
とことん突き抜けていたり、常軌を逸した収集癖を発揮したり、愛車をカスタムするすべての作業を自分でやってしまったりと、一口にマニアと言っても方向性にはいろいろなケースがある。そんなマニアには敬意を込めて「変態さん」と呼ばせていただくのだが、続けて紹介してきた4MINIマニアの長澤勝美さんはまさに変態の称号を与えるに相応しい人物だ。高校時代からバイクに親しみ、4輪にも手を広げると20代、30代、そして40代は4輪の古いトラックなどをカスタムして楽しんできた。そんな中、息子さん用に入手したホンダ・エイプがお役御免となると、父である長澤さんが譲り受けミニバイクの楽しさに開眼してしまう。

だが、いわゆる原付なので性能を高めるにも限りがある。それならとエンジンチューニングを始めたことでカスタムへの道を歩むことになった。長澤さんは建物の外壁や基礎工事などを請け負う自営業者であり、時間は比較的自由になる。そこでお小遣いの範囲で部品を買い込み、仕事の合間をぬってエイプのカスタムを進めてきた。以前の記事でも紹介したように、エイプの純正が残っているのはフレームと燃料タンクくらいなもので、エンジンやミッション、足回りや外装などはとことんカスタムした。

カスタムしたエイプでミーティングなどのイベントへ参加すると、やはり同好の士と巡り合う。同じように DIYでカスタムする人たちとの出会いがさらに4MINIカスタムの幅を広げることになった。そもそも長澤さんを取材することになったのは、2025年の春に開催されたモンキーミーティングで知り合えたこと。毎年欠かさず参加されているそうで、毎回同じマシンでは面白くない。そこでエイプだけでなく数多くのバイクをカスタムすることになった。

もちろん、長澤さんも4MINI人気の象徴である50cc時代のモンキーに手を出した。しかし、納得のいく内容にならず、数台は製作途中のままストップしている。人気車だけに、普通にカスタムするだけでは他の誰かとかぶってしまう。独自の手法を模索していると、どうしても作業が止まってしまったのだろう。
これまでに20台近くのマシンで同じような作業を行ってきたため、仕入れたカスタムやチューニング部品の種類は非常に多い。とはいえ、お小遣いの範囲での作業なので、多くの部品は中古で手に入れたものだ。もちろん入手した部品をそのまま使うことはせず、一度分解して、自分なりに納得できる状態にまで仕上げている。

まさに変態の極みと言える。初回で紹介した長澤さんのガレージは自ら「長澤輪業」と名付けたように、知らない人が見たらバイク屋さんである。20台ものマシンでさえ圧巻なのだが、それ以上に異様な雰囲気を醸し出しているのが大量の部品たち。壁一面に上から吊ったフレームやらマフラーやら外装が並び、自作した棚にはシリンダーやヘッドなどが分解された状態で何機も転がっている。これだけの部品があれば大抵のカスタム&チューニングができるだとうと思わせるほどだ。
側から見てもそう思うのだから、張本人である長澤さんだって考えた。フレームだけあったダックスを寄せ集めのパーツでカスタムしてみようと着手したのだ。それが今回紹介するマシンで、キタコ製ピストンやシリンダーで88ccにしたエンジンは希少な「コブヘッド」と呼ばれる古いエンジンをベースに使っている。強化クラッチやクロスミッションはスペシャルパーツ武川製で、マフラーも当時モノのスペシャルパーツ武川製。ローダウンやフロントブレーキのディスク化など、ひと通りのカスタムを施した。


こうしてお気に入りだというカスタムマシンを3台紹介してきたわけだが、長澤さんにとり忘れられない存在がある。高校生の頃に友人が新車で購入し、その1年後に譲り受けたホンダCBX400Fがそれだ。実はガレージを建てることになったのはバイクが多すぎるようになったためだが、CBX400Fだけはガレージに置いていない。なんと新築した母家に保管しているのだ。新築時に勝手口付近に土間を設け、リビングとの境はアロワナ用の水槽を並べて仕切りとした。この土間にCBXを置いているのだ。どれほど長澤さんの思い入れが強いかを物語る。

実質2オーナーのまま40数年を経てきたCBX400F。入手時からしばらくは長澤さんお気に入りのマシンであり、当時らしくトマゼリのセパハンやヨシムラ製マフラー、BEET製アンダーカウル&タンデムバーなどを装着してある。その姿のまま40数年維持してきたが、4MINI熱が高まった後もそのままの状態をキープしている。カスタムを進めたりしないのは、やはり青春時代の相棒だからだろう。

4MINIほどは乗る機会は減ったものの、取材当日もCBX400Fはエンジンが一発で始動するほど良いコンディションに保たれている。おそらくバイクから降りる日が来るまで、長澤さん宅にはCBX400Fが保管されていることだろう。

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