもわかるんですけど、ワイズギアは、若い年齢層のオートバイ好きの気持ちをキャッチアップすることがうまいんです。なので、これからもヤマハ本社に肩を並べるほどヤマハらしいことができるんじゃないか、これは面白いなと、オールドルーキー(笑)としては期待しています。

ヤマハ本社で企画した製品に、独自のオリジナリティを添加してよりヤマハらしい車両にも仕上げることができる。また、自分らしさ溢れる世界で一台の愛車にすることもできるかもしれない。
ワイズギアは、ヤマハ車の完成度を最後にもう一段引き上げることができるブランドとして、単なる関連会社ではなく、ヤマハの持つ情熱をより熱くしてユーザーの手に届けることができる“もうひとつの開発拠点”と言えるだろう。
ライダーがオートバイに跨がるたびに感じるヤマハらしい歓びを、安心を損なうことなく届けていく。それこそ、ワイズギアが絶やすことなく燃やし続けている情熱であり、ヤマハグループにとって非常に重要な役割なのだと感じた。

ワイズギアでは今回紹介したローダウンリンクやプロテクションパッドのほかにも、ウエアやセキュリティグッズ、オートバイ用アクセサリー&カスタムパーツ、ボート用品、マリン用品、電動アシスト自転車(PAS・YPJ)用品など、ライフスタイルを豊かにする製品を幅広く展開している。いずれもヤマハ製品との親和性を重視し、デザイン・品質・機能性のすべてにおいて高い完成度を追求している点が特徴だ。日常の快適さから趣味の充実まで、ユーザーの「ヤマハライフ」を支える製品群となっている。詳しくは、下記のワイズギア公式HPを確認してほしい。
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